- kusamura_eisei
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のむらしんぼさんの『コロコロ創刊伝説』では、『ゲームセンターあらし』のキャラ設定がネームの段階になっていましたが、これは実は間違っています。そんなナマやさしいものではありませんでした(笑)。 『ゲームセンターあらし』の依頼があったのは、1978年の秋。「コロコロコミック」の表紙校了日(入稿を確定させる日)でした。電話で「タイトルは『ゲームセンターあらし』と決まっているので、先に表紙に載せる主人公の顔だけ作ってほしい。これからバイトさんに原稿取りに行ってもらうので、それまでに5通りくらいのキャラクター案を作って渡してほしい。その中から編集部で選ぶので」と言われ、まずキャラクターだけ作りました。 キャラクターには注文があって、「すがやさんのマンガの主人公は、ハンサムないい子ちゃんばかりで、これでは子どもの共感を得られないん。もっと汚いキャラクターにしてほしい」とのこと。「ハンサムないい子ちゃん」とは、この直前に「コロコロコミック」に連載したSFマンガを指してのものでした。このマンガ『まぼろしの恐竜』など(画像)は、いま、Amazon Kindleで出ています(自分で編集しました)。 amazon.co.jp/dp/B0C3BYJL1K このときキャラ作りの参考にさせてもらったのが、たまたま手もとに置いてあった『釘師サブやん』と『包丁人味平』だったわけです。 翌日、「これに決まったから」と表紙の校了用紙(デザインしたもののコピー)を編集者(のむらさんのマンガに描かれているH山さん)が持ってきました。 画像は、そのとき編集部に渡したキャラデザインカットの一部で、こちらはバツがついているキャラをイチオシにして色をつけ、他のものは色をつけずに渡していました。そうしたところ編集部では、色をつけたキャラだと敏捷性が足りないように見えるとのことで、右のキャラを選び、表紙に載せました。色は、左の絵を参考に、デザイナーさんがカラー指定してくれたそうです。 この時点で決まっているのはタイトルと主人公の顔だけ。編集者は1万円札を出して、「これを100円硬貨に両替して、歌舞伎町に行ってゲームしましょう。今日は、この1万円を使いきるまでは帰しません」とのこと。それでアシスタントも連れて歌舞伎町に行き、ゲームセンターでゲームをプレイしまくりました。 でも、こんなときに限ってゲームが長持ちするんですね。1万円を使いきるのは大変でした。最後はコイン落としやピンボールにスマートボールまでやって、なんとか使い切りました。 そのあとアシスタントを先に帰して、編集者とストーリーの打ち合わせになりましたが、そこでつけられた条件が、「最後のクライマックスでは、ゲームをする主人公を空中で逆立ちっせてほしい」というものでした。 当時のゲームはテーブル型が多く、座ってプレイするものでしたので、「空中で逆立ちするなんて、リアリティがありません」と抵抗したのですが、H山さんに言われたのは、「すがやさんは、これまで『仮面ライダー』や『キカイダー』で、さんざん空中回転や逆立ちをさせてきたじゃないですか」という言葉。そういわれてみればそうでした。『仮面ライダー』や『キカイダー』などのコミカライズの仕事では、臆面もなく、恥じらいもなく、戦いのシーンでは主人公も敵も空中にジャンプして、派手なアクションを展開していました。 「そうか。『仮面ライダー』のつもりで描けばいいのか。ま、どうせ1回こっきりの読み切りだから、ま、いいか」と割り切り、ブロック崩しと戦う最後で、恥ずかしげもなく空中回転させました。 この1回目の読み切りは、アンケートの順位が悪く、連載には至りませんでした。かわりにスタートしたのが『F1キッド』というレースマンガでしたが、翌79年春に「ウルトラマン増刊号」が出ることになり、オマケの読み切りとして、また『ゲームセンターあらし』を描くことになりました。スペースインベーダーの人気が高まっていて、これを題材に読み切りを描いてほしいという依頼でした。 すでにゲームセンターへの小学生の入場が難しくなっていたこともあって、別の場所でゲームをさせたいということになり、そこで後楽園球場のジャンボトロンにスペースインベーダーを映して戦う案を出しました。大がかりで大げさなバトルは、『包丁人味平』の「ラーメン祭り」にヒントを得たものです。「ラーメン作り」の対決をイベントにしてしまうという発想は、当時、画期的なもので、テレビの『料理の鉄人』も明らかに影響を受けています。 「こういう実際にはありもしないイベントをさせることをSFの世界では〈疑似イベント〉というんです」と編集部で説明したら、編集長が感心したようにメモしてくれました。でも「疑似イベント」の本当の意味は、「テレビ中継されることを前提にした戦争」などのことで、似ているけれど、ちょっと違います。ちなみに湾岸戦争以降の戦争は、どれもテレビでライブ放送されるものになりました)。 ま、こんな編集者を煙に巻くようなことをして、今回も、どうせ1回こっきりだろうと思って描いたら、なんと、ダントツ1位の票を集め、本誌連載が決定してしまったのであります。楽しんで描いていた『F1キッド』とは2回ほどダブって掲載されましたが。 先日、出演したニコ生の『島本和彦のZEKKYO大学』では、このあたりのこと、サワリしか触れられませんでしたので、こちらで捕捉とさせていただきます。
2023-11-11 02:34:56マンガ家すがやみつるのTwitterアカウントです。『ゲームセンターあらしと学ぶ プログラミング入門 まんが版こんにちはPython』(日経BP)/『コミカライズ魂』(河出新書)/Kindle オリジナル電子書籍も多数発売中!
@msugaya あらしの顔の設定画 昔コロコロで 見たような記憶があります 確かに5パターンくらい あったと記憶しています (うろ覚えですが・・💦)
2023-11-11 02:50:32名古屋市博物館でのトークショーでもちょっと聴いた話! twitter.com/msugaya/status…
2023-11-11 02:59:37自分がゲームセンターあらしを読み始めたのは1981年くらいからだったかなあ?毎号技が派手になってインフレ化が進んでた頃で、子供がごっこ遊びで真似できるような代物ではなかったけど、簡単にできる水魚のポーズはよく真似してた覚えがw twitter.com/msugaya/status…
2023-11-11 05:35:45コロコロ編集部凄い。もう高校生だったけど『あらし』立ち読みしてました! twitter.com/msugaya/status…
2023-11-11 05:37:06「島本和彦のZEKKYO大学」を観て何度も感じたのは「すがや先生の対応力、パねえ」ということでした。 twitter.com/msugaya/status…
2023-11-11 05:44:17@msugaya 貴重なお話しありがとうございます。 最初は読み切りだったんですね。 私は途中からコロコロで読み始めて 後から単行本を 買って追いかけてました。 近年eスポーツを観ると ゲームセンターあらしを思い出してます。
2023-11-11 06:20:08@msugaya 個人的にあらしだけでなくF1キッドも大好きだったので複雑な気分です 子供の欲しい正確な知識や情報を分りやすくかみ砕いて しかもそれが勝負の綾となるストーリーとなるように説明してくれていたので知的興奮が半端ではなかったのです
2023-11-11 06:35:16出っ歯は皆んなアラシって呼ばれていたwそれくらい人気あった😊 twitter.com/msugaya/status…
2023-11-11 06:49:07ブロック崩しは漫画のコマで映えないから面白くなかったのかも…。ボール落とさないのもデモ画面で見慣れてたし。 twitter.com/msugaya/status…
2023-11-11 07:00:43@msugaya @JORA_JORAEMON 月面宙返(ムーンサルト)りとかにはそういうわけがあったんですね。 おかげさまでまんまとどハマリしました。 本誌もさることながら、別冊コロコロの壮大なストーリーが特に好きでした。
2023-11-11 07:09:42凄いな。こっちが『釘師サブやん』や『包丁人味平』をなにも考えないでただ読んでいた子供だった頃に、既に凄い仕事をされていた。 twitter.com/msugaya/status…
2023-11-11 07:10:19@msugaya 『ゲームセンターあらし』連載の裏にこのような苦労があったとは。 当時の担当編集者に感謝ですね。
2023-11-11 07:13:50あまり期待して無い漫画が大ヒットしてアニメ化されて自身の代表作になるのはよくある事だけど複雑な気分になるよね twitter.com/msugaya/status…
2023-11-11 07:21:34