ついのべ2011年12月分

主に銀魂。主に山崎。たまに脱線します。
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麻木ちいこ @haruichi_asaki

「オイ山崎、煙草買いに行くからついて来い」不意な誘いは見事に山崎の意表を突いた。「俺が買いに行くんじゃなくて?」咄嗟に尋ねると土方は不機嫌そうに「嫌なら良い」と呟き足を進める。「いえ。お供させてください、副長」緩みそうになる頬を懸命に引き締めながら、山崎は足早に土方の姿を追った。

2011-12-05 13:47:08
麻木ちいこ @haruichi_asaki

もう夜中だというのに目はとても冴えていた。土方は隣に眠る山崎を一瞥すると男の肩先に額を擦り寄せる。「眠れねェ」「寝る前にコーヒーなんざ飲めば当然です」「おま、起きて、っ!」言葉を遮るように山崎が土方を抱き締める。すると頑なに抵抗を続けていた両の瞼はいとも容易く落ちていくのだった。

2011-12-05 15:20:18
麻木ちいこ @haruichi_asaki

土方が出張で屯所を空けてから2度目の晩、山崎は部屋の主の居ない副長室へと足を運んだ。人気も明かりもない室内は普段より広く、そして普段より寒く思えた。山崎は黙したまま寝転がり、畳に染み付いた煙草の匂いに意識を傾ける。寂しさを紛らわすために求めたそれは、一層恋しさを煽るだけだった。

2011-12-06 14:53:20
麻木ちいこ @haruichi_asaki

山崎はたまには褒美が欲しいのだと言う。珍しいこともあるもんだ、と土方は心のうちで呟いた。「手ェ出せ」思案の末に告げられた言葉に、山崎は大人しく従う。土方は差し出された掌をくるりと裏返し、手の甲に口付けを落とした。途端に山崎の視線が泳ぐ。「キザ」「は?」「それが似合うなんてずるい」

2011-12-06 14:54:17
麻木ちいこ @haruichi_asaki

夕暮れ時の公園に訪れた坂田は、いつものようにベンチに座す長谷川の隣に腰を据えた。冬の屋外はひどく冷える。しかし坂田が暖かな場所に出掛けようと誘っても、男は決まって金がないと笑うのだ。「なあ長谷川さん、うち来いよ」今日こそ伝えようと頭の中で反芻した言葉を、坂田はようやく切り出した。

2011-12-06 22:30:16
麻木ちいこ @haruichi_asaki

今井はじっとテレビを眺める。映るのは近頃隊士たちの話題に上がる恋愛ドラマだ。正直、話はよく分からない。「こういう不埒なものを見るのは如何なものかと思いますよ」画面の向こうの男女がベッドに雪崩れた瞬間、液晶は黒一色に染まる。振り向いた今井の眼が、リモコンを握った佐々木の姿を捉えた。

2011-12-07 16:29:38
麻木ちいこ @haruichi_asaki

縁側に腰を下ろした佐々木は、疲労から深い溜め息を吐く。右手に握った湯飲みは温かかった。「で、貴方は何をしに来たんですか」隣で膝を抱える今井の指先は、佐々木の隊服の裾を掴んでいる。肝心の唇は開く気配がない。佐々木は再び吐息を洩らして、口元を緩めた。「まさか貴方に励まされるとはね」

2011-12-07 16:29:45
麻木ちいこ @haruichi_asaki

坂田が山崎の肩を押して煎餅布団の上に倒す。指先は僅かに震えていた。「どうしたんです?」「いや、少し緊張しちまって」坂田が引き攣った表情を浮かべる。「旦那だって初めてじゃないでしょうに」笑いながら首に腕を絡める山崎に、坂田は今更「好いた人間を抱くのは初めてだ」とは言い出せなかった。

2011-12-07 21:39:29
麻木ちいこ @haruichi_asaki

「お出掛けですか」「ああ。何かあったら連絡してくれ」すれ違いざまの土方の横顔を見て、山崎の心はひどく痛んだ。土方は週に二度ほど花街に向かう。そのことを知っているのは、皮肉にも男を恋慕う山崎だけであった。「いってらっしゃい」笑顔の裏で感情を押し込んで、山崎は想い人の背中を見送った。

2011-12-07 23:52:15
麻木ちいこ @haruichi_asaki

雨の滴る昼下がり、坂田の元に坂本からの手紙が届いた。男は度々地球に帰ると言うのだが、いざ地に立つと商いに構いきりで顔を出さないのだ。「次も来なかったらもう知らねェ」悪態を吐きながら、坂田は手紙を紛失せぬようにと机の引き出しにしまう。いつの間にやら晴れた空には虹の橋が掛かっていた。

2011-12-08 20:51:42
麻木ちいこ @haruichi_asaki

「髪、切らねェのか」高杉が桂の黒髪を掬い上げる。それは前回顔を合わせた時に比べて随分と伸びており、数ヶ月に及び逢瀬のなかった日々を想起させた。「ああ、そろそろ切らねばな」高杉の指に自らの髪が絡むさまに桂は息を飲む。「次はすぐに会いに来る」去り際の高杉が、桂の薄い唇をそっと奪った。

2011-12-08 23:29:48
麻木ちいこ @haruichi_asaki

任務が長引いて夜遅くに宴会場に辿り着いた山崎は、私服姿の隊士達の中で一人隊服を纏っていた。「山崎も飲めよ」「遠慮しとく、後々あの人の介抱しなきゃなんねェし」原田が勧める酒を断り、山崎はつまみに箸を伸ばす。「お前も大変だな」友人の労いを耳にしつつ、山崎は酒を煽る土方の姿を眺めた。

2011-12-09 04:13:00
麻木ちいこ @haruichi_asaki

山崎は己を呼ぶ声に足をとめた。声の主である土方は抱えていた書類の束を山崎に押し付け、勤務時間内に記載内容ごとに分けて持って来いと言うのだ。「俺の扱い酷くないですか」「そう容易く飴が貰えると思うな」強い口調の土方が男の頭を撫でて去る。温かな掌につられ、山崎の頬までもが熱を持った。

2011-12-09 08:20:49
麻木ちいこ @haruichi_asaki

「背中を貸してください」「背中で良いのか」「はい」かくして山崎の謙虚な願いは受け入れられた。畳んだ腕と頬を土方の背に寄せ、ゆっくりと瞳を閉じる。「土方先生、好きです。好きでした」下唇を噛み締めた土方は、何も答えられぬまま己の想いを飲み込んだ。卒業式のその後の、静まり返った教室で。

2011-12-09 08:41:55
麻木ちいこ @haruichi_asaki

「何も泣かんでも」「泣いてねェわ馬鹿」おばけ屋敷に踏み入り早数分、図星を悟られぬようにと気丈に振る舞う土方の瞳から雫がこぼれた。「ねえ、涙がとまる魔法かけてあげましょうか」言うが早いか山崎は唇を重ねる。暗闇に紛れた二人の舌が触れ合う頃、確かに土方は恐怖を忘れ男に心を奪われていた。

2011-12-10 02:27:52
麻木ちいこ @haruichi_asaki

土方の腕は懸命に抵抗する山崎の身を抱え上げた。山崎は昼間に加勢した捕り物の最中に浪士の刀が掠り、腕に軽い傷を負ったのだ。「嫌ですってば!」濡らしたタオルで体を拭いて済ませようとした男を、土方が強引に風呂へと運ぶ。「大人しくしてろ」心なしか優しい上司の声に、山崎は思わず押し黙った。

2011-12-10 21:39:22
麻木ちいこ @haruichi_asaki

原田が呼ばれるままに副長室に訪れると、土方の隣には酔い潰れて眠る山崎の姿があった。「部屋に運んでやってくれねェか」別段断る理由も見当たらず、原田は山崎の体をそっと抱え上げて部屋を出る。「俺には酔ったところも見せねェくせに」丑三つ時の廊下を軋ませながら、原田は小さな声で呟いた。

2011-12-10 22:10:32
麻木ちいこ @haruichi_asaki

「ちィと出てくる」江戸に降りた日の夜、外出間際の高杉が告げた。「い、嫌っス!」台所に立つ来島は包丁を置き、慌てて男を引きとめる。その勢い余った行動は高杉の体を押し倒した。「いま晋助様の好物作ってるんです。……食べてほしい」来島の潤む瞳を見てしまえば、叱る気など起きる訳もなかった。

2011-12-11 00:02:04
麻木ちいこ @haruichi_asaki

手持ち無沙汰の土方の両眼が部屋の掛け時計を捉える。時間は夜の11時を回ったところだった。おもむろに携帯電話を拾い上げ、起動させたメールの作成画面に「寒い。湯たんぽが要る」と記し送信する。電話を視界の外に放って間もなく、布団に寝転んだ土方は副長室へ駆け寄る山崎の足音に頬を緩ませた。

2011-12-11 11:48:47
麻木ちいこ @haruichi_asaki

「アンタと違って俺は暇じゃねーの」山崎が不機嫌そうに河上の胸を強く押して突き放す。しかし男の腕は未だ捕らえられたままだった。「いつまで触ってんだよ、っ!」腕を振り解き、場を去ろうと背を向けた山崎の体を、後方から河上が包み込む。不意に首筋に触れた唇の感触に山崎は動揺を隠せなかった。

2011-12-11 23:20:26
麻木ちいこ @haruichi_asaki

「シーズちゃん」「うぜぇ」あからさまな甘ったるい呼び声は、毎度必ず静雄の神経を逆撫でした。本日幾度目かのそれに、大きな舌打ちを洩らして臨也を睨み付ける。「用もねぇのに呼ぶんじゃねぇ」「じゃあ用があるなら良いんだ」瞳を細めて呟いた臨也はするりとサングラスを、そして静雄の唇を奪った。

2011-12-12 03:45:48
麻木ちいこ @haruichi_asaki

「はらだ、はらだってば」電話越しの山崎の声は驚くほどに甘さを含んでいる。それは嘗て原田が聞いた事のない声色だった。「お前今夜は副長と飲んでるんだっけか。ちっと飲み過ぎじゃねェの」「はらだ、……あいたいな」脈絡もなくただ寂しげに告げられた言葉に、原田の心臓は今にも破れそうだった。

2011-12-12 13:15:22
麻木ちいこ @haruichi_asaki

身なりを整え隊服を纏い、深呼吸の後に部屋を出て仕事に向かう。それが今井の日課であった。しかし今日は違う。襖を開いて部屋から足を踏み出した瞬間に、何かがその一歩を阻んだのだ。「……気が付かなかった」拾い上げた箱には、今井の好物が詰まっている。添えられたメモの字は佐々木のものだった。

2011-12-12 18:30:56
麻木ちいこ @haruichi_asaki

寺門のライブに招待された山崎は、更に終演後の楽屋に招かれ四方山話に耽った。「もう時間だね」山崎を見送るべく腰を上げた寺門が衣服の裾を踏んでしまい男の胸に倒れ込んだ瞬間、偶然にも互いの唇が重なる。「う、奪っちゃった」頬を染めて恥ずかしげに呟く寺門を眺め、山崎は再び唇を触れ合わせた。

2011-12-12 18:31:50
麻木ちいこ @haruichi_asaki

土方が怪我をしたらしい。見回り中に複数の浪士に襲われ、腕に幾つか傷を負ったという連絡が入ったのだ。「行ってやれ」居酒屋で酒を酌み交わす最中、原田が山崎に告げる。「今度埋め合わせするな」言い残して去った山崎のグラスに残る酒を、原田は一気に煽って呟いた。「俺は一人なんか慣れっこだ」

2011-12-12 23:21:37
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