「文化度」の地図化は何が問題か?ハンチントン『気候と文明』批判

高校の地図帳に掲載されていた「世界の”文化度”」という地図の問題点について。ハンチントン『気候と文明』の批判。「環境決定論」という批判がかえって別の問題を覆い隠してしまうのではという指摘。
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ろんぎつね @messer_liszt1

祖父が高校生の時の地図帳がおもろすぎる 朝鮮半島南北の境界は38度線、中国本土には英仏葡の租借地が残り、アフリカはほぼほぼヨーロッパの植民地、そして日本では昭和の大合併前で旧い自治体名が大量に見れる。千束,八屋が地図帳で見れるのやばいやろ pic.twitter.com/jPzJTe6Row

2023-10-08 19:16:23
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ろんぎつね @messer_liszt1

あと"文化度"とかいう今となってはやばめの尺度もあって笑った pic.twitter.com/FAwvLdGkEa

2023-10-08 19:58:17
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ろんぎつね @messer_liszt1

意外と反響があったので"世界の文化度"も載せます 欧米が際立って高く、続いてオーストラリア・南アフリカ・アルゼンチンが高く出てる。日本の点数は80点と欧米と比べるとまずまずの自己評価 pic.twitter.com/DFtuPWr8Oa

2023-10-09 14:10:19
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永太郎(ながたろう)/重永瞬 @Naga_Kyoto

この地図の元ネタはハンチントンの『気候と文明』(原著1915年)ですが、「文化度(邦訳本では文明度と訳される)」という指標もさることながら、その測定に使われている尺度が「他の人種を指導しこれを支配する能力」とか「世界の文化劣れる地方を支配する能力」とかでいっそうヤバさが際立つという… twitter.com/messer_liszt1/…

2023-10-14 20:32:57
永太郎(ながたろう)/重永瞬 @Naga_Kyoto

「文明度」は各国の有識者(アメリカ・イギリスが半分以上を占める)へのアンケートで作成されたもの。232頁に元ネタの地図が載っています。指標は223-225頁。 ハンチントン 著, 間崎万里 訳『気候と文明』,岩波書店,1938 2刷. 国立国会図書館デジタルコレクション dl.ndl.go.jp/pid/1878386

2023-10-14 20:43:09
永太郎(ながたろう)/重永瞬 @Naga_Kyoto

アンケートは英語で行われたため、必然的に英米からの回答が多くなった。ハンチントン曰く、回答をしなかった「四分の一は多くは他国人であつて六頁の英文は彼等に恐れをなさしめたやうである」(218頁)とのこと。

2023-10-14 20:55:15
永太郎(ながたろう)/重永瞬 @Naga_Kyoto

ハンチントンの『気候と文明』は、気候という不変な自然条件で可変な文明を説明している点が環境決定論と批判されてきたけど、そもそも被説明変数の設定自体がおかしいからそっちを批判するべきでは、みたいなことがこの論文に書いてあります↓(次ツイ)

2023-10-14 21:05:31
永太郎(ながたろう)/重永瞬 @Naga_Kyoto

小木田敏彦 2018「「裏日本」再考 ―風土論の観点から―」拓殖大学教職課程年報 1: 61-76 takushoku-u.repo.nii.ac.jp/records/215 >あえて説明変数が気候的要因であることを問題視する態度は、被説明変数である文明裏[引用者注:文明度か]に対する自らの立場(=「発展段階の差異」)を曖昧にする巧妙な隠れ蓑となる

2023-10-14 21:07:15