総特集=人生の意味

森岡正博・蔵田伸雄 編『人生の意味の哲学入門』(春秋社、2023年12月)のランニング・コメンタリー。
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吉良貴之|Kira, T. @tkira26

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2024-01-02 19:11:01
人生の意味の哲学入門

森岡 正博,蔵田 伸雄

吉良貴之|Kira, T. @tkira26

蔵田伸雄「少し長いまえがき」:本書の紹介。ショーペンハウアーとかそういうのじゃなくて、分析的実存主義として考える本ですよと。重要な論者としてベネターやメッツをあげる。SEP の項目も。 Metz, Th. (2021). The meaning of life. SEP. plato.stanford.edu/entries/life-m…

2024-01-02 19:18:41
吉良貴之|Kira, T. @tkira26

1章:村山達也「人生の意味をどう問えばよいか」。この曖昧な問いについて、典型例で考えてみたり、問いを分解してみたりといった作業を行う。大切だけれども、最初からこういう話だと退屈に感じる。極端例をたくさん出して、これが説明できるか?と煽るほうが好き。

2024-01-02 19:33:26
吉良貴之|Kira, T. @tkira26

ノージック『考えることを考える』(原著1981年)の議論が紹介されている。ノージックは、意味はある種の自己超越によって外部からもたらされるというロマン主義的な見方をとっている。もうすぐ出る『生のなかの螺旋』(ちくま学芸文庫、2024年2月)の解説でも触れたよ。

2024-01-02 19:37:09
吉良貴之|Kira, T. @tkira26

2章:森岡正博「人生の意味の哲学はどのような議論をしているのか」。人生の意味について古今東西の哲学者たちがどんなことを問い、現在、どんな説が有力かを概観する。これも本全体の紹介みたいな内容で、こんなに予防的に概観しておかないと本論に行けないのか?と思ってしまうのだが。

2024-01-02 19:45:57
吉良貴之|Kira, T. @tkira26

というか、人生の意味を問うからには反功利主義でしょ? 足し算されえない人生の何かを救い出したくてこういう議論やってるんでしょ?と私は決めつけているので、そこの理論動機に触れないのはとてももどかしい。いやもちろん功利主義からの議論だってあるにせよ。

2024-01-02 19:49:59
吉良貴之|Kira, T. @tkira26

第3章:鈴木生郎「広大な宇宙のなかでちっぽけな人生に何の意味があるのか」。表題の問いが私には直観的でないので、ベネターとカヘインの議論を整理したうえで物語的理解を述べる流れがうまくつかめない。最初から物語的理解の話にするか、とことん宇宙ヤバイで突っ走るかのどちらかではないか。

2024-01-02 20:03:08
吉良貴之|Kira, T. @tkira26

第4章:蔵田伸雄「「人生の意味」についての客観説と主観説」。客観説と主観説それぞれのメリットとデメリットを比較してハイブリッド説でまとめるというだけでは工夫がないだろう。ハイブリッド説の魅力をもっと正面から語るべきではないか?

2024-01-02 20:22:24
吉良貴之|Kira, T. @tkira26

第5章:杉本俊介「人生の意味と幸福」。快楽説/欲求充足説/客観的リスト説の三分類から、メッツの幸福と人生の意味の区別を検討。ただこれで人生の意味にとって客観的考慮が必要かというとそうでもなく(有機説はどうか?)、むしろ三分類に入りにくい問題領域があると捉えるべきではないか。

2024-01-02 20:41:55
吉良貴之|Kira, T. @tkira26

第6章:吉沢文武「人生が無意味なら生まれてこないほうが良いのだろうか」。ベネターの反出生主義の根拠を7つに分け、「仮に人生全体が無意味だとして、それが負の値を示すなら、反出生主義の根拠となるか(147)」と問う。絶対的に負だったらなりそうだが、程度的な論点の検討だけでよくわからない。

2024-01-02 20:58:19
吉良貴之|Kira, T. @tkira26

第7章:長門裕介「人生の意味と自己実現」。「自分と理想の位置関係が選択によってどう変化するか」と問うて客観性の契機を呼び込み、「自らが人間性の例証となる」自己信頼が現れる場として民主主義を捉える、非エリート主義的なエマソン的完成主義に着地させる。これは手練れの技ですね。

2024-01-02 21:18:47
吉良貴之|Kira, T. @tkira26

第8章:久木田水生「生の意味について語るときに私たちが語ること」。生の意味を問うのは非‐文脈的なものではなく、二人称的な責任帰属や、一人称的な苦悩の表出とかであるというように語用論的なアプローチをとる。そういう見方はもちろんありだし、例も面白いので、最初からそれに集中すべきでは。

2024-01-02 21:38:40
吉良貴之|Kira, T. @tkira26

私は人生に悩んでいないし、自分やあなたの意味はどっちでもいいんだけど、エイハブさん(仮名)みたいな無茶な人の生が客観的にどう意味づけられるかには関心がある。それは何か線を引いて合否をつけるようなやり方だけでなく、有機的だったり物語的だったりいろいろするだろう。

2024-01-02 21:43:45
吉良貴之|Kira, T. @tkira26

第9章:古田徹也「人生の意味論と前期ウィトゲンシュタイン」。世界を永遠の相のもとに眺め、神の意志に驚き、良心でもってそれに従った認識の生を送ることが前期Wの幸福論とのことだとしてメッツの解釈を批判するが、そうするとメッツらの人生の意味論は前期Wをただ無視してはいけないのかな。

2024-01-02 22:04:40
吉良貴之|Kira, T. @tkira26

第10章:山口尚「人生の意味の哲学へ入門することは可能か?」。独我論のガチの深みが他者の言葉によって理解されえないものとすれば、人生の意味の哲学も同様に「入門」はありえず、ただ私にとっての世界の相貌(aspect)の問題だという。これも定義によって無駄な問題を作り出す種類の議論だろう。

2024-01-02 22:17:33
吉良貴之|Kira, T. @tkira26

第11章:森岡正博「人生にイエスと言うのは誰なのか?」。人生の意味には主観と客観に加えて「独在」の相があり、それは反事実的仮想としてさえ語りえない個人的なものだという。そう狭めた上でフランクルやニーチェの話が続くが、アカデミックには明らかにできないようなので、重要でないのだろう。

2024-01-02 22:30:21
吉良貴之|Kira, T. @tkira26

蔵田「もうひとつのあとがき」は「「人生の意味」に関する問題圏とフェミニズムや生命倫理、障害論、平和論との接続は今後の課題(297)」と述べるが、そう自覚しつつ関連する論考がほぼないことは理解しにくい。ただ、これは The Oxford Handbook of Meaning in Life, 2022 もあまり変わらない。

2024-01-02 22:42:26
吉良貴之|Kira, T. @tkira26

批判的なコメントが多くなってしまって感じ悪いかもしれないので、私自身の関連論考も。古くなったけど、主要部分はまだ生きていると思います。 吉良 (2013)「死者と将来世代の存在論:剥奪説をめぐって」 吉良 (2010)「私の生の全体に満足するのは誰なのか:Whole Life Satisfaction説の諸相」

2024-01-02 22:47:09