新しい楽器:20.エオリアン・ハープ
- nakagawa09
- 460
- 0
- 0
- 54
20.エオリアン・ハープ:今日はエオリアン・ハープについて少し。エオリアン・ハープというものは風鈴みたいなもので、単純な楽器あるいは音具です。まずは楽器の話をする前に、エオリアン・ハープを知るきっかけになった作家を紹介します。
2024-02-09 12:25:53ゴードン・モナハンという作家です。1982年のスピーカー・スウィンギングという作品がやたら有名です。こういう作品です。 スピーカーがスウィングしてぐるぐる回る作品です。|youtu.be/delDUry0_eo Gordon Monahan - Speaker Swinging
2024-02-09 12:25:54残念ながら僕はまだこのパフォーマンスを見たことないのですが、ほぼ同じ音高の電子音が、直径10メートルくらいの円周上をグルグル回る三つの円は、なかなか迫力あるものだろうなあ、と想像します。けっこう重そうなスピーカーがぶん回されるのを眺めるのはスリリングでしょうねえ。
2024-02-09 12:25:55作品説明みたいなもののなかで、ゴードン・モナハンは、ドップラー効果のおかげで縮んだり伸びたりするように聞こえる音は、分子運動みたいなものだし天体的なものを参照しているのだ云々と書いています。|Speaker Swinging - Gordon Monahan gordonmonahan.com/speaker-swingi…
2024-02-09 12:25:56ただ、その説明は僕にはイマイチ良く分かりません。その前のところに書いているのですが、この作品はスピーカーを電子楽器として使っているのだ、という説明は、納得できます。
2024-02-09 12:25:57これはスピーカーを電子楽器として使うものなわけです。通常は脇役のはずのスピーカーを主役に据えるわけで、「新しい楽器」の「スピーカー」で扱うべき作品のひとつなわけです。ほかはライヒの振り子の音楽など、ですね。|Pendulum Music - Steve Reich (1966) - YouTube youtube.com/watch?v=m4I03d…
2024-02-09 12:25:57ゴードン・モナハンは、コンセプトとパフォーマンスが傑出したこの作品が有名ですが、他にも色々面白い作品を作っています。例えば、彼はこのような系列の作品をいくつか作っています。 |youtu.be/yJTmkAo3lCA Frozen Piano on Lake Nipissing
2024-02-09 12:25:58こんなのとか。|A Piano Listening To Itself – Brno Variation - Gordon Monahan gordonmonahan.com/a-piano-listen…
2024-02-09 12:25:59こんなのとか。|Long Aeolian Piano - Gordon Monahan gordonmonahan.com/long-aeolian-p…
2024-02-09 12:26:00つまり、屋外に置いたピアノにワイヤーを取り付けて、そのワイヤーに風が当たることで音が生じる、というタイプの作品です。彼のウェブサイトの作品リストを見ると、このタイプの作品がけっこうあります。
2024-02-09 12:26:01僕は最初、これがなぜ音を発するのかよく分かっていませんでした。ワイヤーに風が当たって生じる振動が電磁気を発することで、音が発せられているのかな?などと思っていました(アルビン・ルシエのMusin on a long thin wireの屋外版?と思っていました)。
2024-02-09 12:26:01でも、だとすると、音が単純な電子音だと思うのですが、けっこう複雑です。これは何だろう?と思っていたのですが、ある時、これは「エオリアン・ハープ」なるものの拡大版なのだ、と知りました。
2024-02-09 12:26:02ということで、やっとエオリアン・ハープの話です。まずは、エオリアンハープの映像へのリンクを貼っておきます。僕はこの動画をアップロードした方のことは知りませんが、エオリアン・ハープなるものはそんなに珍しいものではありません。| youtu.be/7arKn59tk78 本物のエオリアン・ハープの音
2024-02-09 12:26:03エオリアン・ハープというのは、この動画のように、共鳴体となる箱とその上に貼られた弦からなる「楽器」です。これを屋外に置いておき、風が吹くと、弦が振動し、共鳴体で音と振動が増幅され、音が生じる、という代物です。
2024-02-09 12:26:04僕はもう10年ほど前に黄金町で行われた杉山紘一郎さんという方のワークショップで自作したことがあるのですが、その時はワークショップ参加者10名ほどのうち7,8名のエオリアン・ハープはうまく音を発するものとなりました。|杉山 紘一郎 – Bluebook bluebook.co.jp/koichiro-sugiy…
2024-02-09 12:26:04これは、じっくり長時間にわたり耳を傾ける対象ではありませんが、窓のところに置いておいて、時々音が鳴るのを聞いて、その存在を思い出したり風が吹いていることに気付いたりするという音具です。風鈴に似てますよね。
2024-02-09 12:26:05これは「音具」という程度の呼び名が適切なのだろうと思いますが、「ハープ」という名前なので、慣習的に「楽器」と呼ぶこともあります。で、これを「楽器」だと考えると、この楽器を演奏する主体は「自然」です。つまり、エオリアン・ハープは自然が演奏する楽器なんですね。
2024-02-09 12:26:06と、なんとなくキレイにまとまりそうですが、そういうことをしても仕方ないので、何か別の言い方を探るとして、エオリアン・ハープのように〈「楽器」は必ずしも人間が演奏するとは限らない〉し、(つづく)
2024-02-09 12:26:07スピーカー・スウィンギングのように〈音楽に関わる楽器に近いけど楽器ではないものを、楽器として使うこともできる〉とか言っておきたいと思います。それではまた。
2024-02-09 12:26:08最後に宣伝。『サウンド・アートとは何か 音と耳に関わる現代アートの四つの系譜』が出ました。音響彫刻など視覚美術のことだけではなく、実験音楽などアヴァンギャルドな音楽のことだけでもなく、包括的に「サウンド・アート」について整理した唯一の本です。 nakanishiya.co.jp/book/b10044931…
2024-02-09 12:26:08四つの領域におけるサウンド・アートの系譜を整理しました。それぞれ、音響彫刻小史、実験音楽としてのサウンド・アート小史、メディア・アートとしてのサウンド・アート小史、サウンド・インスタレーション小史として読めます。nakanishiya.co.jp/book/b10044931…
2024-02-09 12:26:09『サウンド・アートとは何か 音と耳に関わる現代アートの四つの系譜』が広く、長く、読まれますように。nakanishiya.co.jp/book/b10044931…
2024-02-09 12:26:10エオリアン・ハープについては、直接的には言及していません。ゴードン・モナハンについては、サウンド・インスタレーションの章で「屋外に置いたピアノにワイヤーを取り付けて、そのワイヤーに風が当たることで音が生じる、というタイプの作品」について、少し言及しています。
2024-02-09 12:26:11