ブルース・アッシュビーは果たして戦術家だったのか?

銀河英雄伝説にて歴史上の名将として登場するブルース・アッシュビーについての考察となります。
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ヤン・ヒューリック @1xuVLqH3kQ

ブルース・アッシュビーは長年参謀長を務めた親友のアルフレッド・ローザスから「戦術家であって戦略家ではない」「要塞よりも艦隊増強を優先させた」「艦隊を率いる魔力に取りつかれた」とある。 だけど、果たして本当にその通りだったのかを考えてみようと思う。

2024-03-07 19:45:01
ヤン・ヒューリック @1xuVLqH3kQ

これはクリストフ・フォン・ケーフェンヒラー大佐の資料に基づいた考察になるが、ブルース・アッシュビーは同盟に亡命したジークマイスター提督からの諜報網を得て、帝国軍の情報を手に入れていたという。

2024-03-07 19:48:40
ヤン・ヒューリック @1xuVLqH3kQ

ただ、それは玉石混交の代物であり、ヤン・ウェンリーはアッシュビーはその中から玉を引き当てる名人であったと評した。 つまりかなり高度な分析力を有しており、その中から帝国軍の動きを見抜いていた。 彼が若くして宇宙艦隊司令長官に就任して連戦連勝していた要因がこれだったという。

2024-03-07 19:49:58
ヤン・ヒューリック @1xuVLqH3kQ

そう考えると、アッシュビーは戦略家としての気質を持ち合わせていたという見方もできる。 情報を仕入れて有利な状況で勝利を収めるのは戦術家ではなく、戦略家の発想。 そして、そうやって仕入れた情報の中で勝利したのが第二次ティアマト星域会戦である。

2024-03-07 20:27:00
ヤン・ヒューリック @1xuVLqH3kQ

第二次ティアマト会戦において、アッシュビーは情報を察知して帝国軍の動きを把握していた。 ・繞回運動に拘る ・帝国軍の主要提督についての情報。 特に帝国軍の提督たちの情報はかなり把握している節がある。

2024-03-07 20:34:18
ヤン・ヒューリック @1xuVLqH3kQ

ウォリス・ウォーリックがシュタイエルマルク艦隊を突破しようとした際に逆に抑え込まれることを把握していたり、ケルトリング軍務尚書の甥であるミュッケンベルガー中将についても押さえており、彼らがどのように動くかを予想できていた。

2024-03-07 20:36:28
ヤン・ヒューリック @1xuVLqH3kQ

ただ、情報源が情報源なだけに同僚たちに伝えることもできず、不協和音の原因になってしまったが、最終的には帝国軍を撃破し、「軍務省にとって涙すべき40分間」という将官60名以上を戦死させている。 ただ、うかつにも彼自身も戦死してしまったわけだが、 ここから本題に入ろうと思う。

2024-03-07 20:38:43
ヤン・ヒューリック @1xuVLqH3kQ

果たしてアッシュビーは本気で艦隊を優先して要塞を作ることを検討しなかったのかということ。 帝国軍は後にイゼルローン要塞を建設し、以後同盟軍は多大なる損害を受け、戦争が続いてしまうことになったわけだが、帝国軍がイゼルローン要塞を建設したのは第二次ティアマト会戦での大敗が理由である。

2024-03-07 20:41:41
ヤン・ヒューリック @1xuVLqH3kQ

帝国軍は将官60名という宇宙艦隊は無論のこと、統帥本部や軍務省などでも活躍できる経験ある将官をいきなり失ってしまった。 これは第二次ティアマト会戦で失った艦艇以上の損失と言える。

2024-03-07 20:43:17
ヤン・ヒューリック @1xuVLqH3kQ

この損失から帝国軍では平民出身者への門戸を開いているほどであり、帝国軍の体質を変革させてしまうほどであった。 これは宇宙艦隊を損失したに等しい損害である。

2024-03-07 20:44:48
ヤン・ヒューリック @1xuVLqH3kQ

それ故に、帝国軍はイゼルローン回廊に要塞を建設し、同盟軍が逆侵攻しないように蓋をする形にした。 なお建設費は途方もない金額で、責任者が自殺させられたほどだったという。 逆に言えば、これだけの大損害を負わない限り、帝国軍は要塞を建設しなかった可能性がある。

2024-03-07 20:46:49
ヤン・ヒューリック @1xuVLqH3kQ

当然ながら、アッシュビーが帝国軍の情報を把握しているのであれば、要塞を建設する可能性がないことも知っているはずであり、であればまずは攻めてくる帝国軍艦隊に備えるための艦隊の増強が急務だったと言える。

2024-03-07 20:47:48
ヤン・ヒューリック @1xuVLqH3kQ

そして、イゼルローン回廊はかなりの難所であり、それこそ同盟を建国した彼らの祖先はイゼルローンで多くの人員を失っている。 また、同盟はこのあたりの地の利を得ておらず、逆に帝国軍の方が知り尽くした場所でもある。

2024-03-07 20:49:11
ヤン・ヒューリック @1xuVLqH3kQ

いきなり要塞を作ろうとしても、帝国軍を黙ってみているわけがなく、当然ながら妨害してくるだろうし、そのたびに数に勝る帝国軍を相手にしていれば消耗戦になるので結果として同盟軍が不利になる。 建設する上での条件があんまり揃っていないのだ。

2024-03-07 20:50:16
ヤン・ヒューリック @1xuVLqH3kQ

逆に帝国にしてみればイゼルローン回廊はある程度は把握している上に、出口方面も確保しているのであれば、ここで戦いつつ要塞を建設すればいいのである。 そして、同盟領に侵攻しない限り同盟軍は出動しないのだから、イゼルローン回廊に籠っている限りは要塞を作ることは可能である。

2024-03-07 20:51:58
ヤン・ヒューリック @1xuVLqH3kQ

逆に同盟がイゼルローンに要塞を建設するには、地形の把握と帝国側の出口を押さえる必要性があるが、その国力は同盟側にはまだないので、要塞を建設するという発想はいいが、実行するには条件が欠けていたわけである。

2024-03-07 20:52:56
ヤン・ヒューリック @1xuVLqH3kQ

であれば、アッシュビーが要塞建設ではなく艦隊増強を選択したのは、要塞建設は時期尚早であり、同時に条件さえそろえば要塞が作れるであろうと踏んだからではないかと思われる。

2024-03-07 20:53:55
ヤン・ヒューリック @1xuVLqH3kQ

そこで考えたのが第二次ティアマト会戦における勝利であり、ただの勝利ではなく大勝利、それこそ帝国軍を事実上機能停止させるぐらいの戦果をあげる必要性があった。

2024-03-07 20:54:50
ヤン・ヒューリック @1xuVLqH3kQ

アッシュビーはこの戦いに勝てば元帥、そして統合作戦本部長への椅子が待っている。 その権限をフルに使い、イゼルローン回廊に要塞を建設することができれば、そこから政界入りして国防委員長、そして最高議長に就任という未来も見えてくる。

2024-03-07 20:57:46
ヤン・ヒューリック @1xuVLqH3kQ

そうなれば間違いなくアッシュビーはリン・パオやトパロウルを超えて、ハイネセンやグエン・キム・ホアに並ぶ国父としてその名を歴史に刻むこともできただろう。 その為に、アッシュビーはなりふり構わずに戦い、帝国軍に壊滅的な被害を与えて勝利した。

2024-03-07 20:59:40
ヤン・ヒューリック @1xuVLqH3kQ

将官60名の戦死で遠征どころではなくなる帝国軍に対し、ここでイゼルローン回廊に要塞を建設し、帝国方面の入り口を封鎖する条件は整うわけである。 とすると、アッシュビーは戦術家でもあるが戦略家としてもかなり優秀だったんじゃないかと思えるわけで。

2024-03-07 21:01:05
ヤン・ヒューリック @1xuVLqH3kQ

ただ、実際に彼がどこまでそれを考えていたのかが全く分からない上に、その戦略構想も記録等では残っていないので推測でしかない。 ただ単純に帝国に大勝利したかっただけなのかもしれないし、将官60名の戦死も偶然だと思える。

2024-03-07 21:02:05
ヤン・ヒューリック @1xuVLqH3kQ

ただ、そうとも言い切れないのがコーゼル大将の戦死。 アッシュビーにとって、この戦いで真っ先に打ち取らなければならないのがコーゼル大将であり、アッシュビーにはあらゆる手段を使ってでも彼を戦死させる必要性があった。

2024-03-07 21:03:13
ヤン・ヒューリック @1xuVLqH3kQ

コーゼル大将はこの戦いが終わった後、統帥本部次長への内定が決まっていた。 その仕事は帝国軍に存在する、ジークマイスターとミヒャールゼン中将によって構築されたスパイ網の検挙。 仮に第二次ティアマト会戦に勝利しても、コーゼル大将が生き残っているのは非常にマズイのである。

2024-03-07 21:05:30
ヤン・ヒューリック @1xuVLqH3kQ

元々、コーゼル大将は当時珍しい平民出身の提督で門閥貴族との折り合いも悪い人であったが、逆に言えば相手に忖度しないで任務を忠実にこなせる人物であった。 つまり、そんな気骨ある人物がスパイ網の検挙に着手された場合、アッシュビーの常勝戦略も崩壊する。

2024-03-07 21:07:17