稲川淳二の『つぶやき怪談』(2024.01.29)

稲川淳二 @Junji_Inagawa

…もう参った！　もう嫌だ！

稲川淳二 @Junji_Inagawa

例年、私の新年は２月から始まるんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

１月は、去年からそのまま持越しの残務に追われてますから、 ただ…今年はとんでもないものを持越しちゃった。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

というのは、１２年前に前立腺癌のロボット手術をしたんですが、 再発予防の放射線治療をしておいた方がと、 去年１１月２１日から始まったんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

と、…何と、その１２年前の手術の時の溶けて無くなってるはずの糸の端に こびりついた石が直径３センチの結石に成長してたのが 見付かったんです……よくも今迄！！

稲川淳二 @Junji_Inagawa

で、…糸が切れて、２３日から2ヶ月間 昼も夜も絶え間なく襲ってくる凄まじい激痛に耐えて、… ようやく生き地獄から還ってきましたよォー…

稲川淳二 @Junji_Inagawa

という訳で、マブダチのみなさん、ただいまァー！ 稲川淳Ｇでーす！

稲川淳二 @Junji_Inagawa

2024年も宜しくお付合い下さいね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

では、「つぶやき怪談」まいりましょうか。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ゆったりと、くつろいで、 お付き合いいただければと思います。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そんな訳で、怖ーい噺で楽しんで下さい。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

稲川淳二の「つぶやき怪談」、 怖・楽しい時間を、共有しましょうね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

冬の津軽平野を白く被いつくして、 雪は日が落ちてからも降り続いている。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

沈黙の闇を裂いて直走る、貨物列車の警笛が、 突然鳴り響いて、長く尾を引いた。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

立往生した機関車の、 線路脇に降り積った雪が、一面真っ赤な鮮血に染まって、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

車輌の下に巻き込まれた、死身体の残骸を、 保線区の作業員が、バケツやビニール袋に拾い集めている。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

一帯が立入り禁止となって、 警察の現場検証が行われていた。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「……頭部発見しました！」 「左腕見付かりません！」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

といった、遣り取りが聞えてくる。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

降り続く雪が、見る見る現場を白く被い隠して、 再び元の景色へと戻してゆく。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

無残な死身体は、３０代と思われる女性のもので、 粗末な身形をしていた。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

身につけている物といえば、 僅かな小銭と、函館のファミリーレストランの、 レシートの入った財布だけで、 身元を明かすような物は、何一つ持ってやしなかった。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

レシートは前日のもので、御子様ランチとトーストという、 おかしな取合せなんですが、