神話伝承と創作が好き。大体ヴァイキングの話してる。 【エルフおじさんとまじょ子の創作本通販】→yukima.booth.pm 北欧古典「ヘイムスクリングラ」よりノルウェー王の逸話漫画などを創作してます
伏島正義「12-13世紀の『都市』ニダロス -Bjarkeyjar rettrを中心にして-」 cir.nii.ac.jp/crid/139028268… 今回は概要をつぶやくというより、面白いなと思ったところを抜粋しようと思います
2024-04-04 13:26:13【ノルウェーの4つの法域について】 ノルウェーの法律は地理的に4つに区分される ・フロストゥシング(フロスト法) トロンハイム(ニダロス)周辺~北部 ・グラシング(グラ―法) ベルゲンを中心とした西部 この二つが写本として現存しているので資料としてよく出てくる
2024-04-04 13:33:52シングスボーク(þingsbók)というのが法典、法書(各地域のシング(集会)に相応する慣習法の書(ボーク))の意味だと思うけど、本によく「フロストゥシング法」って表記してあるので、「フロスト集会法」みたいな表記の仕方なんだろうか
2024-04-04 13:41:35その後、マグヌス・ハーコナルソン(改法王)によって1274年に、全国に妥当する一般法ランドスロウ(Landslov)にとって変わられ、更に同王によって1276年には新しい都市法ビーロウ(Bylov)がベルゲンで成立した、とある。 以上がざっくりしたノルウェーにおける法成立の流れかなぁ
2024-04-04 13:51:37改法王めっちゃ改法するやん…こういうわかりやすいあだ名がついてると覚えやすくて良いですよね😌 マグヌス何世とか言われてもパッとわからんもん 資料としてよく出て来るフロストゥシングとグラシングにも、後年にこの人の手が入って直されている箇所、というのがたびたび出て来る
2024-04-04 13:55:06【Bjarkeyjar rettr(ビャルケイヤールレッター)とは】 語義は「白樺の島の法」。 スウェーデンの古い交易地ビルカに適用されていた法が、ノルウェーやデンマークなどの交易地に名称が転用されたもの、と一般的には考えられている、とある
2024-04-04 14:07:03ビャルケイヤールレッター→ビルケ法、と文中で略されているので以下ビルケ法で。 ノルウェーにおいてビルケ法は12世紀後半~13世紀中頃にかけて成立し、ニダロスに適用された。 フロスト法とほぼ時期的に対応している(ニダロスは地理的にフロスト法の法域)
2024-04-04 14:10:33フロスト法は、その土地に暮らす人の一般生活における色々についての慣習法ですが、(葬儀とか、相続、賠償、結婚、農場運営に関すること、レイザング(軍役)についてとか)、ビルケ法は都市・交易地ならではの取り決めが書いてある法で、街ならではの内容が面白かったです
2024-04-04 14:14:49以下面白かったところ。 ・市民集会の開催が角笛によって知らされる フロスト法とかアイスランドのグラ―ガ―スとか、その他の法においては、臨時集会の知らせは「戦いの矢」で行われます。
2024-04-04 14:20:53多分、最初は本当に鏑矢とか印の着いた矢を飛ばして知らせていたのでは、と思うけど、その後は「矢の形をした棒」になって、さらにその後の時代は十字架の形をした棒、になっています。 これを回覧板みたいに、隣の農場に持って行って集会を知らせる。自分のところで止めてしまうと罰金があります
2024-04-04 14:22:09農場同士は、北欧によくある「農場散居制」という居住形態で、ひらたく言うと土地が割と不毛なので、そのぶん牧草地や農地の面積が必要なため、各農場の距離がかなり離れている場合が多い、ような感じです。 隣いくのに3日かかるとか。
2024-04-04 14:25:36なので、フロスト法とかだと農場の話が主だから、「戦いの矢」という回覧板形式なのだけど、都市法であるビルケ法だと家が隣接・密集してるから角笛で事足りるんだなっていう
2024-04-04 14:26:52・武器集会 自由民で成人は、三挺の武器(楯、槍、広刃の斧)を所持して参集すべし。 敵の上陸・襲撃などに際する集会の開催と参集義務がある。武器を持参しないと各所持品につき罰金が課せられている。 剣は入らない所が、みんな大体持ってる武器だよね、感があってなるほどなってなる
2024-04-04 14:35:35・外国商人の滞在について 外国商人は元来、5月3日~9月14日の間に滞在したが、次第にニダロスに住居を購入・貸借りする年間滞在者(ハンザ商人など)が出てきた。 彼ら越冬者(vetrsetar)には市民としての義務(兵役、租税、夜警、武器集会参加等)があった。
2024-04-04 14:40:40対して短期滞在者は、火事、敵の上陸、船の入出港の際に角笛に応じて参集する義務があったが、年間滞在者のように市民集会参加の義務はなかった。
2024-04-04 14:43:35・全ての者は都市(kaupangi)において等しい権利を持つ 「全ての者はオーダル農民の法を持っており、レンドルマズールは自分の解放エールを催したある人の解放奴隷と同じ法である」
2024-04-04 14:55:37レンドルマズール=王権の代理者で、王の軍役に従う者。 「この時代はまだ地方豪族の首長的性格を払拭し得ず、この後に王の役人的性格のsýslumaðrに組み替えられていく」とあるので、王の代官、というのとはまた微妙に性質が違うのかもしれない
2024-04-04 15:01:56自分の解放エールを催した解放奴隷=奴隷は主人に自分の解放金を支払い、「解放エール(解放のビール)」という饗宴を催すことで、初めて解放され解放奴隷(法によって実態は自由民と全く同じでは無かったりするけど建前上は同じ)になることができます
2024-04-04 15:11:05解放金を支払っても解放のエールを催さないと、法的に解放されたと見做されません。 同様に、葬式の後に「相続のビール(魂のビール)」という饗宴を催さないと、「故人は正しく死んだことにならず、遺産の相続ができない」というのがある
2024-04-04 15:13:11饗宴は単なる飲み会とか食事会とかではなくて、集まった人に対して、自分は解放された身である、自分は相続者である、と宣言して証人になってもらう、というような公的手続きの役割があったんだなぁ、などと思う
2024-04-04 15:14:52