「この切り口で狂犬病研究は、なかなか無かったな。」って現場レポート

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ツイ鳥「ジョージ=コクム」(森に入ったのですが怪物もおらず、ツイ鳥だけがいました。赤字貿易経営者! @_596_

ツイ鳥は丸く青く、羽のない巨大な鳥の姿をした鳥です。ツイ鳥は多くの目でずっと遠くまで見渡すことができ、侵入者を捜して森を守っていました。ある日、誰かが尋ねました。『もし夜に怪物が来たらどうしよう?』ツイ鳥「ジョージ=コクム」巷では「毒の鳥」と言われている方いましたがきっと別の鳥です。輸出入業経営者の貿易業者兼ライター。

ツイ鳥「ジョージ=コクム」(森に入ったのですが怪物もおらず、ツイ鳥だけがいました。赤字貿易経営者! @_596_

狂犬病の症例、今見てたんだけど。 なかなか興味深い、 「この切り口で狂犬病研究は、 なかなか無かったな。」 って現場レポート見つけたから、 みんなにお裾分け。 簡単に言えば 「狂犬病と信仰」のお話。 (続く1 pic.twitter.com/rfB1FSnPws

2024-05-24 21:58:13
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ツイ鳥「ジョージ=コクム」(森に入ったのですが怪物もおらず、ツイ鳥だけがいました。赤字貿易経営者! @_596_

まず前提条件です。 狂犬病。犬などの動物に咬まれることで 感染するこのウイルス性疾患は、 発症すれば死に至る恐ろしい病気です。 死亡率が最も高いとして、 ギネス認定の病気としても知られています。 世界では年間5万人以上もの命が 狂犬病で失われていて、 実はその約3分の1を占めるのが、 「インドと言われます。」 特に農村部の貧困層で被害が 集中しているのが特徴です。 そんなインドで最近、 ある国家的な計画が立ち上がりました。 2030年までに、犬から人への 狂犬病の感染による死亡者をゼロにする。 そんな野心的な目標を掲げた、 国家狂犬病根絶行動計画(NAPRE)です。 この計画の柱は大きく2つ。 1つは、感染源である犬への 予防的なワクチン接種。 そしてもう1つが、 もし犬に咬まれてしまった人への、 迅速な曝露後予防(PEP)です。 PEPというのは、狂犬病の疑いのある 動物に咬まれたり引っかかれたりした 後に行う応急処置のこと。 具体的には、傷口を石けんでよく洗って、 すぐにワクチンを接種する。 重症の場合は抗体を含む、 薬剤の投与も必要になります。 つまりこの計画は、犬にも人にも ワクチンを徹底して接種することで、 狂犬病の感染サイクルを断ち切ろうというわけです。 インド政府はこの計画に、 とても意気込んでいるようです。 ある大臣は、テレビのインタビューで こんなことを言われていました。 「地方の村々では、今でも狂犬病への 恐怖が根強く残っている。 だからこそ、犬の狂犬病を撲滅するという 我々の崇高な取り組みに、 村人たちも積極的に協力してくれるはずだ。」 ここまでが「前提の話」 さて、このインド政府が掲げた目標と、 現地の協力してくれるとういう話。 「本当の話でしょうか?」 そういう現地レポートです。なかなか面白いですよ。 (続く2

2024-05-24 21:58:13
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疑問に思ったのが、グラスゴー大学の研究員で、 世界保健機関(WHO)の顧問も務める 人類学者、デボラ=ナダル博士です。 ナダル博士はこれまで、インドの都市部で 人と犬と狂犬病ウイルスの「共生」について 研究してきました。 その博士論文は書籍化され、 賞も受賞するなど、高い評価を受けています。 そんな彼女が今回、 フィールドワークの舞台に選んだのが、 インド西部グジャラート州の農村地帯。 ここには、ハドカイ・マータ様という、 女神様が信仰されています。 一般的に言うローカルカルト(Local Cults)、 つまり、この地区内で信じられている信仰です。 興味深いのは、ハドカイ・マータが 「狂犬病の母」と呼ばれていること。 犬に咬まれたり、家畜が咬まれたりした時、 人々はこの女神に祈りを捧げるのだそうです。 「なぜ予防するんじゃなくて、 女神様に祈るのだろうか?」 素朴な疑問を抱いた ナダル博士は現地の31のお寺で、 祈祷師やお寺の管理人の方々に 話を聞くことにしました。 するとそこで見えてきたのは、 この地域に根付いた、とても興味深い 狂犬病観だったのです。 (続く3

2024-05-24 21:58:14
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ツイ鳥「ジョージ=コクム」(森に入ったのですが怪物もおらず、ツイ鳥だけがいました。赤字貿易経営者! @_596_

まず、犬に咬まれる理由。 現地の人の多くは、こう説明します。 「自分に罪があったから」 「何か悪いことをしたから」 嘘をついたり、約束を破ったり、 親族を粗末にしたり。 あるいは、ハドカイ・マータという 女神様を侮ったり、無視したりしたから。 そういった「悪事」への、 神様からのお仕置きなのだと。 つまり犬は、女神の「使者」の ようなものなんですね。 「良い犬」が軽く咬むのは、一種の警告。 でもそれでも悪事を繰り返していると、 今度は女神が「悪い犬」に乗り移って、 その人を狂犬病に感染させて、 本気で罰するのだそうです。 興味深いのは、この感染のプロセスにも、 ハドカイ・マータ信仰独特の解釈があること。 普通、狂犬病に感染するには、 狂犬病を発症した動物に咬まれる必要があります。 でも現地の人の中には、 「もし女神様が望むなら、犬が狂犬病でなくても、 いや、そもそも犬に咬まれなくても、 人を発症させることができる」 と信じている人もいるとか。。 女神の力があれば、それくらい朝飯前なのだとか。 (続く4

2024-05-24 21:58:15
ツイ鳥「ジョージ=コクム」(森に入ったのですが怪物もおらず、ツイ鳥だけがいました。赤字貿易経営者! @_596_

さて、もし実際に犬に咬まれたら、 彼らはどうするのでしょうか。 まず真っ先に駆け込むのが、 ハドカイ・マータを祀るお寺です。 そこで祈祷師から特別な糸をもらい、 それを手首に巻きます。 その時、女神様に誓いを立てるのがポイント。 多くの場合、 「この病気が治ったら、必ずお供え物をします」 といった感じの約束ごとをするのだそうです。 そしてこの「お守り」を身につけたまま、 5週間、一定のルールを守って生活します。 葬式や赤ちゃんのお祝いに行ってはダメ。 お酒も肉も絶対禁止。 こうしたご法度を破ると、 たちまち発症してしまう、と信じられているのです。 でもきちんとルールを守れば、 ハドカイ・マータ様が、 咬まれた傷を「悪い犬の傷」から 「良い犬の傷」に変えて、 狂犬病の危険から救い出してくれる。 多くの人々がそう信じているようです。 ただし、この「治療」には タイムリミットがあるんだとか。 犬に咬まれてから3日半以内に、 お寺にたどり着かなくてはならない。 その3日半が過ぎてしまうと、 たとえ女神様がOKしてくれても、 「完治を保証することはできない」のだそうです。 なぜ3日半なのか。 それは、狂犬病の潜伏期間、 つまり 感染してから発症するまでの期間が、 だいたい3日から3ヶ月だから、 実経験上「3日半までがリミットなのでは?」 と信じられているそうで。 つまり彼らにとって、 狂犬病は「病気」というよりも、 「女神の罰」に近いと思っているようです。 だから発症を防ぐには、 女神様に許しを請うことが何より大事。 そこには医学とはまた違う、 彼ら独自の因果関係の物語があるのです。 (続く5

2024-05-24 21:58:15
ツイ鳥「ジョージ=コクム」(森に入ったのですが怪物もおらず、ツイ鳥だけがいました。赤字貿易経営者! @_596_

だからこそ多くの人が、もし犬に咬まれたら、 真っ先にハドカイ・マータの お寺に駆け込むんですね。 病院に行ってワクチンを打つことより、 女神様の力を信じることを優先するわけです。 でも、こうした考え方は、 WHOが推奨する狂犬病対策とは、 ずいぶん食い違っています。 1つの地域に根付いた伝統的な世界観を、 簡単に変えるのは難しいでしょう。 とはいえ、だからといって頭ごなしに 「間違っている」と否定しても、 人々の行動は変わらないかもしれません。 実際、今回の調査でも興味深い結果が出ています。 人へのワクチン接種について尋ねたところ、 4分の3の祈祷師が「ワクチンは絶対に必要ない」 とは言わなかったのです。 女神の力は信じつつも、 「できれば」「重症なら」 ワクチンも 打っておいた方がいい。 そう考える人が多数派だったんですね。 一方で、犬へのワクチン接種には、 反対の声が強かったそうです。 「狂犬病は病気なんかじゃない。 女神様のお思し召しなんだ」 「人間を懲らしめる為に、 女神様が犬に乗り移るのを邪魔するな」 そんな主張が大半を占めたといいます。 なぜ犬のワクチンには反対するのか。 その背景には、彼らの世界観があるようです。 この地域では、犬は単なるペットではなく、 人間社会を監視する女神の使者だと 考えられているんですね。 だから「犬の数を減らすな」 「犬の行動を変えるな」という意識が強いのです。 でも、だからといって彼らが 犬を大切にしていないわけではありません。 狂犬病の犬を、むやみに殺すのは タブー視されているんだとか。 「女神様が乗り移っているんだから、 その犬を傷つけたら罰が当たる」 そう考える人が少なくないようです。 犬を殺さずに、どう対処するのか。 ある祈祷師の話では、 もし狂犬病の犬が村に現れたら、 まず皆で戸締りをする。 そしてその犬が、女神様のお告げ通りに 人を咬み終わるのをじっと待つ。 やがて犬は、女神様にお参りをしてから、 村を立ち去っていく。 そんな話を聞くと、彼らが単に狂犬病を 恐れているだけではないことがわかります。 人と犬の奇妙な共生関係がここにはあります。 (続き6

2024-05-24 21:58:16
ツイ鳥「ジョージ=コクム」(森に入ったのですが怪物もおらず、ツイ鳥だけがいました。赤字貿易経営者! @_596_

宗教と伝統が人々の暮らしに 深く根付いているからこそ、 国が一律に進める対策には、 なかなか馴染みにくいのが現状なのかもしれません。 ハドカイ・マータ信仰は、 そんなインドの複雑な事情を象徴する 一例と言えるかもしれません。 犬を神聖視する教えと、差別に苦しむ人々の現実。 その狭間で生まれた、独自の世界観。 これを理解することなしに、 インドでの狂犬病の撲滅への道のりは 険しいものとなりそうです。 だからこそ重要なのは、 医学的な「正しさ」を一方的に 押し付けるのではなく、 地域の人々の認識に寄り添い、 その文化的・宗教的背景を理解すること。 そう、ナダル博士は言います。 「狂犬病対策には、現場の複雑さへの 理解が欠かせません。 恐怖心を煽るだけでは、行動を変えるのは難しい。 地域に根付いた価値観を尊重しつつ、 そこから対話を始めることが大切なのです」 なるほどね。国には国のそれぞれの事情と 宗教があるものですね。 その認識のズレを、どう乗り越えていくのか。 「狂犬病」という病の向こうに広がる、 生と死の複雑な世界。 そこと向き合うことなしに、 本当の意味での「撲滅」はないのだと思う。 これはインドに限らず、日本でもどこの世界でも そうだということを博士が言っておられますが。 ここまでデカい宗教でないにしても、 人は人で信じている物は違いますからね。 日本でも 「狂犬病ワクチンは義務でも打たせない」と、 そういうことを思っている人がいるから、 大小なりどこの国でもありそうな話です。 「科学的」か「非科学的」か。 二元論で割り切れない、 命のつながりはあるもんですな。 にしてもインドはこんな調子ですから、 当分、狂犬病は無くなりませんね。 いつ日本に入ってくるかもわかりませんから、 日本ではちゃんと予防しましょうね。 なかなか興味深い研究レポートでしたっと。 気になる方いればレポート置いておきますっと。 信仰と狂犬病か。あんまこの切り口で 考えたこと無かったから面白かったわ。 引用元1:Mata Ni Pachedi, Hadkai Mata - Sarmaya sarmaya.in/objects/indige… 引用元2:Where Rabies Is Not a Disease. Bridging Healthworlds to Improve Mutual Understanding and Prevention of Rabies - PubMed pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35782552/

2024-05-24 21:58:16
寒鴉 葦考(カンア アシタカ) @PwQn1z

@_596_ 正直な所、こういった迷信はあまり尊重する気になれません 多分御存知でしょうがスギヒラタケの様な事件もありますし、人命や衛生が最優先で文化は二の次と思っています 私には文化・風習など、とても子々孫々を生命的に苦しめる正当性にはならないと考えます 文化への執着は難しいですね

2024-05-24 22:57:42
ららら らー @LaLaLanLanLan

@_596_ 「狂犬病対策には、現場の複雑さへの理解が欠かせません。 恐怖心を煽るだけでは、行動を変えるのは難しい。 地域に根付いた価値観を尊重しつつ、そこから対話を始めることが大切なのです」 →日本のコロナ対策も反ワクチンも、両方とも非科学的かつ土着的で、民俗学的に調査研究すると面白いと思う。

2024-05-25 00:49:10
Korem @Dagreatdey4you

@_596_ むちゃくちゃ面白い。 風土と信仰、文化と医療≒生死感、人間の暮らしを織りなす行動様式や価値観は、いろいろなものが複雑に絡み合ってるんだなぁと思うよね。その数だけ、「当たり前」があるわけだから、相互理解って難しいのだろうな。 興味深いなぁ。

2024-05-25 15:22:41
Chandra @tiw_prakash

@_596_ 野良犬にも妻が噛まれましたが、その犬は感染していませんでした

2024-05-25 16:42:34
666Kazuhiro666 @666Kazuhiro666

@_596_ 2月にアメリカンピットブルテリアに 噛まれたけど特になにもしなかったなぁ🤔 救急病院行って処置して貰って、 その後地元の外科に行ったけどね👨‍⚕️🏥 狂犬病はほぼ日本にはないって💦 野犬とか得体の知れない犬に噛まれたなら話は変わるけどみたいな😅

2024-05-25 01:04:39
maa linga bhairvi @anilsingh88888

@_596_ 正直な所、こういった迷信はあまり尊重する気になれません 多分御存知でしょうがスギヒラタケの様な事件もありますし、人命や衛生が最優先で文化は二の次と思っています 私には文化・風習など、とても子々孫々を生命的に苦しめる正当性にはならないと考えます 文化への執着は難しいですね

2024-05-25 03:27:41
たーーーーっ(੭˙o˙)੭ @pD1epkuzfNKcluN

@_596_ 疫病神信仰たる祇園信仰と全く構造が一緒 疫病が流行るのは、「祇園さんを怒らせたから」 そもそも祇園神牛頭天王、インドにいない天部(ヒンドゥー教由来の神仏)なんだけど(つまり、仏教伝播の途中で地元信仰が取り込まれた)、実はインドにも似た神様がいたということで、興味深い

2024-05-25 06:32:58
高浮上 @Twitte_bluebird

@_596_ すごく興味深くて面白い 場所が変われば当然のごとく考え方も変わる

2024-05-25 05:41:05
赤さん @akasan305927271

@_596_ 大学のキリスト教の授業の先生が宗教の対義語は科学って言ってたなー めちゃくちゃ納得した

2024-05-25 09:24:22
𝕂𝕀𝕋𝔸 𝕩 @某警備府減衰 #げんぜいかると @KITA__13

@_596_ ( ˘ω˘)件の寺院のお隣に狂犬病対策(ワクチン)可能な診療所を併設する事から始めたら良さそう

2024-05-25 10:50:52
アサきんぎょ @asakingyo1

@_596_ コロナが流行りだした頃、日本の穢れに対する考え方は古代や中世の伝染病対策だったんじゃないかと言われましたね。 穢れた者と接触すると穢れるとか。禊に一定期間、社会と隔絶されるとか。

2024-05-25 14:28:00
めろめろ @meroppa1

@_596_ 流石ライターさん、凄く読み易く伝わり易く話の内容そのものよりあなたの人格の良さが印象的です。俺は人類学や民族学や宗教学オタクである上にネガティブなので同じ事を語るとしても蘊蓄と主張が先走るし読み手に不快感を与えてしまいます。以下それを披露します。 人々は目立ったり刺激の強い物事を

2024-05-25 13:28:21
全身が半導体 @gohning_voo

@_596_ めちゃくちゃ読みやすくて面白かった 宗教を俯瞰で見られる文化に生まれてよかった

2024-05-25 11:28:50
Timothy @Pride__of__zion

@_596_ これは面白い。狂犬病とローカル信仰宗教の密接な関わり。

2024-05-25 15:48:32
Yasuyuki Hashiguchi @hashiyuki0909

興味深い 著者も書いているように、このような事例はインドの田舎だけではなく、おそらく日本でも同じで、共同体の中に存在するある種の共通認識が、たとえばワクチン接種を拒む方向に作用することも実際にありそう そういう構造を発見して記載するのは、文系的学問の重要な役割だなあ、と思う x.com/_596_/status/1…

2024-05-25 13:04:46
まいたけ @mytk0u0

面白かった。非合理的な信念の持ち主にどうはたらきかけていくか、という類の話は、たとえば「当たり前」や「常識」が枕詞になっちゃってる人とどう向き合うかみたいな身近な問題とも通ずるものがある x.com/_596_/status/1…

2024-05-25 16:12:31