【ほうかご百物語】妖怪についてつらつらと(2、3巻)
- Bredtn_1et
- 5484
- 1
- 0
- 0
※作中との比較
以下、『ほうかご百物語』2巻作中との比較。といっても、イタチさんが白の字を呼ぶために学ランの袖を引っ張ったのを「一瞬袖引き小僧がまた出たのかと思った」というだけの話なので特に比較も何も、状況から見て伝承通りに出現しただけだろう、という他ないわけで。
2012-07-06 08:14:33他にも度々会話や回想に出てきた気はするけど、いずれも袖を引っ張っただけ(多分)なので伝承通り、といえる。ということで以上。
2012-07-06 08:14:35※甘酒婆について
※メモ
甘酒婆って青森と長野の2ヶ所で伝えられているのか。何故こんな離れた場所に?ただ、内容が別物だから別個に生まれたのかもしれないなぁ。
青森バージョンは甘酒がないかと家を訪ねてきて、ないと答えてもあると答えても病気になってしまうはた迷惑な引っ掛け婆さん。長野県飯田市バージョンは戸を叩いて甘酒を売って歩く声が聞こえるといい、こちらは甘酒を売りつけるわけだ。
ただ、音が聞こえる、とだけあるのでもしかしたら音の怪異の一種なのかもなぁ、と個人的に思ったり。情報典拠は『妖怪事典』だけなのでなんともいえないけど。
『ほうかご百物語』2巻に出てきたのは、「甘酒はござらんか?」と尋ねてきたので青森バージョンでしょう。
※2011/11/28のツイートから
※文献を基にした概説メモ
参考文献は[1]「ノートから」(中市 謙三著)『旅と伝説』一五〇号(第一三巻第六号)(『<完全復刻>旅と伝説 第二五巻』(岩崎美術社、1978)より)、[2]『妖怪事典』(村上 健司著、毎日新聞社、2000)、
2012-07-01 22:00:32[3]『改訂 綜合日本民俗語彙 第一巻』(民俗學研究所編、株式会社平凡社、1970)、[4]「全国妖怪語辞典」『日本民俗文化資料集成 8 妖怪』(谷川 健一編纂、三一書房、1988)、
2012-07-01 22:00:39[5]『図説 花と樹の大事典』(木村 陽二郎監修、植物文化研究会・雅麗編集、柏書房株式会社、1996)、[6]『増補 植物の事典』(小倉 謙監修、株式会社東京堂出版、S.53増補9版)。
2012-07-01 22:00:41甘酒婆は青森県や長野県に伝わる妖怪。中市謙三の『ノートから』に拠れば、甘酒婆は夜中に「甘酒が御座らんか」といって毎家の戸を叩くという。あると答えてもないと答えても病に見舞われるという。それを防ぐためには杉の葉を吊るすのだという[1][2][3][4]。
2012-07-01 22:01:03一方、長野県の甘酒婆は飯田市地方に伝わる妖怪で、冬の寒い真夜中に戸を叩いて甘酒を売って歩く声が聞こえるという[2][4]。
2012-07-01 22:01:11ところで、『綜合日本民俗語彙』では東北地方でケンポナシのことを「アマザケ」という。また、俗に深酒する者にこれを食わせれば酔いを醒ますという、と記している。青森県八戸ではこの木があまくさけるからアマザケというのだとしている[3]。
2012-07-01 22:01:46なお、ケンポナシはクロウメモドキ科の落葉高木で、おおよそ本州から九州にかけての山や野に見られる[5][6]。初夏に枝の葉腋に五花弁の花を付ける。秋に数ミリメートル程度の果実をつける。これは甘みがあり食べられるという[5]。
2012-07-01 22:02:02ケンポナシの名称は、はれぼったい手指に例えて「手棒梨(テンポナシ)」に由来するとされる[5]が、ハンセン病患者の手に見立てたものだともいわれる[6]。
2012-07-01 22:02:47ここでふと思ったこと。(1)『ノートから』の甘酒婆の記述は疫病関係の段落にまとめられていたこととケンポナシの名称がハンセン病にまつわること。
2012-07-01 22:03:46(2)(甘酒婆に関する記述の中ではどの地方の伝承か明記されていなかったため断定はできないが)同資料は八戸の民俗を多く収集していることと、『綜合日本民俗語彙』で八戸ではケンポナシを「あまくさけるからアマザケという」と記述していること。
2012-07-01 22:03:59以上の2点から、甘酒婆はもしかしたらハンセン病とケンポナシに関係する妖怪だったのでは…?と思い至ったので文献からのまとめついでに私的メモとして書き留めておく。
2012-07-01 22:04:07ただし、『綜合日本民俗語彙』ではケンポナシを「アマザケ」というは比較的新しい転訛ではないか、とも記しているので、「あくまでもしかしたらその可能性が微粒子レベルで存在するかもしれない」程度の参考までに。
2012-07-01 22:04:10※作中との比較
のっけに登場して出オチになっているが、扉をノックして「甘酒はござらんか」と尋ねてきたので、これは青森県の甘酒婆でしょう。その性質は上記と先輩が語っている通り、あるともないとも、どちらを答えても病気になるという理不尽なもの。
2012-07-01 22:04:38