押川正毅さんによる『トンデル氏・ワリンデル氏講演会』覚え書き

高木学校特別講演会 チェルノブイリ原発事故とスウェーデンにおける被ばく影響 ★マーチン・トンデル氏(スウェーデン ヨーテボリ大学 労働環境医学) チェルノブイリ原発事故によるスウェーデン人の被ばくと悪性腫瘍追跡調査方法 続きを読む
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Masaki Oshikawa (押川 正毅) @MasakiOshikawa

高木学校講演会後[2]Q(私):トンデル氏らの論文にもあるように、チェルノブイリ後、汚染の殆ど無い地域を含め全体的に発ガン率が上昇し、加齢のみでは説明できなさそう。ストックホルムのデータにも見られるように、セシウム汚染食品の全国的流通による内部被曝が原因の可能性はないか?

2012-01-29 21:20:08
Masaki Oshikawa (押川 正毅) @MasakiOshikawa

高木学校講演会後[3]A(トンデル氏):その可能性はあり得るが、研究はこれから。Q(私):内部被曝についてはデータがあまりないのでは? A:実はかなりのデータが蓄積されている(講演で見せたグラフはその極一部?) 。特にサーメ人については内部被曝が大きいので今後の分析は興味深い。

2012-01-29 21:26:04
Masaki Oshikawa (押川 正毅) @MasakiOshikawa

高木学校講演会後[4]Q(私):内部被曝(体内のCs-137量)はどのように測定したか?A(トンデル氏):ホールボディーカウンターによる。

2012-01-29 21:28:29
Masaki Oshikawa (押川 正毅) @MasakiOshikawa

高木学校講演会後[5]Q(私):トンデル氏らの結果は、氏も講演で触れていたようにICRP等の「標準的」リスクモデルよりもかなり大きなリスクを示唆する。一方、チェルノブイリ周辺からの報告、例えばYablokovらのレポートは大雑把にはトンデル氏らの研究とコンシステントに見えるが?

2012-01-29 21:33:27
Masaki Oshikawa (押川 正毅) @MasakiOshikawa

高木学校講演会後[6]A(トンデル氏):Yablokovらのレポートは知っている。ただ、チェルノブイリ周辺の旧ソ連諸国では事故後に大変な社会の混乱があり、正確なデータの収集ができなかった。交絡因子(被曝以外に健康に影響する要因)の分析も困難で、科学的な解析は非常に難しい。

2012-01-29 21:38:46
Masaki Oshikawa (押川 正毅) @MasakiOshikawa

高木学校講演会後[7] (感想:このあたりはトンデル氏のおっしゃる通りで、また以前私が述べたこと http://t.co/NW84bo9r とも重なります。これについては私なりに思うところありますが、また後で。)

2012-01-29 21:42:55
Masaki Oshikawa (押川 正毅) @MasakiOshikawa

高木学校講演会後[8]Q(他の参加者からの質問。私は通訳):スウェーデンでは福島原発事故はどのように報じられ、社会の反応はどうか?A(トンデル氏):スウェーデンでは実は驚くほど報道は少なく、社会の反応も小さい。Q: ドイツとはかなり違う? A: その通り、ドイツと落差がある。

2012-01-29 21:47:18
Masaki Oshikawa (押川 正毅) @MasakiOshikawa

高木学校講演会後[9]Q(他の参加者):スウェーデンでの反応が小さいのは何故?A(トンデル氏):スウェーデンでは以前(TMI事故をきっかけに?)原発廃止論が盛り上がった。ところが、1980年に国民投票で30年後(=2010年)の原発廃止が決まると、熱が冷めて皆が無関心になった。

2012-01-29 21:53:37
Masaki Oshikawa (押川 正毅) @MasakiOshikawa

高木学校講演会後[10](感想:これは初耳で非常に興味深い話だった。ちなみに、2010年の原発廃止が1980年の国民投票で決まったはずだったが実際にはその話は反故になってしまい、2010年にスウェーデン国会は、2011年以降既存の原発の置き換えを認める法案を可決。)

2012-01-29 21:58:29
Masaki Oshikawa (押川 正毅) @MasakiOshikawa

高木学校講演会後[11](感想続き:この経緯は、Wikipedia英語版記事 http://t.co/KVmJh5vU に記述が。なお、同記事には福島事故後のスウェーデンでの世論調査では原発新設への反対が多数になったとの話もあり。トンデル氏の専門では無い話だが、興味深かった。)

2012-01-29 22:05:30
Masaki Oshikawa (押川 正毅) @MasakiOshikawa

高木学校講演会後[12]なお、トンデル氏、ワリンデル氏とも講演会中も講演会後も「反原発」的な主張は(私の聞いた範囲では)全くなかった。あくまで科学的に研究しているという態度。 http://t.co/2odJHU7H のような発言の際は皮肉っている感も若干無くもなかったが。

2012-01-29 22:17:08
Masaki Oshikawa (押川 正毅) @MasakiOshikawa

高木学校講演会後[13]トンデル氏とは雑談も色々したが、一つだけ書くとスウェーデンの冬の観光名所 http://t.co/N7DQA4nz を教えてくれた。あと、スウェーデンからお土産にグロッグ http://t.co/J2giCPHL を持ってきて皆に振舞ってくれた(親切)。

2012-01-29 22:39:58
Masaki Oshikawa (押川 正毅) @MasakiOshikawa

高木学校講演会後[14]トンデル氏はお子さん達(日本の漫画・アニメ好き)から色々リクエストがあったとのことで、土産を買う場所を探していた。帰宅後に案内をメールで送って恩を売っておいた(笑)ので、後日また質問させてもらおう:-)

2012-01-29 22:59:42
Masaki Oshikawa (押川 正毅) @MasakiOshikawa

高木学校講演会後[15]高木久仁子さん、崎山比早子さん、今中哲二さんにもご挨拶させて頂いた。(私はトンデル氏の通訳もして、あまりお話できず残念だったが。)崎山さんは実は9月のシンポ http://t.co/LKV1o6jK の会場にいらっしゃったそうで、私の話を褒めて頂いた(嬉)

2012-01-29 23:11:12
Masaki Oshikawa (押川 正毅) @MasakiOshikawa

高木学校講演会後[16]講演会とその後の報告はとりあえず以上ですが、なにぶん記憶に頼って書いているので誤りがあるかもしれません。お気づきの点は是非ご指摘下さい。講演については、後で録画が公開されると聞いています。

2012-01-29 23:19:56

     ☆   ☆   ☆

Masaki Oshikawa (押川 正毅) @MasakiOshikawa

高木学校講演会感想[1]ここからは私の(特にトンデル氏についての)全般的感想。既に http://t.co/h36RiS0I にもあるように、トンデル氏は相当科学者として慎重な方であると再確認。論文でも慎重に科学的検討が重ねられており、この点で意外性は無いが。

2012-01-29 23:26:13
Masaki Oshikawa (押川 正毅) @MasakiOshikawa

高木学校講演会感想[2]それだけに、私としては放射能問題に関する「科学の限界」を改めて感じた。氏も言うように被害がより大きいはずのチェルノブイリ周辺でのデータは不十分で、科学的に結論を得るのは困難。また、トンデル氏らの研究が正しいとしても、福島事故について何が言えるか?は難しい。

2012-01-29 23:31:21
Masaki Oshikawa (押川 正毅) @MasakiOshikawa

高木学校講演会感想[3]調査体制が非常に整っているスウェーデンですら、内部被曝の影響についての科学的研究はこれから。結論が出るのは何年先になるのかわからない。仮に一定の結論が出ても、スウェーデンのトンデル氏らの研究のみでは、結論を確定できるわけでもない。

2012-01-29 23:34:19
ありす @alicewonder113

@MasakiOshikawa 「調査体制が非常に整っている」といっても、トンデルさんは前の教授に研究を差し止められて、別の職場に移って研究を続けているのだそうです。誰が携わっているか聞いたら「2人だ」と言って笑ってました。

2012-01-29 23:47:21
Masaki Oshikawa (押川 正毅) @MasakiOshikawa

高木学校講演会感想[4]以前も書いた http://t.co/UP7RvFgf が、普通の科学研究ならば、類似の研究がいくつも出てきて段々結論に収束してくる。しかし、チェルノブイリについてトンデル氏らと同様の手法で同程度のクオリティの研究は今のところ他に一つも無いだろう。

2012-01-29 23:38:39
Masaki Oshikawa (押川 正毅) @MasakiOshikawa

高木学校講演会感想[5]しかし、チェルノブイリは25年前の事故であり、これからトンデル氏らのものに比肩しうる研究が出てくるのは絶望的である。(福島事故についてはトンデル氏らのレベルを超える科学研究は原理的には可能だろうが、研究体制の現状を見るとあまり期待できないような…)

2012-01-29 23:42:54
Masaki Oshikawa (押川 正毅) @MasakiOshikawa

高木学校講演会感想[6]仮にトンデル論文の結果が正しいとしても福島事故では状況の違いは多く、そのまま適用できるものではない、のは確か。しかし一方で、主に広島原爆の追跡調査等に立脚したICRPリスクモデルが適用できるのか?についても同様に疑問あるいは不確定性は大きい。

2012-01-29 23:48:16
Masaki Oshikawa (押川 正毅) @MasakiOshikawa

高木学校講演会感想[7]このように、科学的には一言で言えば「よくわからない」状況で、日本は事故による放射能汚染という現実を付きつけられている。それからすると、トンデル氏の研究も、のんびりと言うか迂遠にも見える。もちろん、トンデル氏を責めているわけではなく、科学の限界なのだろう。

2012-01-29 23:53:33
Masaki Oshikawa (押川 正毅) @MasakiOshikawa

高木学校講演会感想[8]というわけで、放射能汚染のリスク評価には、狭義の科学的方法の優位性は高くない。狭義の科学に限定せず、ジャーナリズムや歴史学的な方法による知見も活用するべき、という私が9月のシンポ http://t.co/NPLP1BJm で主張した考えが改めて強まった。

2012-01-30 00:00:14