シージ・トゥ・ザ・スリーピング・ビューティー #5

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「貴方のモーターサイクル。ちょっと無茶させちゃったね」ナンシーは詫びた。「うまいこと業者に回収させるから」「それはともかく、無事でなによりだ。ナンシー=サン」ニンジャスレイヤーは頷いた。「ミッションは成功……」彼は俯き加減に、深々とチャドー呼吸を行う。 43

2012-02-19 22:34:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「顛末の擦り合わせをするにはいい時間かもね」助手席のナンシーはチャを飲み、言った。「大観覧車でも眺めながら」然り。日没から日の出まで、常にネオンでライトアップされたカスガ大観覧車が遠方に美しい。「……コトダマ空間に自我の一部を捨ててきたと言ったな。ナンシー=サン」「そうね」 44

2012-02-19 22:40:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「平気なのか」ニンジャスレイヤーは言った。理解を超えた事象を前に、彼には他に表現のしようが無い。ナンシーは頷く。「多分。端的に言うと、あちら側で背負った荷物を、あちら側に残してきた、とでも言えばいいかしら。それで戻ってこられた。あちら側での私の力、技術、記憶」「……」 45

2012-02-19 23:04:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「その行いの詳細は覚えて無いの。ただ『あちら側に捨てた私』にも自我があって、野放しになっている。それはもはや私とは言えない別の何かで、いずれケリをつけるべき時が来る筈。放っておくわけにはいかないと思う。倫理的にもね……ネットワークはドリームランド埋立地じゃ無いと思うし」46

2012-02-19 23:29:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「いずれまた、再びコトダマ空間へエントリーする術(すべ)を、か」「そう」ナンシーは頷いた。ニンジャスレイヤーはおもむろに、懐からひとつの銀の鍵を取り出した。「記憶も置いてきたとなれば、やはりわからぬかも知れんが……」ニンジャスレイヤーは言った。「これは何だ?」「鍵?」 47

2012-02-19 23:36:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「マルノウチ・スゴイタカイビルの地下深くで、コトダマ空間に触れ、 戻らなかった者がいる。その者は私を助けようとしたのだ。かわりにこの鍵が残った。その者の名と同じだ。シルバーキーという」「……」ナンシーは鍵を受け取り、観察した。「なにかの情報端末という事は無いかしら」48

2012-02-19 23:43:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「フロッピーやサイバネカートリッジのような?」ナンシーは頷く「可能性の話になってしまうけど。鍵という意匠も、そうなると示唆的じゃない?……ごめんなさい、『あっちの世界』にいた時の私なら、ハッキリと答えられたのかしらね……」「いや」ニンジャスレイヤーは言った「説得力はある」 49

2012-02-19 23:54:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーはナンシーを見る。「コトダマ空間とは、実際何なのだ?」「……」「ある者は可視化されたネットワークだと言う。長じたハッカーが触れる空間であると」「……そうね」「だが、腑に落ちぬ」「……そうね」ナンシーは再び頷いた。 50

2012-02-20 00:21:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「『21世紀初頭に確立されたものの、電子戦争以後、その詳細が失われてオーパーツ化した巨大なテクノロジー』……と、説明がつけられては、いる」ナンシーは言った。「でも、その説の具体的な根拠を探そうとする者はいない。探さぬまま、恩恵を受けてきた」「……」 51

2012-02-20 00:31:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「コトダマ空間の正体を知る事が、私や貴方の今後に深く関わってくると、私は思う」ナンシーはゆっくり言った。「多分ね」「異論無い」ニンジャスレイヤーは言った。彼はマルノウチ・スゴイタカイビル地下でコトダマ空間を通じ、ナラク・ニンジャの一端に触れた。だが謎は十倍も増えた。 52

2012-02-20 00:51:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナラク・ニンジャ、シルバーキー、ナンシー・リーのネットワーク自我、神器……それらを通して、「いずれわかる時が来るだろうか? 」ニンジャスレイヤーは呟いた。漠然とした問いであった。ナンシーは肩をすくめた。「ええ、いずれ。……きっと。願わくは」 53

2012-02-20 01:11:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『目的地であるネオカブキチョ、ニチョーム。だいぶ近いです』ネズミハヤイのUNIXが、ふと黙った車内に告げた。「長旅お疲れのところ悪いが、もう一仕事」奥ゆかしく沈黙を保っていたデッドムーンが言葉を継いだ。「あちらさんには既に連絡を入れた。ネゴシエーションが要るかもな……」 54

2012-02-20 01:18:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「私達みんなの寝床の瀬戸際ってわけね」とナンシー。「わかってらっしゃる……」デッドムーンは頷いた。「オヌシには何があったのだ」ニンジャスレイヤーは問うた。デッドムーンは首を振り、「何も無いっちゃ、無い。ガレージに爆弾が仕掛けられていたんで、レディの中で取り急ぎ寝たのさ」 55

2012-02-20 01:25:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「爆弾?それでオフラインに?……ネズミハヤイには傷ひとつ無しか?」「比喩の次元ならな」デッドムーンは言った。「これでもレディはボロボロなんだぜ。早いとこ新しいガレージを見つけて、たんと愛してやらなきゃいけない。俺は俺で必死だぜ……ん?見ろ、あちらからお出迎えだ」 56

2012-02-20 01:29:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

デッドムーンは速度を落とし、窓から身を乗り出した。「ネオカブキチョニチョーム」、ゲート看板のいかめしいフォントはどぎついネオンで彩られ、その傍に番人めいて二人の人影がある。一人は2メートルのボンズヘアー大男、もう一人は黒髪の少女だ。「お迎えドーモ」デッドムーンが呼ばわった。 57

2012-02-20 01:35:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(第二部「キョート殺伐都市」より:「シージ・トゥ・ザ・スリーピング・ビューティー」 #5 終わり。 #6へ続く

2012-02-20 01:38:17