ICRPのロシャール氏から学んだこと

■2012年2月25-26日、福島県伊達市で開催されたICRPダイアログミーティングに参加した。その前後に偶然ジャック・ロシャール氏と雑談的な対話をする機会があった。そこで聞いたことや学んだことのメモ。 ■ジャック・ロシャール氏はICRP Publ.111(2009年)の編著を行った委員会の委員長。 http://www.jrias.or.jp/index.cfm/6,15092,76,html 関連資料: 続きを読む
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MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

ロシャールさんと話していて、途中から外国語を聞いているという感覚がなくなるのが不思議である。チェルノブイリでのECによるETHOSプロジェクトの経験。おそらく、それが人間の、まぎれもなく普通の人間の言葉だから、問題を解決しようとする普通の科学者、研究者の言葉だから、なのかと思う。

2012-02-29 11:12:06
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

ベラルーシの人達は食べること、飲むこと、話すことが大好きだ。ETHOSプロジェクトの初め、どこにするか探した。話しを聞いた。都会でもそれ以外でも。ある時、ある村で話を聞くと、入れ入れと招き入れられ、食事をふるまってくれた。だからそこでやることにした(笑)。それがオルマニー村。

2012-02-29 20:32:43
さかな家おかみ@矢祭町 @okami_sakanaya

そうなんですってね。福島県視察団で足を運ばれた先生も、同じことをおっしゃっていました。「海藻類は、チェルノブイリ事故以降食べるようになったけど、飽きたらしくて今はあまり食べてないそう」とw“@y_mizuno: ベラルーシの人達は食べること、飲むこと、話すことが大好きだ。”

2012-02-29 11:28:58
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

日本でお茶を出すようなもの。ベラルーシの村ではそれが食事。だからロシャールさん達は1日に五回も六回も食事をすることになった(笑)。その食事の写真がたくさん記録されている。フランスの食べながら飲みながらという文化とも合ったのかも知れない。そういう交流のなかで話しを聞く。

2012-02-29 11:31:16
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

最初のミッション訪問は1996年6月のこと。色々な人から話を聞き、こう助言した。三ヶ月に一度来るので、次回までに食材を記録をと。しかし9月は多忙で10月になった。来て聞いた。誰か記録は?一人だけいた。だが9月の途中まで。なぜ?と聞いた。待っていたが来なかったから。

2012-02-29 11:50:48
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

チェルノから十年。国家崩壊に向かい、情報ゼロ、流通生産管理なし。日本ではない。1991年12月国家崩壊。経済は極端に悪化。その間、村に来た研究者達は質問をし、写真を撮り、帰っていく。また来ると言うが二度と来ない。私達はモルモットか。それと同じだと思った。

2012-02-29 12:05:28
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

だからロシャールさん達は学ぶ。村人は、ある人達は危険だと言い、別の人達は大丈夫と言う。私達は何を信じていいか分からない。(勿論PCなど村に一台もない。)村人達にやると言ったことは絶対にやるべしと。そこで村に家を借りることにした。3年契約。

2012-02-29 12:53:03
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

ある家で話を聞き、測ると子供が高い。乳牛は隣人と同じ牧草地。たがよく聞くと、実は別に干し草も毎朝。あは〜それかも!と測定、原因判明。市役所は統計を取るがそれ以上しない。だがそうやって下げられる。住民が自ら取り組む。under controleと何度も指摘するロシャールさん。

2012-02-29 18:38:18
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

ETHOSプロジェクト当初は1996年、チェルノ後10年、都会は除染済み。だがオルマリー村のようなところは放置されていたようだ。その頃、まだ経済状態が悪く、村のレストランで何も出せないと言われたことも。普通の村は1軒平均乳牛2頭、だがオルマリー村の平均は1頭。そんな中での出来事。

2012-02-29 18:50:31
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

ある時、学校の先生の女性が測ってみたいと言う。そこで家の中、庭等を色々測定。室内は非常に低い。ここは大丈夫と理解した。それを家のおばあちゃんが遠巻きに腕組みして見ていた。説明した。そんなはずはない。ひどい事故だという。やっと理解した。「じゃあ息子が帰ってくる」と明るい顔で言った。

2012-02-29 18:57:37
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

数ヶ月後、その女性に出会った。ココアをご馳走したいから家に上がれという。忙しかったロシャールさんは「後で」と言うと、非常に落胆した顔をする。どうしてがっかりしたのと聞くと、あなたに牛乳で作ったココアをご馳走したかった。30Bq/Lになったから。以前は800Bq/Lだったのに。

2012-02-29 19:32:23
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

あと、under controle も誤記で、正しくは under control この間違いは、フランス語流で、フランス語では controleが正解だったりするからややこしい。失礼しました。でもこれは訂正しないでおきます(見れば単純な誤記だと分かるから)。

2012-02-29 20:39:25
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

フランス人の英語を聞きながら、オルマニー村を(うろ覚えで)そういえばホルマニー村だったっけ?と思って聞いていたり、はたまたunder controleとフランス人みたいな綴り間違いになったり(笑)。混乱する(苦笑)。英語にはラテン語起源(フランス語系)の言葉も多いので仕方ない。

2012-02-29 20:50:29
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

勉強になりますw @buvery その話、Pardon my French. で終るのでしょうか。w  @y_mizuno: フランス人の英語を聞きながら、…フランス人みたいな綴り間違いになったり(笑)。

2012-02-29 20:54:20
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

エピソード続き。その女性、学校の先生だったので、ある時、はたと思いついた。牧草が何Bq/kg、移行係数がどれだけ、だったら牛乳は何Bq/Lになる?という問題を子供たちに出そう。小学校の先生で、ちょうど掛け算の学年。それをロシャールさんに伝え、その後、次々に問題作成。それが主体的。

2012-02-29 21:07:28
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

測定が増えると高い場所が分かってくる。でも一概に禁止でなく、例えばここからここはこの程度の空間線量率、ならば通過して遊び場へ行くのに、子供の駆け足で何十秒、するとその間の被曝は何μSvと計算してみる。子供たちに計算させる。それが(外部被曝の)under controlということ。

2012-02-29 21:17:35
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

その学校の先生は子供達を牧草に連れ出して測定、牛乳も測定。さて実際はどうか。大抵その通りにならない。そこから誤差を認識し原因を考えるという段階に進む。実際、移行係数は非常に誤差が大きいことが知られる。単純ではない。しかし移行係数には傾向も工夫の余地もある。これが放射線防護の文化。

2012-02-29 21:30:59
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

ロシャールさんと話していると、このような例が次々に出てくる。20年も苦労されたのだから当然かもしれない。最初に放射線防護の調査目的でチェルノブイリに入ったのは1990年(ETHOSが1996年から)。この話を出版したら?差し向けると、いや~、それは日本のあなた達が創り出すことと。

2012-02-29 21:37:09
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

ある時、その女性はふとこう言った。The thaw has begun.(雪解けが始まった。)この言葉の奥には、長い長い、氷に閉ざされた時間があったに違いない。その氷が解け始めたと、感じられるようになった。それは科学の言葉ではない。しかし人間の実感としての言葉であり、詩である。

2012-02-29 21:50:36
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

新幹線の中でもこの話をしてくれた。"The thaw has begun." 詩としての言葉。だが、ここからは私も分からない。ロシャールさんは、日本人は詩が得意だとおっしゃる、俳句があるだろうと。どうなのか^^; 少なくとも、「一般の人」が語れる言葉が必要であることは確か。

2012-02-29 22:04:29
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

つまり「放射線」はなまじっか専門用語が多かったために、「科学の言葉」しかなかった。α線、β線、γ線。しかし、それは残念ながら人間の言葉ではないだろう(自分でいうのもはばかられるのだが)。日常用語でないことは確か(残念ながら^^)。詩とはそういう意味だ。普通の人間の言葉で語る言葉。

2012-02-29 22:19:10
金沢詩乃 @shinop_k

@y_mizuno その言葉は雪国に住んでいる者の実感として、張り詰めた寒さが緩む安心感とともに雪で隠れていたもの(大体は綺麗なものじゃないです)が露わになる現実の意味を感じました。でも両方に真っ直ぐ向き合い続けることが大事なのだと思います。

2012-02-29 22:19:34
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

勿論「科学」は重要だとロシャールさんも当然ながら言う。科学は解決方法を提案する。だが最初からそれを言っても、人々に届かない。(それは多分最後に出てくる。私は逆転させると感じた。)これを彼はhuman dimensionと呼ぶ。人間の次元。科学の次元と、人間の次元。その両方が必要。

2012-02-29 22:29:05
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

そうですね。何なんでしょうね?  @pp_yan_maru 科学とはなんですか?

2012-02-29 22:34:00
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

そしてロシャールさんは政治哲学者アーレントの言葉を教えてくれた。「科学者が原爆の原理を発見したことは責められない。原爆が政治的に使われたことに科学者が無力であったことも責められない。だが科学者は、人々が語る言葉を作り出してこなかったことは責められる…」これを彼は詩と呼ぶのだろう。

2012-02-29 22:43:23