整備兵氏(@seibihei)による「戦術の基礎(D. Wyly海兵隊大佐)」("Maneuver Warfare Handbook"付録)翻訳・第1課―1

目次:http://togetter.com/li/269377 「敵の弱点に強点を」 態々敵が待ち構えている火力の網に、自分から突っ込むこともあるまい。敵の弱点を探し出すこと。 その為に大事なのは偵察。敵の間隙を、迅速に探しだすのだ。そしてその為に必要なのは、下級部隊の指揮官に上手く権限を使わせてやることだ!(適当) 問題等あれば@bouninngまで御一報ください。
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まとめ 整備兵氏(@seibihei)による「戦術の基礎(D. Wyly海兵隊大佐)」("Maneuver Warfare .. 目次:http://togetter.com/li/269377 こまけぇことはいいんだよ!境界も定形も無い、「どうやって敵を撃破するか」それが戦術だ!(適当) 問題等あれば@bouninngまで御一報ください。 5152 pv 47 4 users 2

名無し整備兵 @seibihei

第1課 表面と間隙(ギャップ) 表面と間隙というのは、今後教えることになる「任務戦術」や「主努力」と同じように、戦術の基本的な概念である。これらの概念は、戦闘の終始を通じて作用することになる。

2012-03-04 23:12:37
名無し整備兵 @seibihei

これはつまり「敵の弱点に我の強みをぶつける」ことである。「表面と間隙」という言い方は、ドイツ語の「Flaechen und Luekentaktik」の訳である。「表面」とは敵の強点であって我が避けるべきところであり、「間隙」とは敵の弱点であって我が前進するところである。

2012-03-04 23:21:33
名無し整備兵 @seibihei

この戦術は「Hutier tactics」と呼ばれることもある。彼が発明したわけではないが、今でも名前に残っている。

2012-03-04 23:23:21
名無し整備兵 @seibihei

リデル・ハートは、「拡大する奔流」戦術と名付けた。彼は攻撃する部隊を水の奔流に例えている。

2012-03-04 23:26:13
名無し整備兵 @seibihei

「連続する土塁やダムに奔流がぶつかることを考えてみよう。まずは全正面に水が当たることになるだろう。そして、いくつかの裂け目を見つける。こうした裂け目から、水の最初の流れが始まる。そして続く流れが裂け目の左右を削り取っていく。」

2012-03-04 23:30:50
名無し整備兵 @seibihei

「同時に、流れる水流は後方へと流れていく。奔流は堅固な障害を後に残し、そのまま流れていく」(この辺りは、リデル・ハートの原文を参照していただきたい。)

2012-03-04 23:34:35
名無し整備兵 @seibihei

「表面と間隙」の考え方を実用に持ち込んだのは、WW1のドイツ軍である。1918年のルーデンドルフの春季攻勢で、ドイツ陸軍はそれまでの戦術を一変させた。ドイツは物量では連合国に勝てないし、米まで参戦した以上、物量ではない何か別の手段を考えないといけない。

2012-03-04 23:39:06
名無し整備兵 @seibihei

物量で勝てないなら、頭で勝たなければならない。そのため、ドイツ軍は戦術の改良に力を注いだ。もちろん、ドイツは戦争には勝てなかった。包囲され、女子供は後方で飢えに苦しんでいた。勝つのにはもう遅すぎた。しかし、この春季攻勢で、連合国は深刻な打撃を受けることになったのだった。

2012-03-04 23:42:43
名無し整備兵 @seibihei

戦術的には、ドイツ軍は彼らの強みを、敵の弱点にぶつけた。「間隙」を探したのだ。「突撃隊」と呼ばれる小部隊が敵の前線の弱点を探り、軽機関銃や火炎放射器、手榴弾を活用してその間隙から突撃した。一方、重機関銃や迫撃砲等は敵の拠点を制圧するのに使用された。

2012-03-04 23:50:18
名無し整備兵 @seibihei

戦略的には、1918年の春季攻勢は失敗した。ルーデンドルフが、「強点に対して強点を」ぶつけたからだ。敵よりも早く予備隊を使い尽くしてしまった。

2012-03-04 23:52:39
名無し整備兵 @seibihei

「表面と間隙」というのはWW1時代の古い用語である。現在と比べると、線的な戦術に聞こえる。しかし、線的なイメージにとらわれることなく、「表面」を「強点」、「間隙」を「弱点」と読み替えれば、まだ有効な考え方である。

2012-03-04 23:55:40
名無し整備兵 @seibihei

「敵の弱点に強点を」というのは、当然1918年よりも前から考えられていたことだった。クラウゼヴィッツは、「戦争論」第9章と10章でそれについて書いている。

2012-03-05 00:00:07
名無し整備兵 @seibihei

「攻撃者側には、防御者側のこの利点に匹敵するだけの手段がないのである。しかし、実際の防御陣地は必ずしもそれだけの力を備えているとは限らない。防御陣地を攻撃しなくとも目的を追求できることが明らかであれば、防御陣地への攻撃は誤りであろう。」

2012-03-05 00:02:38
名無し整備兵 @seibihei

「ただひとえに理性のみならず、何百何千の経験に照らしてみても、正しく配備され、十分に準備され、堅固に守られた堡塁は原則として奪取不可能な地点と見なさるべきであり、攻撃者もまたそのように見なしていることは明らかなことなのである。」

2012-03-05 00:07:10
名無し整備兵 @seibihei

「個々の堡塁のこのような効果から考えれば、疑いもなく、設堡野営の攻撃は攻撃者にとって非常に困難な課題であり、多くの場合不可能な課題でさえあるといってよいだろう。」

2012-03-05 00:10:20
名無し整備兵 @seibihei

「設堡野営には、その性質上、衛戌兵の数は不十分でいい。しかし、地形が防御に適し、堡塁が堅固であれば、敵兵力がどれほど優勢であってもこのような寡兵を以てこれを防ぐことは十分できる。」

2012-03-05 00:11:20
名無し整備兵 @seibihei

この「表面と間隙」の考え方を使うことで、今までの動きの鈍い「強点には強点」という戦術に対して有利に戦える。間隙から攻撃し、強点を避けることで、戦力も節用できる。もし強点に強点をぶつけるのであれば、我は弾薬や補給品と同様人命も浪費することになるだろう

2012-03-05 00:20:26
名無し整備兵 @seibihei

我々は兵隊を使い潰す前に目標を奪取しなければならない。敵を後ろに残置するのだ。我々の動きが早ければ、迅速な戦果拡張の恩恵を受けることができる。

2012-03-05 00:26:02
名無し整備兵 @seibihei

間隙を見つけることに戻ろう。我々は間隙を探し出すこともあるし、作り出すこともあるだろう。もちろん、既にある間隙を探し出す方が容易だし、死傷者も少なくて済む。

2012-03-05 00:29:09
名無し整備兵 @seibihei

これは簡単な例で説明できるだろう。ベルリンからパリに行く任務を与えられたとする。敵の防御線があるとして、その防御線の弱点が分かったとしたら…当然そこを攻撃するだろう。これは古臭いし線的な戦場ではあるが、しかしとっかかりはこんなものだろう。

2012-03-05 00:32:17
名無し整備兵 @seibihei

もっと近代的な例は、そのうち出すことになるだろう。とにかく、「パリに行く」ためなら、敵の間隙を探せばいい。しかし、どのようにして探し出せばいいのか?それにはいくつかの方法がある。

2012-03-05 00:33:51
名無し整備兵 @seibihei

まずは、偵察隊の遮掩である。これは「上級部隊主導」ではなく、「偵察主導」の戦い方だ。偵察隊は主力の前方に展開し、敵の間隙を探すことになる。これは「威力偵察」とか「偵察大隊の運用」を語っているのではない。間隙を探す偵察は、専門部隊がやるものではない。

2012-03-05 00:37:48