ビガー・ケージズ、ロンガー・チェインズ #1

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
4
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「諸君らの意志が岩をも穿ち、やがて退廃堕落の源たる暗黒メガコーポ群を必ずや突き崩す。その時諸君らのシュプレヒコールは瓦解した搾取存在の虚しき殿堂の灰燼に芽吹いた若葉を美しく育てしめる希望象徴として真の進歩への足がかりとなりましょう!」万雷の如き拍手! 25

2012-03-12 15:33:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

袖に立ち、満足げに様子を伺っていた女性闘士は、アンサラーと視線を交わし、裏口から退出した。縛った黒髪と顔とをスカーフで覆い、常に戦闘可能な状態であるべく、その背中には彼女の得物である大弓を負う。豊満な胸に斜めに掛けたベルトには鋭利なダガーナイフが複数本収まる。 26

2012-03-12 15:43:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼女こそがアムニジア、喪失した記憶に革命思想を遺憾なく染み込ませた純粋闘争戦士、弓のタツジン、バスター・テツオの懐刀、そして……かつてドラゴン・ゲンドーソーのもと、ニンジャスレイヤーと同じチャを飲んだドラゴン・ニンジャ・クランの最後の血筋に他ならない! 27

2012-03-12 15:48:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アムニジアはLEDボンボリが明滅する狭い廊下をツカツカと歩み進む。この通路は通常の同志が使用する事は無い。彼らはこの手の区域の存在すら知らぬだろう。すべての構成員を同志と規定するイッキ・ウチコワシであるが、その実、こうした仕掛けは抜かりなく用意されているのだ。 28

2012-03-12 15:55:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

だが、彼女の前進は停止する……全方の闇の中から現れた存在があったからだ。この場所にいていい同志は限られている。そしてその存在は同志ではない!問答無用!アムニジアは瞬時に大弓を構え、矢を放つ!「キエーッ!」「イヤーッ!」……だが!その者は矢を止めた!赤黒のニンジャは! 29

2012-03-12 16:01:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

赤黒のニンジャは、飛来する矢の箆を、稲妻めいた手さばきでもって掴み取り、止めたのだ!そしてニンジャは流麗にオジギした……「ドーモ。アムニジア=サン。ニンジャスレイヤーです」 30

2012-03-12 16:05:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「どこから入った!」アムニジアは間髪いれずに第二矢を弾き絞る「組織を裏切り、同志フリックショットの命を奪った卑劣漢!よくぞおめおめと姿をさらし……」ニンジャスレイヤーは臆する事なく近づく。「アムニジア=サン。話があって参上した」その目に苦悩の影がよぎる「争いは後で幾らでも」 31

2012-03-12 16:09:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「キエーッ!」問答無用!アムニジアは矢を放つ。ニンジャスレイヤーがこれを再び掴み取ってかわすと、ベルトからダガーナイフを抜き放ち、二刀流となって襲いかかった。「キエーッ!」斜めに飛び、壁を蹴って、空中から攻撃だ! 32

2012-03-12 16:12:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは同時に襲いかかった二刀流ダガーナイフを両腕のブレーサーで弾き飛ばす!「キエーッ!」アムニジアはさらに空中で回転、回し蹴りだ!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは素早くこれを防御!彼女の脚を抱えるようにして、背中から壁に押しつけた!「ンアーッ!」33

2012-03-12 16:17:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「離せ……離せ無礼者!」アムニジアは首を振って暴れた。「辱めになど屈さぬぞ!私は自由闘士!決断的訓練を経て内的矛盾を滅し、精鋭化した革命戦士だ!」ニンジャスレイヤーは押さえつける!アムニジアはその腕を力一杯に噛んだ。「ヌウッ……!」ニンジャスレイヤーは呻いた。だが離さぬ! 34

2012-03-12 16:21:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「頼む……話を聞いてほしい。アムニジア=サン」ニンジャスレイヤーは……おお、読者諸氏よ、おわかりだろうか?あのニンジャスレイヤーが……地獄の殺戮者が今、目を伏せ、請うているのである。ユカノの名を呼ぶ事すらせず、己を殺し、請うているのだ! 35

2012-03-12 16:25:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「オヌシは狙われている!ザイバツ・シャドーギルドに!」「ザイバツだと!」アムニジアは睨み、もがいた。「イッキ・ウチコワシと、かの抑圧的反動組織との闘争は、貴様にわざわざ教えられるまでもなく自明だ!そんなくだらぬ話をしに参ったか!離せッ!」 36

2012-03-12 16:28:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イッキ・ウチコワシではない。オヌシだ。オヌシの身が危ないのだ。オヌシだ!」ニンジャスレイヤーは必死に言った。「過去の……ユカノとしてのオヌシを……ギルドが狙っているのだ!アムニジア=サン!」アムニジアは目を見開いた。「……離せ!」「……!」ニンジャスレイヤーは力を緩めた。 37

2012-03-12 16:33:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは一歩下がった。アムニジアは壁に寄りかかるように立ったが、更になお襲いかかる様子は無かった。彼女は荒い息を吐きながらニンジャスレイヤーを睨んだ。「……過去の私だと?」「そうだ。ユカノとしてのオヌシを」とニンジャスレイヤー。「ザイバツが」「……」 38

2012-03-12 16:42:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「それが本当だったとして」アムニジアは言った。「貴様には関係の無い話だ。百歩譲って、警告は受け止めておくとしてもだ……」ニンジャスレイヤーは沈黙した。そして重々しく頷いた。「……それでもよい」「アムニジア=サンか?」アムニジアの来た方角から声が飛んできた。「誰かいるのか」 39

2012-03-12 16:51:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「行け」アムニジアは言った。「私の気が変わって、貴様の背中を射抜く前に」「アムニジア=サン?」ニンジャスレイヤーはその声に聴き覚えがあった。アンサラー。「……」ニンジャスレイヤーは身を翻し、元来た方向へしめやかに走り去った。 40

2012-03-12 16:53:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……『まずは上出来ってところ』通信のナンシーが淡々と言った。人気の無い路地裏に身を潜め、通信機に耳をつけるニンジャスレイヤーの目は、苦悩と罪悪感に曇っていた。「ああ。……ああ、上手く行った」彼はさっきの争いの最中、彼女が決して手離さぬ弓に、微細な発信機を仕込んで来たのだ。 41

2012-03-12 17:03:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『しっかりしなさいよ』とナンシー。『貴方は最善の手を打てている。手段が不本意でも、ユカノ=サンを護る事が、まずは最重要の目的、そうでしょ……あのままアジトで暴れたとして、誰の得にもなりはしない』「……大丈夫だ。その通りだ」彼は強いて言った。 42

2012-03-12 17:09:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『来た、来た……位置情報、しっかり受信できてる』とナンシー。『ディープスロートから詳しい襲撃日時の示唆は無かったけど、そう先の話じゃない筈。彼女に何かあっても、これで把握できる。ここからが退屈かもね……貴方はアジト近くに潜伏して、警戒し続けないといけない』「無論だ」 43

2012-03-12 17:17:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『今更になって随分と献身的ですこと』ナンシーは皮肉めかして言った。「今更だからこそだ」ニンジャスレイヤーは答えた。「この状況を作り出したのは、私の弱さだ。センセイに託されたというのに、こんな事態を招いた」『……ま、いろんな考え方があるものよ』 44

2012-03-12 17:34:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

自治体そのものが冷徹に要塞化され、浮遊飛行する防衛システムや対空砲の数々に護られる、黒く巨大なビルディング……これこそが、ネオサイタマを睥睨する暗黒メガコーポ、オムラ・インダストリ本社社屋!その108階……社長室! 46

2012-03-12 18:10:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「よォシ!」UNIXモニタに向かって意気揚々と叫んだのは、宇宙服めいた無骨な白いパワードスーツに全身を包んだ男……モーティマー・オムラ、47歳!オムラ・インダストリの代表取締役社長その人である!47

2012-03-12 18:13:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼が歓喜の叫びを上げたのは、UNIXで中継監視していた重点テストの結果を受けての事だ。すなわち、驚異的武装システム「モーターツヨシ」のプロトタイプが、遂に実践投入可能な状態となったのである。「これでモーター理念は次のステージに進むぞ!決算時に色々やらないでも黒字になるぞ!」48

2012-03-12 18:25:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

手を叩いて喜ぶ彼は先ほど述べた通り47歳。そして社長だ。当然ながら立派な大人であり、そして社長だ。身体はフットボール選手並みにがっしりと大きく、パワードスーツはそれを覆ってなお無骨。だが、その頬は興奮に赤く上気し、小さな目を輝かせるさまは、どこか奇妙で危うげであった。 49

2012-03-12 18:33:05