【物語のみ】誘拐犯「お前の子は預かった。返して欲しければ3億円用意しろ」親「あんなのいらないからあんたにやるよ！」

不二式 @Fujishiki

達夫は言った。「児童相談所に相談すれば、虐待問題に対応してもらえるはずだ。お前は嫌かもしれないが、施設に入れば確実に虐待から逃れつつ、学校にも行ける。」「捨てないで！」京は達夫の湯をかける手を両手で強くつかんで達夫をまっすぐ見て言った。 #twnovel #誘拐犯物語

不二式 @Fujishiki

「捨てないで…」京の目には涙があふれていた。達夫は空いている手で頭をかいて困り顔で言った。「…本気か？俺は誘拐犯だぜ？」「それでもいい…」京は言った。「家に帰るのは嫌…知らないところに入れられるのも嫌…」京は泣いていた。 #twnovel #誘拐犯物語

不二式 @Fujishiki

涙が頬を伝って風呂にぽつぽつと落ちる。達夫は困り顔で言った。「家も施設も嫌か。親戚の家には入れないのか？」京は鼻をすすり、涙を拭って言った。 #twnovel #誘拐犯物語

不二式 @Fujishiki

「…前に心当たりのあるところに行ったことがあります。泊めてくれたのは1日だけで、その人はおばさんに話はしたけど、すぐに家に帰されました。…私を引き取る余裕はないって。おばさんからはさらにきつくお仕置きされるようになりました」 #twnovel #誘拐犯物語

不二式 @Fujishiki

達夫は眉根を寄せて言った。「ひどい話だ。せめて児童施設に隔離でもすればよかったのに」京は手を離し、またうつむいて言った。「正直、おつかいの途中であなたに声をかけられた時、私期待しちゃったんです。」 #twnovel #誘拐犯物語

不二式 @Fujishiki

「ひょっとしたら今の現実から連れ出してくれるんじゃないかって。いつだってそうです。いつだってそうやって人に期待しちゃって、でも決してそんなことはなくて…。バカみたいですよね。叶うわけない夢を期待して、勝手に裏切られてる…」 #twnovel #誘拐犯物語

不二式 @Fujishiki

達夫は京の手を握って言った。「裏切らない」達夫は京の手を強く握って、まっすぐ京の目を見つめて言った。「俺は裏切らない。今度こそ、信じていい」京は達夫の目を見つめていたが、しばらくすると目を逸らしてうつむいて言った。「そうだと、いいですね」 #twnovel #誘拐犯物語

不二式 @Fujishiki

達夫は思った。（人を信じたいけど、信じられなくなってしまったんだな。かわいそうに…）達夫は眉根を寄せて京を見つめていたが、手を離し京の肩に湯をかけた。「…そうだな、そろそろ湯も少し冷めてきたし、体を洗うか。それとももう少し風呂に入っているか？」 #twnovel #誘拐犯物語

不二式 @Fujishiki

京はうつむいて言った。「いえ、お風呂はもういいです。…あんまりお風呂にいい思い出がないので…」「そうか…」達夫は京の過去を察して苦々しい顔をして言った。達夫は浴槽の栓を抜き、湯を流しながらシャンプーで京の髪を洗った。「かゆいところあるか？」 #twnovel #誘拐犯物語

不二式 @Fujishiki

京は目を瞑って言った。「そこらへんです。すごく気持ちいいです」達夫は安堵して言った。「そうかなら良かった」達夫はシャンプーが泡立たないまま髪を一度泡でこすった後、温かいシャワーで流し、もう一度シャンプーで洗ってやり、リンスで仕上げた #twnovel #誘拐犯物語

不二式 @Fujishiki

達夫は大きなスポンジに水を含ませ石鹸を密着させて泡立て、京の背中をこすってやった。京は目を瞑っていた。腕も洗ってやろうとした時、京はその手を掴んで顔を赤くして言った。「ま…前は自分で洗えますから！」「そ、そうだよな」達夫は頭をかいた #twnovel #誘拐犯物語

不二式 @Fujishiki

京はスポンジで体をこすり始めた。達夫は聞いた。「もう一人で全部できるか？」京はちょっと見つめてから目を逸らして頷いた。「シャワーのボタンはこれだからな。何かあったら言えよ？あと、足を洗う時は片方ずつ洗え。滑るからな」達夫は浴室を出た。 #twnovel #誘拐犯物語

不二式 @Fujishiki

達夫はバスタオルと着替えを用意しようとして困った。子供の服なんてなかった。仕方なく自分の服を探したが、あいにく綺麗なものは男物のYシャツくらいしかなかった。（かわいそうだが上に着る物以外は脱いだものをもう一度身に付けてもらうしかないな。） #twnovel #誘拐犯物語

不二式 @Fujishiki

達夫は浴室まで聞こえるくらいの声で言った。「入るぞー」浴室のドアを開ける達夫。浴槽の中に入ったカーテンの中に京のシルエットがあった。カゴの中に着替えとバスタオルを置き、床にもバスタオルを敷く。 #twnovel #誘拐犯物語

不二式 @Fujishiki

達夫は言った。「着替えとバスタオルを用意した。体を良く拭いて着替えろよ。特に頭はしっかり拭いておけ。後でドライヤーで乾かすけど」「はい」京はすぐに答えた。達夫は浴室から出て、明日の仕事や寝間着の準備を始めた。 #twnovel #誘拐犯物語

不二式 @Fujishiki

（スーツOK。YシャツOK。下着OK。部屋着OK。鞄の中身もOK…よし）達夫は次に京の分の歯ブラシを探した。（確か以前出張先のビジネスホテルでもらった奴が…あった、これだ。子供には大きいし硬いけど仕方ない。力を入れずに磨くように言おう） #twnovel #誘拐犯物語

不二式 @Fujishiki

浴室からダボダボのYシャツと半ズボンを着て上気した顔で京が出てきた。Yシャツが少し透けて、体のラインと乳首が透けている。達夫はごくりと息を呑んだ。（…いや、５歳の女の子だっての）達夫は言った。「よし、髪を乾かそう」京はこくりと頷いた。 #twnovel #誘拐犯物語

不二式 @Fujishiki

ドライヤーをコンセントに挿し、電源を入れ、京の髪を乾かす達夫。京はおとなしくしていた。達夫は微笑み言った。「京の髪、さらさらだな。今までちゃんと洗えてなかったのがもったいないくらいだ」京は頬をさらに赤くして言った。「そうですかね…」 #twnovel #誘拐犯物語

不二式 @Fujishiki

髪が乾き切ると達夫は京の髪をくしで丁寧にといた。達夫は言った。「なかなか洗ってなかったらしい割には引っかかりが少ない。いい髪質だな。将来美人さんになるぞ」京は顔を赤くした。 #twnovel #誘拐犯物語

不二式 @Fujishiki

達夫は冷蔵庫を開け、オレンジジュースを出し、コップに注いで京に渡した。達夫は聞いた。「風呂上がりにいいだろ？それともオレンジジュース嫌いか？」「いいえ、大好きです」京はそう言うと、オレンジジュースをちびちびと飲み始めた。 #twnovel #誘拐犯物語

不二式 @Fujishiki

達夫は言った。「歯磨きしたらその布団使って寝てていいぞ。あと歯ブラシとコップはこれを使ってくれ。あまり柔らかいヤツじゃないから、弱い力で磨けよ。歯磨き粉も使っていいからな」京は戸惑って言った。「達夫さんはどこで寝るんですか？」 #twnovel #誘拐犯物語

不二式 @Fujishiki

達夫は言った。「バスタオルの上で寝るよ。大丈夫、服さえちゃんと着てれば風邪は引かないさ。大人は丈夫だからな。じゃあシャワー浴びてくる。…おっとそうだ、寝る前にはちゃんとトイレ行っておけよ」 #twnovel #誘拐犯物語

不二式 @Fujishiki

達夫は浴室に入ると時間もないので手早く歯磨きし体と髪を洗い流し、寝間着に着替えた。浴室を出るともう京は布団の中に潜り込み寝ていた。布団をめくるとうずくまって寝ている京が見えた。 #twnovel #誘拐犯物語

不二式 @Fujishiki

安らかな顔で眠る京に達夫は微笑み、バスタオルの上で寝転び、今まであったことを思い出していた。 #twnovel #誘拐犯物語

不二式 @Fujishiki

達夫にはずっと苦楽を共にしてきた大切な弟がいた。名前は河野 勇気（カワノ ユウキ）という。父親が家庭をかえりみなかったり、母親が出ていったりした中で、弟の勇気だけは達夫を裏切らなかった。達夫はいつも兄を気遣ってくれる勇気を大切に思っていた。 #twnovel #誘拐犯物語