『怪奇・幻想・綺想文学集 種村季弘翻訳集成』(国書刊行会)おぼえがき

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26)ヤーンの特徴として、種村先生は「近親姦、黒人との同性愛、動物(馬)への偏愛、瀆神」(『十三の無気味な物語』解説)をあげているが、本書収録の二作品には性的に放埒な要素はほとんど見られず、動物愛が前面に出たものになっている。 #怪奇幻想綺想文学集

2012-03-10 03:48:21
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27)「ブロンネンやブレヒトとならんで〈黒い表現主義〉とも評された」(岩村行雄「ヤーン」、『世界文学大事典』集英社)ヤーンの代表作は『岸辺なき流れ』三部作だが、邦訳は第一部の『木造船』(沼崎雅行訳、現代思潮社、1969年)のみ。 #怪奇幻想綺想文学集

2012-03-10 03:49:26
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28)種村訳の短編集『十三の無気味な物語』(白水uブックス)は、『岸辺なき流れ』三部作中のエピソードを「ほぼ元型のまま採録」(解説)したもので、「《ハンス・ヘニー・ヤーン入門》というにふさわしい作品集といえよう」(同)。 #怪奇幻想綺想文学集

2012-03-10 03:49:39
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29)ハイミート・フォン・ドーデラー「陶器でこしらえた女」。初出は『狂信の時代・ドイツ作品群I 1933-1938 やむを得なかった歴史』(学芸書林、1969年)。陶器でこしらえた女のあとをつけていった男の見たものとは。実話風のサイコホラー。 #怪奇幻想綺想文学集

2012-03-11 04:06:47
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30)ドーデラーは『世界文学大事典』によると20世紀オーストリアを代表する作家とのことだが、日本ではほとんど紹介されていない。単行本では『窓の灯』(小川超訳、白水社、1964年)だけ。 #怪奇幻想綺想文学集

2012-03-11 04:07:07
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31)ローベルト・ノイマン「文学史」。初出は『ブラック・ユーモア選集 6』(早川書房、1970年)。ある自殺した詩人に関する真説の報告。 #怪奇幻想綺想文学集

2012-03-20 04:00:59
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32)ノイマンは日本ではあまり紹介されていない。ウィーンに生まれイギリスに亡命、英語で作品を書いていた。文学的パロディが高く評価されているようだが、「本領は時代批判」(丸山匠、『日本大百科全書』)にあるという。 #怪奇幻想綺想文学集

2012-03-20 04:01:11
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33)単行本に『ウィーンの子ら』(阿部知二訳、岩波新書)、短編に「マルクウスの決意」(『狂信の時代・ドイツ作品群II 1938-1945 おおわれた世代』(学芸書林)がある。後者は自身の亡命体験に基づく痛烈なイギリス社会批判の作品。 #怪奇幻想綺想文学集

2012-03-20 04:01:26
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34)ゲルト・ガイザー「私が斃した男」。初出は『狂信の時代・ドイツ作品群III 1945-1957 創られた真実』(学芸書林、19699年)。いまの生活から抜け出そうと犯罪を犯した若者に警官がある復員兵の話を語る。 #怪奇幻想綺想文学集

2012-03-20 04:01:38
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35)ガイザーは従軍体験をもとにした作品で知られ、やや感傷的な作風は50年代には高く評価されたものの「60年代になると急速に否定的評価へと転じ」(相沢啓一、『世界文学大事典』)たという。 邦訳に『瀕死の戦闘機隊』(松谷健二訳、ハヤカワ文庫)がある。 #怪奇幻想綺想文学集

2012-03-20 04:01:45
@KARUBI_Ino

36)ペーター・ウルリッヒ・ヴァイス「郵便屋シュヴァルの大いなる夢」。初出は『ドイツ短篇24』(集英社、1971年)。フランス南部にあるシュヴァルの理想宮をめぐる詩的エッセイ。緻密な描写は微細小説と呼ばれる作風と共通している。 #怪奇幻想綺想文学集

2012-03-20 04:01:56
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37)ヴァイスはピーター・ブルックの演出・監督で知られる通称「マラー/サド」の戯曲以降政治的な作風に向かうが、本作は「変貌以前の、いわばヴァイスのマニエリスム時代の相貌をもっとも雄弁に物語る」(種村解説)作品。 #怪奇幻想綺想文学集

2012-03-20 04:02:38
@KARUBI_Ino

38)なお、ピーター・ブルックによる映画については日本公開時に「医者と魔術師との対話」(「アートシアター」63号)を寄稿している。 #怪奇幻想綺想文学集

2012-03-20 04:02:58
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39)フリートヒッリ・デュレンマット「トンネル」。初出は『狂信の時代・ドイツ作品群III 1945-1957 創られた真実』(学芸書林、1969年)。郷里から大学の街へ戻ろうと列車に乗った男。いつもならすぐ抜けるはずのトンネルからいつまでたっても出られない。 #怪奇幻想綺想文学集

2012-03-22 01:16:14
@KARUBI_Ino

40)フリートヒッリ・デュレンマット「事故」。戯曲。初出は『現代世界演劇 15 風俗劇』(白水社、1971年)。車のトラブルである家に泊めてもらうことになった男。そこには元裁判官や元弁護士がいて、彼は被告として裁判ゲームに参加することに。 #怪奇幻想綺想文学集

2012-03-22 01:16:29
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41)デュレンマットはスイスの劇作家、作家。「グロテスクな誇張や痛烈な風刺で現代社会の機構や不条理を観客に認識させる」(宮下啓三、『世界文学大事典』)作風で知られ、推理小説もてがける。邦訳多数。 #怪奇幻想綺想文学集

2012-03-22 01:17:21
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42)「トンネル」は光文社古典新訳文庫で近刊予定の『失脚/巫女の死』(増本浩子訳)にも収録されるようで、読み比べてみるのも一興。「事故」はデュレンマット自らが中編小説としても書いている(邦題「故障」、岩淵達治訳、『現代ドイツ幻想小説』所収)。 #怪奇幻想綺想文学集

2012-03-22 01:17:31
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43)デュレンマットの代表作のひとつ「老貴婦人故郷へ帰る」はベルンハルト・ヴィッキの監督で映画化(邦題「訪れ」)されている。同作については「不条理演劇と現代映画」(『怪物のユートピア』所収)で論じている。 #怪奇幻想綺想文学集

2012-03-22 01:17:43
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44)311ページの「事故」解説部分、7行目の「問題の中編小説」は「同題」の誤りだろう(原題が同じという意味)。ただ、これは本書の誤植ではなく初出の段階でこのようになっており、編集部としては先生に確認できない以上そのままにしたほうがいいと判断したのだろう。 #怪奇幻想綺想文学集

2012-03-22 01:19:29
@KARUBI_Ino

45)H・C・アルトマン「ドラキュラ ドラキュラーートランシルヴァニアの物語」。初出は『ドラキュラ ドラキュラ』(薔薇十字社、1973年)。婚約者を連れてドラキュラ城を訪れた男の物語。様々な原語の言葉遊びやドラキュラもののモチーフをちりばめたパロディ作品。 #怪奇幻想綺想文学集

2012-03-23 03:35:50
@KARUBI_Ino

46)アルトマンはオーストリアの詩人。「既成のジャンルに収まらない新しい試みによって〈言葉の魔術師〉の異名がある」(池内紀、『世界文学大事典』)。訳書には種村訳の『サセックスのフランケンシュタイン』(河出書房新社)がある。 #怪奇幻想綺想文学集

2012-03-23 03:36:00
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47)ペーター・ローザイ「オイレンシュピーゲル アメリカ」。初出は「ユリイカ」1980年7月号。単行本初収録。シュトラウスの交響詩でも知られるドイツ民衆本に出てくるいたずら者が、タイトル通りアメリカに渡ったという設定の話。 #怪奇幻想綺想文学集

2012-03-23 03:36:14
@KARUBI_Ino

48)ローザイは現代オーストリアの作家。本書収録の作家の中では唯一の戦後生まれ。日本ではほとんど紹介されておらず、本作が唯一の翻訳と思われる。 #怪奇幻想綺想文学集

2012-03-23 03:43:53
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49)ルイージ・カプアーナ「吸血鬼」。初出は『ドラキュラ ドラキュラ』。未亡人と結婚した男が精神科医に相談に来る。皮肉な結末が印象的な怪奇小説。 #怪奇幻想綺想文学集

2012-03-24 03:11:00
@KARUBI_Ino

50)カプアーナはイタリアの作家。ヴェリズモ(真実主義)の小説で「〈イタリアのゾラ〉と呼ばれるようになった」(須賀敦子、『世界文学大事典』)。邦訳は『シチリアの少年』(清水三郎治訳、岩波少年文庫)がある。 #怪奇幻想綺想文学集

2012-03-24 03:11:06