韓国で出版された『京城の日本語探偵作品集』と『日本推理小説事典』/韓国と台湾の日本語探偵小説

このTogetterでは、 (1)1920~30年代に朝鮮半島で日本語で発表された短編探偵小説を集めた『京城の日本語探偵作品集』(韓国、2014年7月刊) (2)上記の本と同じシリーズで最近刊行された韓国の『日本推理小説事典』 (3)1930年代に日本で探偵作家デビューした韓国人作家 続きを読む
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『京城の日本語探偵作品集』

 この本、日本だと韓国書籍を専門に扱う高麗書林で購入可能だそうです。Twitter経由で教えていただきました。

Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

韓国ですごい本が出た。1920〜30年代に朝鮮半島で日本語で書かれた短編探偵小説を集めた『京城の日本語探偵作品集』。京城(けいじょう)というのは今のソウル。解説等は韓国語だが、当時の誌面をそのまま収録した本なので本文はもちろん日本語。 pic.twitter.com/7UvtcTDstW

2014-07-22 22:29:11
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Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

『京城の日本語探偵作品集』の収録作は、韓国人が書いた最初の日本語探偵小説とされる金三圭(キム・サンギュ)「杭に立ったメス」(1929-30)や、京城探偵趣味の会の連作小説「女スパイの死」(1931)、「三つの玉の秘密」(1934)など、短編21編と随筆1編。

2014-07-22 22:33:12
  • 「女スパイの死」の執筆者: 山崎黎門人、阜久生、吉井信夫、大世渡貢
  • 「三つの玉の秘密」の執筆者: 山岡操、太田恒弥、山崎黎門人
  • ツイートでは書き忘れたが、収録作の作者は少なくとも名前を見る限りでは、日本人と思われる名前の人が多い。例外は金三圭のみ。
Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

こんな感じに当時の誌面がそのまま収録されている。写真は連作探偵小説「女スパイの死」の第1回の最初のページ(『京城の日本語探偵作品集』) pic.twitter.com/JdXrbZLaWu

2014-07-23 00:55:43
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Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

『京城の日本語探偵作品集』、収録作は雑誌『朝鮮公論』から採られたものが多い。創作だけでなく翻訳物も何編かある。たとえば、シャーロック・ホームズ物の短編「まだらの紐」を倉持高雄という人が訳した「謎の死」(初出:『朝鮮公論』1925年9~12月)など。

2014-07-22 22:37:17
Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

『京城の日本語探偵作品集』に収録されている作家はほとんどが日本では無名だが、1つ、有名な探偵作家の作品が収録されている。森下雨村の佐川春風名義の短編「宝石を覘(ねら)う男」。初出は『朝鮮地方行政』1928年3月号だそうだが、日本の森下雨村ファンの間では知られているんだろうか。

2014-07-22 22:41:55
  • ほかに有名作家では、江戸川乱歩の随筆(?)「探偵趣味」が収録されている。初出は『朝鮮及満洲』1927年1月号。これは『ラヂオ講演集 第十輯』(日本ラヂオ協会・博文館、1926年11月)に収録された江戸川乱歩の「探偵趣味」と内容がほぼ一致するが、文章が異なる(中相作氏のご教示による)。同じラジオ公演から別の人が文字起こしをしたのだろうか。元のラジオ講演は1925年11月9日放送。
Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

『京城の日本語探偵作品集』、収録作のタイトルだけ見ると一番面白そうなのは京城帝国大学予科の学生、末田晃が書いた「猟死病患者」(1929-30)だが、なんと3回連載されて中断した未完結作品……残念。

2014-07-22 22:46:33
Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

『京城の日本語探偵作品集』は奥付は2014年3月となっているが、実際には遅れて今月刊行。同時に、『植民地朝鮮の日本語雑誌の怪談・迷信』 book.daum.net/detail/book.do… という本も出ている。これは持っていないが、戦前の朝鮮半島で日本語で書かれた怪談などを収録。

2014-07-22 23:15:41
  • 2冊とも《植民地期日本語大衆文学シリーズ》のうちの1冊

  • 『怪談・迷信』の方も高麗書林で買えるそうです。→ 高麗書林 『植民地朝鮮日本語雑誌の怪談・迷信』

  • 下記の『日本推理小説事典』も、少々不思議だが、《植民地期日本語大衆文学シリーズ》のうちの1冊として刊行された。これも奥付は2014年3月となっているが、実際には遅れて5月か6月の刊行。

  • これも高麗書林で購入可能。→ 高麗書林 『日本推理小説事典』

『日本推理小説事典』

Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

これは韓国で最近出版された『日本推理小説事典』。700ページの大著で、日本の推理作家や関連事項を解説。巻末には日本のミステリ賞の受賞作一覧や、日本ミステリについてもっと知るための参考文献リスト、日本ミステリ年表を収録。 pic.twitter.com/vWExmNdxju

2014-07-22 23:31:20
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Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

韓国の『日本推理小説事典』。韓国では辞書はABC順でもあいうえお順でもなく「カナダラ順」なので、一番最初の項目は「加賀美敬介」。続いて景山民夫、金井英貴(→清涼院流水を見よ)、加納朋子、香納諒一、加納一朗、加田伶太郎、加堂秀三、門井慶喜、門田泰明、狩久、『仮面』、神津恭介……

2014-07-22 23:46:02
Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

先日刊行された韓国の『日本推理小説事典』。結構新しい作家も項目がある。たとえば円居挽……はあるが、森川智喜はないようだ。ほかに梓崎優とか、七河迦南、詠坂雄二らの項目もあり。

2014-07-22 23:49:26

1930年代に日本で探偵作家デビューした韓国人作家、金来成(キム・ネソン)

Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

『京城の日本語探偵作品集』にも収録された金三圭(キム・サンギュ)「杭に立ったメス」(1929-30)が最近になって「発見」されるまで、韓国人が日本語で書いた最初の探偵小説は金来成(キム・ネソン)の「楕円形の鏡」(1935)だと考えられていた。

2014-07-23 18:05:09

 「楕円形の鏡」は平壌近郊出身の金来成が東京留学中、早稲田大学の学生だったときに日本の探偵雑誌『ぷろふいる』に発表した作品。『金来成探偵小説選』に収録。

  • ↓ 金来成(キム・ネソン)が日本で日本語で発表した短編3編と評論・随筆数編、韓国に帰ってから韓国語で発表した長編1編、短編1編、随筆1編を収録
Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

論創ミステリ叢書第76巻『金来成(キム・ネソン)探偵小説選』をいただきました。発売は6月30日頃。幻の長編探偵小説『思想の薔薇』も収録。私は解題を執筆しました。帯によると来月は岡田鯱彦の1。 pic.twitter.com/6YSZwLFpVq

2014-06-20 22:19:07
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Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

金来成(キム・ネソン)は平壌から東京に留学に来て、早稲田大学で学びました。その学生生活についてはあまり知られていませんでしたが、『金来成探偵小説選』では、学生時代を回想した貴重な韓国語随筆を翻訳収録しています。韓国のミステリ研究者が最近古い雑誌から発掘した随筆です。

2014-06-20 22:40:12
Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

論創ミステリ叢書で作品集が発売になった金来成(キム・ネソン)は日本留学時代(1931~1936)に雑誌で江戸川乱歩のような作品が書きたいとコメントしていて、作中で乱歩作品を引用したりもしており、留学中に乱歩邸を何度か訪れ、朝鮮半島に帰ったのちには乱歩と文通もした。

2014-07-05 23:07:35
Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

金来成が1938年に「POEと江戸川乱歩」という韓国語随筆を書いていたことも今回新たに分かった。初出紙を確認できなかったが、その一部が後年の随筆「探偵小説二十年史」(『金来成探偵小説選』に翻訳収録)に引用されていて、金来成が日本で乱歩と面会した時の様子がちょっとだけ分かる。

2014-07-05 23:52:40
Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

神保町で論創海外ミステリの新刊、『魔人』購入。帯→「江戸川乱歩の世界を彷彿とさせる怪奇と浪漫/1930年代、魔都京城で開かれる華やかな仮装舞踏会 次々と起こる怪事件に探偵劉不亂が挑む/韓国推理小説の父、金来成が放つ本格探偵長編」 pic.twitter.com/BMGalr3l4G

2014-07-19 20:40:32
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Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

論創海外ミステリ7月の新刊『魔人』は、江戸川乱歩に憧れ、乱歩のような作品が書きたいという理想を持っていた韓国人作家が1939年に発表した長編。新聞連載ののち同年に単行本が刊行され大ベストセラーになった。乱歩ファン、戦前国内探偵小説のファンには特にお勧めです。

2014-07-19 20:54:46
  • ↑ 『魔人』は金来成(キム・ネソン)が韓国に帰ってから韓国語で発表した長編探偵小説(2014年7月末刊行予定/神田神保町の一部の書店では先行発売中)

台湾の日本語探偵小説 (2014年7月23日追加)

Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

昨日のこのツイートが500RTを超えてて仰天 twitter.com/Colorless_Idea… 。ちなみに同じ趣旨の本の台湾版は12年前に日本で出ている。1910〜40年代に台湾で日本語で発表された短編探偵小説・探偵実話を集めた『台湾探偵小説集』(緑蔭書房、2002年11月)。

2014-07-23 16:16:14