ＮＨＫ・クローズアップ現代「漢方薬に異変あり!?伝統医療覇権争い」書き起こし・ほぼ完全版　#nhk

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<ナレーション>　ガンや認知症など治療の現場で、使われることが当たり前になってきた伝統医療「漢方」。その漢方薬をめぐって、いま異変が起きています。原料の生薬の入手が難しくなっているのです。背景にあるのは爆発的な需要の拡大。

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<ナレーション>原産国である中国はもちろん、欧米からも引く手あまた。価格が高騰を続けています。こうした中、中国政府は伝統医療のグローバルスタンダードを握ろうと、新たに独自の戦略を打ち出しました。はたして日本の漢方はこれからどうなるのか。アジアの伝統医療の覇権をめぐる攻防を探ります

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国谷：こんばんは、クローズアップ現代です。こちらにあるのが漢方薬の原料となる生薬です。多くが植物の根や木の皮。これは甘草という生薬、風邪薬でおなじみの葛根湯の原料などに使われています。こうした生薬が複数配合されて、一つの漢方薬が作られるわけです。

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国谷：いま漢方薬の効能が次々に科学的に証明されています。手術後の回復を助ける。認知症の症状を緩和する。あるいは抗がん剤の副作用を抑える。中には最新の研究で分子レベルにいたるまで漢方薬の働きが検証され、効能が科学的に確立されてきたものもあります。

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国谷：その結果、西洋医学と同じように信頼性の高い治療法として、国内では医師の９割近くが漢方薬を処方し、世界の医療現場でも自国の医療に組み込もうという動きが出てきています。漢方と言えば中国をイメージされる方も多いと思いますが、中国の伝統医学が日本に伝わったのが５～６世紀ごろ。

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国谷：そのあと日本で独自の発展を遂げ、漢方医学と呼ばれるようになりました。中国の伝統医学・中医学とは、生薬の配合や診断方法に至るまで大きな違いがあります。西洋医学と同じ土俵に立てるよう、分子レベルに至るまで徹底的な検証を続けている日本の漢方医学ですけれども、

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国谷：いま中国が自国の中医学をアジアの伝統医学の国際標準として民定を得られるよう、活発に動き始めています。議論の成り行きによっては、今後の日本の漢方医学の発展を脅かしかねないと懸念されています。

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国谷：そしてもう一つ、漢方が直面している問題が原料の生薬です。生薬の８５％を中国からの輸入に頼っていますけれども、いま生薬の価格が世界的な需要の高まりを受けて高騰し、この１０年間で３倍近く値上がりしています。

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国谷：このままでは生薬の入手が困難になると懸念されている、この現状からまずはご覧ください。

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<ナレーション>　いま漢方薬が医療のあり方を大きく変え始めています。高知大学付属病院の外科チームです。ここでは年間５０例の肝臓手術を実施、術後の患者に必ず処方するのが漢方薬です。ここ数年、漢方薬の効き目が次々に立証され、西洋医学との併用で大きな成果を上げているのです。

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<ナレーション>　手術を受けた患者に処方されるのは漢方薬の「大建中湯」です。術後に現れる腸閉塞が緩和され、入院日数が平均で３．５日短縮されることが科学的に明らかになっています。医療現場での漢方薬の利用が広がるなか、大手漢方薬メーカーの販売量は、１１年前に比べ１．５倍に増えています

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花崎和弘教授：臨床的な研究が進んできて、エビデンス（科学的根拠）がしっかり出始めてきた。漢方薬は（治療に）選択される薬剤のなかでも、非常に優先度の高い薬剤になってくるんではないかと考えています。

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<ナレーション>　ぜんそくの患者、木村基さんです。３年前から漢方薬を西洋医薬と組み合わせ服用してきました。

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木村：（ぜんそくの）苦しみは、全くなくなりました。これはすっかり漢方のおかげだと思って感謝しております。

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<ナレーション>　ところが今、その生活を揺るがしかねない事態が起きています。先月、いつもの漢方薬を買おうと薬局に向かった木村さん。意外なことを知らされました。

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薬局店員：価格がだいたい２倍から５倍ぐらいに上がってるんです。これがどうなるか、今後ちょっとわからない部分があります。

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<ナレーション>　漢方薬に配合されている生薬の仕入れ値が急騰して、今後はこれまで通り薬が出せなくなるかもしれないと告げられたのです。

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木村：（漢方薬が）なくなるということは、自分の生活の上では考えたくないですし、考えられません。ぜんそく患者のために救っていただきたいと。

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<ナレーション>　製薬メーカーから薬局に配られた生薬の価格表です。木村さんが使ってきたものも含め、今月から軒並み値上がり。中には５倍になった生薬もありました。