みやの はるか(@papico4519) #twnovel テーマ別40編

みやの はるか(@papico4519)が投稿したツイッター小説の中から、テーマを設定して書いたものをピックアップ。
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------「雨降りの優しい日」をテーマにした10編------

みやの はるか @papico4519

校門を出ると、側に翔太が立っていた。傘を持ったまま空を見上げている。「何、してるの?」「雨待ち。嫌なこと流してくれると思って」彼は振り向かずに答えた。昼なのに空は薄暗い。再び歩き出すと、糸のような雨が落ちてきた。「いいことありそうだね」翔太が少し笑った。 #twnovel

2010-09-30 14:47:20
みやの はるか @papico4519

#twnovel いつの間にかベッドの上にいた。側の窓では、たくさんの雨粒がガラスをつたっている。「何やってんだ、俺」腕で目を覆うと、目頭が濡れていた。彼女に別れ話を切り出され、逃げてきたのだった。夜が明けてからもう一度連絡してみよう。結果は分かりきっているけど。

2010-10-01 00:52:05
みやの はるか @papico4519

#twnovel 土砂降りの中でてるてる坊主が微笑みながら揺れている。陸は窓に張りついて動かない。「残念だったねぇ、おいも掘り」見かねた母が声をかけたが、返事はない。母は困ったように笑い、「雨が降るのは、おいもさんにはいいことじゃないかな」陸は心の中で雨とてるてる坊主に謝った。

2010-10-02 11:47:46
みやの はるか @papico4519

#twnovel 稲光が走った後、小さな雷鳴が聞こえた。翔が俺の手を強く握ってきた。小さな手がかすかに震えている。「お前、もしかして」「びびってねーよ、クソ親父!」「大丈夫だよ、まだ落ちないから。さっさと帰ろう」そう言って握り返すと、手の中の震えがおさまった。

2010-10-04 00:28:51
みやの はるか @papico4519

#twnovel カエルが一声鳴いた。チエが真似をするとまた一声。もう一度真似すると、更に一声。いつの間にか、子どもとカエルの合唱が始まっていた。雨の音と愛犬コロの声も加わると、もっとにぎやかになった。チエは軽やかに、コロと一緒に歩いた。

2010-11-06 01:56:13
みやの はるか @papico4519

#twnovel 明日は晴れるかな。雨は教室の窓を流れている。「どしたの?」隣の席のさくらが話しかけてきた。説明すると「今日降れば明日は大丈夫だよ」「なんで?」「明日の分がなくなるから!」さくらは得意げに言った。妙に自信たっぷりな彼女の言葉を、駿は少しだけ信じてみようと思った。

2010-11-06 20:55:04
みやの はるか @papico4519

#twnovel 澄み渡る空の下、浩二とあさみが前を歩いている。あさみは浩二に笑いかける。浩二はあさみを見ながら微笑む。俺は一瞬だけ目をそらした。両想いの二人を引き合わせただけだ。なのにモヤモヤは消えない。頬に冷たさを感じ、我に返った。「……雨か」太陽の光を浴びて、雨がきらめく

2010-11-27 18:42:16
みやの はるか @papico4519

#twnovel 雨がまとわりつく。僕を包みこむように。細かな粒が髪や肌に張りついている。けれど、そいつはささやいてくるのだ。忘れるなよ、と。彼女を忘れているわけじゃない。けれど、あの人を気にかけているのも事実。「……寒い」春雨を浴びても風邪をひかない、なんて嘘だ。

2011-01-10 12:26:40
みやの はるか @papico4519

#twnovel また赤い傘を見た。霧雨に濡れながら、今日も彼女の後ろを歩く。彼女が校門を出ていく。何歩か遅れてあたしも出ようとすると、彼女が振り返った。大きな黒い瞳に見とれて立ち止まる。次の瞬間には赤い傘が鼻先にあった。とまどいながら受け取ると、彼女は何も言わずに立ち去った。

2011-01-29 13:44:04
みやの はるか @papico4519

#twnovel 少年の前に二つの橋。ぼやけた虹の橋。どちらも先は見えない。少年は左の橋へ足を踏み出す。歩くたびに現れる虹の橋の先。周りには白い霧。何十歩か歩いたところで視界が真っ暗になった。少年はベッドから転がり落ちていた。

2011-04-10 22:28:44

------「夜の帰り道」をテーマにした10編------

みやの はるか @papico4519

#twnovel 夜空のにじむ月。薄雲のかかるその月は、いつもより薄暗い。少年は食い入るように見つめた。頬を撫でるように、ひんやりとした風が吹いた。明日はたぶん、晴れない。

2011-04-10 23:39:00
みやの はるか @papico4519

#twnovel 夜道の雨。傘の上で弾ける音。指に当たる水滴の感触。車のライトが照らす光る糸。雨に当たる帰り道。けれど、そのひとつひとつが、仕事で疲れた僕の心を晴れやかにする。

2011-04-11 20:40:50
みやの はるか @papico4519

#twnovel 半分の月。ななめに欠けた月。それは誰かの横顔。目を閉じて穏やかに微笑む横顔。ふと見上げた月に、そんなイメージを感じた。僕はそんなにも、癒しに飢えているのだろうか。

2011-04-13 22:05:44
みやの はるか @papico4519

#twnovel しんと静まりかえった夜の道。前を歩くカップル一組。くっつくように歩いているのに、女だけがゆらゆら揺れる。右にフラフラ、左にフラフラ。男のほうは構わず前見て歩く。構ってほしいのか、愛情表現なのか。見極める前に、二人は四つ角を右に折れた。

2011-10-03 00:45:32
みやの はるか @papico4519

#twnovel 墨色の空。水を打ったように静かな住宅街。長く伸びる下り坂。自転車に乗った僕は、ペダルを踏んで一気に駆け降りる。ペダルから両足を離し、高らかに歌ったりなんかする。上半身に受ける強い向かい風と、人目を気にせず歌える解放感で、胸が高鳴り始めた。

2011-10-05 21:21:43
みやの はるか @papico4519

#twnovel 彼は一人で歩いていた。どしゃ降りの夜道を、傘もささずに。顔と服についた血は、もう流れただろう。消えないのは、包丁を通して伝わった肉の感触。あいつのうめき声が耳から離れない。家の前に着くと、何年かぶりに帰ってきたような気がした。街灯がぼんやり光っている。

2011-10-05 23:48:22
みやの はるか @papico4519

#twnovel 上弦の月が上る空の下で、雑木林がざわめいている。ひんやりとした風が髪を揺らす。木々たちは何かにおびえているのだろうか。今は、真っ黒な木の形しか見えない。バイクのエンジンを吹かす音が、かすかに聞こえる。約束の日は、もうすぐ来るだろう。

2011-10-07 20:06:03
みやの はるか @papico4519

#twnovel 真っ暗な道。街灯が所々でぼんやり光る。そこに突然聞こえてくる音。鈴を転がすような小さな音。途切れながらも繰り返す。控えめなままの音は、虫たちの求愛の叫びなのだろうか。目を閉じると、彼らの姿が浮かんできた。

2011-10-12 01:12:09
みやの はるか @papico4519

#twnovel まだ空は、赤みがかった灰色。もう太陽は沈んだけれど、家々には暖かい光が灯っている。ときどき皿を運ぶ音が家の中から聞こえる。団らんの準備で、住宅街はにぎやかだ。家までの道に、胸が踊る。

2011-10-15 13:41:50
みやの はるか @papico4519

#twnovel 夜風を浴びる時間は唐突に断ちきられた。自転車を引きずって歩く帰り道。タイヤの空気はもう残っていない。ため息をつきながら引きずっていると、目につくのは家々の明かり。家族を待つ灯火は、心に割りこんでくるほどに温かくて。僕は目をそらして歩みを早めた。

2011-11-30 14:59:03

------「いつもの仕草」をテーマにした10編------

みやの はるか @papico4519

#twnovel 頭に何かが当たる感触で目覚めた。固いものではなく、小さなものがかすかに当たる感触。目が覚めきらないうちに、先生が僕を名指して、教科書の数行を読ませる。投げた主とおぼしきヤツの方を横目で見ると、視線をそらされた。あいつに感謝すべきかどうか、迷う。

2011-09-27 22:52:24
みやの はるか @papico4519

#twnovel 「やっと見えた」真が声を弾ませた。夜空に無数の宝石が散りばめられている。「東京の三倍は見えるな」そう言って僕は、星空に釘付けになる。真も同じように夜空を見上げて言った。「ずっと曇ってたからね。最後に見せられて良かった」その声には、嬉しさと寂しさが混じっていた。

2011-09-29 00:28:03