ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/04/29

今日読んだついのべの中から個人的にお気に入りの作品を選んでみました。 ついのべ #twnovel とは140文字以内で書かれた短いお話です。
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silf⛩️ @athene1020

彼女が完全に視力を失ったと聞いて、私は作家業を辞めた。物語はいつも彼女のもの。私は文字にさえしない物語を囁く。読まれ忘れ去られるはずの言葉たちは彼女の心に永遠に残る。暗闇に生きる彼女は新しい物語を欲する。私は、最高の読者を手に入れた。 #twnovel

2012-04-29 00:28:54
@transmitter01

#twnovel その子供は、時計の秒針が刻む音を怖がっていた。自分の命の時間を計られているようだと。子供は病気だった。一息一息を拾うように呼吸をしていた。「少しずつ闇に呑まれるような気がする」不安がる子供に医者は言った。「君の心臓の音を聞いてごらん。今、君は力強く生きている」

2012-04-29 01:05:18
夢名 七志 @mumei7c

下手くそな演奏だ。「上手くなりたいのか」聞けば少年は頷く。「この十字路で0時少し前に一人で弾くんだ」簡単な地図を渡す。次の日。浮かない顔の少年がいた。「どうだ、望みは叶ったろう」無言で吹き始めたトランペットはブタの鳴き声のようだった。「そうか、奴は弦楽器専門か」 #twnovel

2012-04-29 01:18:41
黄金の米菓子 @OK_1111

#twnovel 死んだ父の書斎にある一冊の本を開くと本の虫が現れた。そいつの身の上話を聞く限り、電子書籍が主流のこのご時世、本の虫達は居場所を失っているようだった。とはいえ私は最初から全て処分するつもりだったので、他を探してもらうしかない。そう告げた途端、本はずぶ濡れになった。

2012-04-29 03:14:05
140字物語 @shortshortshot

「宅配の来るタイミングが悪くてさ」友人が苦い顔で漏らした。帰るといつも不在通知書が入っているらしい。「だから、今日は自分から取りに行こうと思ってるんだ」この会話を交わしたのが二ヶ月前。その後彼の姿を見た者はいない。一体どこまで荷物を取りに行っているのだろうか。 #twnovel

2012-04-29 03:55:27
あまたす @amatasu

子供の頃、寝る前に母が聞かせてくれる物語が何より楽しみだった。ろうそくの明かりの中で聞く、数々の不思議な物語。物語に合わせて私の前には虹がかかり、花が咲き、風が吹いた。それらが母の「ちょっとした演出」だとは思いもしなかった。母が世界最高の魔法使いだと知るまでは。 #twnovel

2012-04-29 04:19:52
ろばたにスエノ🦀 @robatani

ベクートは狩人、獲物は獣に鳥に妖魔、時に人。狙いを違えて森の女王に捕われ、それからずっと女王に仕えていた。森にとどまればいずれ獣となる。ただ、「町」という単語だけが耳奥に残り、この男を人の側に繋ぎ止めていた。半人半鳥の狩人はマチ、と誰かを呼ぶように繰り返す。 #twnovel

2012-04-29 04:41:03
🏳️‍🌈イチカワユウ🇺🇸 @yu_ichikawa

携帯は震え続けた。「おとりになりますか?」美容師がさりげなく聞いたが女は小さく首を振った。セットが終わり一人になると女は携帯を手にとった。カチカチ。選択したメールを一括削除。OK。カチ。ノックの音がした。「ご新婦さま、よろしいですか?」女は頷いて立ち上がった。 #twnovel

2012-04-29 09:05:00
いでゆのまち @ideimachi

#twnovel 美しくなりたい。彼女が初めて訴えた。男と恋に落ちたらしい。親友の頼みに、私は魔力で頭を金髪に、肌を白くしてあげた。喜んでつき合い始めた彼女だけど、やがて暗い顔で現れた。「彼、目を見てくれないの。本当に私を好きなのかしら」あんた、自分が誰か忘れてない? メドウサ。

2012-04-29 19:19:42
七歩 @naholograph

キスしたくなる口紅を見てたら美容部員が微笑んだ。「そちらの口紅で魅力的な唇が作れます」片想いの彼、キスしてくれるかな。「ただ簡単なおまじないも必要ですけど」おまじない?「彼の前に立って」立って?「つま先だって目を閉じて下さい」OKキス出来そうな気がしてきた。え?#twnovel

2012-04-29 20:54:46
Shimada Yuichi @chimada

#twnovel 博士は蝶をつくった。蝶ははじめ、迷っているように博士の手のひらに留まっていたが、博士が息を吹きかけると、ようやく羽ばたきだした。私は蝶の行方を目で追った。蝶は部屋の中をあちこち廻った。しばらくすると、蝶は置いたビンに入った。博士はビンを閉じた。蝶は液体に戻った。

2012-04-29 21:31:15
おぼろちゃん @oboroose

#twnovel 彼女の恥ずかしそうな笑い声がする。「なんで朝がこないのかなって不思議だったんだけどね、目を開けるのを忘れていたんだよ」言われてみれば、確かにそうだ。ぼくはこの闇を払うために、すっかり忘れていた目を、開いた。闇だった。彼女の声を求めてさまよったが、もう聞こえない。

2012-04-29 22:25:57
おぼろちゃん @oboroose

#twnovel 夜には夜のルールがあって、たとえば子どもは寝なくちゃいけない。寝息のしないベッドには、監察官がやってくる。寝たフリなんかするだけ無駄で、赤い瞳がジッと見ている。そして、耳元で囁くのだよ。ここまで聞いたらもう手遅れで、そうだよぼくが監察官だ。さあ、目を開けなさい。

2012-04-29 22:26:28
tokoya @tokoya

#twnovel 生命体の知的レベルを調べるのが自分の仕事だ。この星に来るのは数万年ぶりになる。工業レベルはかなり発展していたが、連邦に参加できる知的レベルにはまだ足りない。この星で最も多く使われている通信を調べると、全て140文字以下だったのだ。残念だが、これでは話にならない。

2012-04-29 22:44:16
塩中 吉里 @shionaka_kiri

天体望遠鏡に人工知能を搭載し、学術価値の高い領域を重点観測させれば天文学の発展がいや増すのでは、という提案を受け、その望遠鏡は生まれた。賢い彼は科学者の補佐を必要とせず、広い砂漠に整備士と二人きり。彼の足場が徐々に背伸びをしていることに気づいたのも、整備士一人。 #twnovel

2012-04-29 22:44:55
咲良 潤 #言の葉の点綴 @sakura77_sosaku

「もう別れよう」と言ってから1週間。帰りが同じ方向の彼に会うのが気まずくてあえて遠回りをした。わざと学校に居残って遅く帰ったりもした。でもその度に彼と一緒になった。「何でここに?」と呆れる二人。考えることは一緒らしい。結局付き合ってた頃よりも多く一緒に帰ってた。#twnovel

2012-04-29 23:17:04