超人誕生-『アキハバラ電脳組』の霊機融合について-

『アキハバラ電脳組』の第17話「新生」にて、主人公花小金井ひばりがディーヴァ(DIVA)との霊機融合を果たすまでの描写を、錬金術作業過程及び超人への道の観点から考察します。(未完)
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@Abraxas_Aeon

そしてこの『アブラハム黙示録』第10章のヤーホーエルの言述は、既に上記にて見た『出エジプト記』第23章20節以下のメタトロンについて述べられている記述と意味合いを同じくする。すなわち、メタトロンもヤーホーエルも、その名のうちに神の名を帯びているという点で共通しているのである。

2010-06-20 16:07:05
@Abraxas_Aeon

ヤーホーエルはユダヤ・グノーシスの思弁において《小ヤーホー》ともいわれた。この述語は、既に2世紀末に非ユダヤ的グノーシスの著作に浸透していたが、メルカバ神秘家の間でもメタトロンの異名として伝わっている痕跡があるという。

2010-06-20 16:08:40
@Abraxas_Aeon

《ヤーホー》は神聖四文字の略語であるから、《小ヤーホー》とはすなわち《小YHWH》といっているのと同義であるといえる。これもメタトロンの肩書きの一つと一致している。

2010-06-20 16:11:08
@Abraxas_Aeon

さて、ここで錬金術師の大秘法による超人への道の話に戻ってみよう。まず、これまで説明したエノク=メタトロンがロゴス(神の言葉)と同一視されることがあるということ、炎の精霊であるということ、《小YHWH》と呼ばれるように神の名を帯びているということなどをチェックしておきたい。

2010-06-20 16:31:50
@Abraxas_Aeon

このエノク=メタトロンは古くからヘルメスと並行的類似関係にある。錬金術においては、エノク=メタトロンはヘルメス・トリスメギストス(ヘルメス=トート)、メルクリウス(「神の水銀」、「神の恩寵」の象徴的表現)、アガトダイモーン(叡智を開示する好ましい守護霊)と同一視される。

2010-06-20 16:46:05
@Abraxas_Aeon

アガトダイモーンの語源はギリシャ語のアガトス・ダイモーンで、アガトス・ダイモンはギリシャでは蛇のような姿をした、地下世界の豊饒のダイモーンで、英雄の守護霊に関係している。エジプトでも同様に、蛇の姿をした、生命力と治癒力を授けるダイモーンである。

2010-06-20 16:51:26
@Abraxas_Aeon

オリュンピオドロスという人物は、アガトダイモーンのことを「より秘密にみちた天使」、《ウロボロス》、あるいは「天」と呼んでいる。

2010-06-20 17:00:52
@Abraxas_Aeon

まとめ:エノク=メタトロン=《ヘルメス・トリスメギストス(ヘルメス=トート)》、《メルクリウス(神の水銀、神の恩寵)》、《ロゴス(神の言葉)》、《神の霊》、《炎の霊》、《秘密の火》、《燃える水》[=哲学者の硫黄+哲学者の水銀=賢者の石]、《アガトダイモーン》、《ウロボロスの蛇》。

2010-06-20 18:01:01
@Abraxas_Aeon

先ほど書いたまとめに足して、エノク=メタトロンそのものが錬金術師、あるいは錬金術的超人だとも見做しえるということも書いておきたい。さて、このメタトロンそのものといっていい存在が『アキハバラ電脳組』のクレイン=バーンシュタイクだと前に書いたが、ひばりが霊機融合する場面を見てみよう。

2010-06-20 19:22:31
@Abraxas_Aeon

劇中ではクレインとひばりが交感する場面がよく見られるが、ひばりが白い王子(クレイン)を黒い王子(鷹士)と取り違えずに明確に区別して認識できるようになったのは、17話の「新生」における、霊機融合の直前の出来事である。

2010-06-20 19:26:35
@Abraxas_Aeon

『アキハバラ電脳組』精神世界(?)でクレイン[=メタトロン]と邂逅する直前のひばり。 http://twitpic.com/1yeuxi

2010-06-20 19:33:50
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@Abraxas_Aeon

『アキハバラ電脳組』クレイン[=メタトロン]と邂逅したひばり。 http://twitpic.com/1yevgz

2010-06-20 19:35:58
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@Abraxas_Aeon

(ちなみにこの場面のBGMが「朱-AKA-」と題されているのもネタになる)

2010-06-20 19:37:12
@Abraxas_Aeon

この場面に至るまでには、鷹士がつばめ(ヒロインの一人)に指令を与えて、ディーヴァ・エリヌースの力によってひばりとディーヴァ・アフロディーテを異次元空間に閉じ込めて追い詰め、脅迫するという過程がある。これは鷹士が、アニマ・ムンディの更なる覚醒を無理やり行おうとしたため。

2010-06-20 19:44:51
@Abraxas_Aeon

アフロディーテがエリヌースによって滅多打ちにされ、ズタボロにされていく中で、その黒い王子の仕打ちに嘆き悲しむひばりはクレインと交感する。助けを求めるひばりに対してクレインの言葉は以下のようであった。「力は誰の心にもある。諦めの思いある限り、真の力は目覚めない。」「真の力?」

2010-06-20 19:46:54
@Abraxas_Aeon

これはひばりに対して、グノーシスの開示、即ちロゴス(神の言葉)、《神の霊》、《炎の霊》、《秘密の火》、《燃える水》[哲学者の硫黄+哲学者の水銀=賢者の石]の降下がなされたといっても過言ではないイメージである。彼女は神的存在(メタトロン)からの恩寵を得て、「火の洗礼」を受けた。

2010-06-20 19:53:49
@Abraxas_Aeon

この結果、彼女は自分で自分に無意識のうちにかけていた「諦めの思い」という呪詛的な抵抗部分を打ち払う捨て身さを見せることになる。その結果、アニマ・ムンディの巫女としての更なる覚醒、即ち白色石から「赤化(ルベド)」の段階への変容を遂げてアフロディーテと霊機融合することになる。

2010-06-20 19:58:46
@Abraxas_Aeon

『アキハバラ電脳組』 BGM:朱-AKA-が流れた後に白色石から赤化の段階へと覚醒するひばり。 http://twitpic.com/1yfjck

2010-06-20 21:10:19
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@Abraxas_Aeon

「あ、あたしデンスケと合体しちゃった・・・、これがあたしの『真の力』?感じる、感じるわ!あたしの中にデンスケを、王子様を!」この様はメタトロンを神的存在と見なすなら、神との一体感を得ているということになる。

2010-06-20 21:12:00
@Abraxas_Aeon

単純に見れば火事場の馬鹿力的な描写だが、これはアニマ・ムンディの火の光線(魂のヌーメン的激情)が迸り出ているといえる。また、ディーヴァの素体についての説明を見れば、これまで説明してきた錬金術の「大作業」の究極である「超人への道」が成就されたのと同義であるといえる要素がある。

2010-06-20 21:15:59
@Abraxas_Aeon

サン=ジェルマン伯爵は、ディーヴァのことを「人類を肉体というくびきから解放するもの」と言っている(ちなみにサン=ジェルマン伯爵にも不死身の肉体を有する云々の伝説がある。澁澤龍彦の説明がコミカルで面白い)。

2010-06-20 21:17:13
@Abraxas_Aeon

ディーヴァは、元はローゼンクロイツが「新たな人類のイレモノ」として作り上げたもので、彼やシゴーニ ュはそれとの霊機融合を果たすことによって真の不老不死を得ようとしていた。しかし「霊機融合」=「超 人への道」が彼らの最終目的ではない。

2010-06-20 21:28:36