かおるさとーさんの『氷菓』#4「栄光ある古典部の昔日」 解説

かおるさとーさんによるアニメ『氷菓』第4話「栄光ある古典部の昔日」の解説です。内容の核心に触れている部分もありますから、まだ観ていないという方はご注意ください。 1 http://togetter.com/li/310298 2 http://togetter.com/li/310317 3 http://togetter.com/li/310330 続きを読む
6

原作の『氷菓』にあたるお話も佳境に入ってきました。第4話栄光ある古典部の昔日」です。

かおるさとー @kaoru_sato

『氷菓』第4話について気づいたことをいくつか。

2012-05-19 21:57:27
かおるさとー @kaoru_sato

今回は前の3話と違い、1話まるごと推理回でしたね。結論や雰囲気を楽しむだけならともかく、最初から最後までの流れを把握するには、ちょっと集中力の必要な回だったと思います。原作未読の方には、特に。

2012-05-19 22:08:42
かおるさとー @kaoru_sato

しかし一般的なアニメの“説明回”とはちょっと違います。何が違うのかといいますと、アニメ作品においての説明回というものは、前回までの謎を説明する伏線回収が主で、必要な情報は前回までに提示されていることがほとんどです。その点から見ると、この話は普通の説明回ではありません。推理回です。

2012-05-19 22:14:51
かおるさとー @kaoru_sato

そういう意味では4話も、前回までの話と構造は同じです。その回で提示された情報から推理して、(一応の)結論にたどり着く。ただし、情報量が多いために、集中して観ていないと、ただの説明回になってしまっているような印象を受けるかもしれません。

2012-05-19 22:18:31
かおるさとー @kaoru_sato

集中力だけの問題でもありませんね。今回提示された情報は、4人が各自で調べてきた資料です。しかしその資料を画面から読み取るには、とてもリアルタイム視聴では叶いません。きちんと資料を読み取りたい人は、録画して観ることをおすすめします。

2012-05-19 22:20:59
かおるさとー @kaoru_sato

それでは内容に触れていきます。まず、冒頭。千反田さんと奉太郎が一緒に帰るシーン。前回風邪をひいていた千反田さんのくしゃみから始まります。続きであることを端的に表す、わかりやすくも細かい場面です。

2012-05-19 22:23:29
かおるさとー @kaoru_sato

ここで奉太郎が里志と摩耶花について触れます。千反田さんは、できれば伯父の件を人に話したくないと考えています。しかし奉太郎が“時効”という言葉を使ったことで、その考えに若干の揺らぎが生じます。依然として伯父のことを人に話したくはない。しかしこのままでは……。彼女は決意します。

2012-05-19 22:28:23
かおるさとー @kaoru_sato

“時効”というのは、3話の「歴史的遠近法の彼方で古典になっていく」につながる話ですね。いつの日か、千反田さんの現在の日々も、古典になっていくのでしょう。しかし、そのままさせるわけにはいきません。

2012-05-19 22:35:04
かおるさとー @kaoru_sato

ちなみに原作では、二人が協力する過程を、実にあっさりと流しています。これは奉太郎一人称視点の文章がそうさせているのですが、千反田さんの心情がわかるアニメでは、この過程が、短い展開の中でも丁寧に表されています。すばらしいです。

2012-05-19 22:38:18

日が改まって検討会の当日です。
二人の会話にこんな深い意味があったとは気がつきませんでした。

かおるさとー @kaoru_sato

Aパート。千反田邸へと自転車で向かう二人。このときの会話は、福部里志という人間の内面を知るにはとても重要な場面なので、録画している方は観返してみるのもいいと思います。高校生らしくない会話だと思うかもしれませんが、これは里志が自分のことをよくわかっているからこそ出てくる言葉です。

2012-05-19 22:44:06
かおるさとー @kaoru_sato

もう少し、里志について。千反田邸に入る前、それから入った後、里志の行動や振る舞いの端々に、実に彼らしい部分が見え隠れしています。これは前回のひまわりにも通じる話ですが、彼は自分の冗談や言動がすべったりスルーされたりしても、特に気にしません。なぜなら、“こだわらない”から。

2012-05-19 22:48:46
かおるさとー @kaoru_sato

これに関して、ひょっとしたら里志をテンプレートな三枚目キャラ、お調子者キャラだと認識している人もいるかもしれませんが、それは違います。絶対に違います。もしそう見えるなら、彼がそう見せているだけです。三枚目を演じている、といえば伝わりやすいでしょうか。

2012-05-19 22:52:36
すぃーく @airo_ny

@kaoru_sato じゃあ「お調子者な好青年」は表現を変えたほうがいいですね。

2012-05-19 23:01:04
かおるさとー @kaoru_sato

@broken_tree_L 私としては、その表現でもかまわないとは思いますが、厳密には違うでしょうね。里志はお調子者のように振舞うのが自分に合っていると考えて、そうしているだけですから。中学のある時期までは違ったみたいですが。

2012-05-19 23:04:47
かおるさとー @kaoru_sato

説明するのはちょっと難しいですが、薔薇色の話から、里志は確固とした自己を持っていると読み取れます。今後、彼の内面がさらに深く描かれることになりますので、彼が複雑なパーソナリティーを持っているということだけは覚えていてください。ちなみに私、里志のことは好きですよ。

2012-05-19 23:01:29

さて、いよいよ4人での検討会です。

かおるさとー @kaoru_sato

今回のメイン、検討会。各自が調べてきた資料を基に、4人がそれぞれで45年前の仮説を立て、それに対して検討していくという話です。これはテキスト・クリティークと呼ばれる手法で、歴史的な書物や資料に対して、さまざまな角度から真偽や詳細を検討していきます。

2012-05-19 23:13:35
かおるさとー @kaoru_sato

このテキスト・クリティークを『日常の謎』ジャンルで扱った代表的な作品が、北村薫さんの『六の宮の姫君』で、〈円紫さんと私〉シリーズの4作目にあたります。芥川龍之介のある手紙を読み解く話といえばわかりやすいでしょうか。読書好きにはおすすめです。

2012-05-19 23:23:38
かおるさとー @kaoru_sato

話がそれました。今は『氷菓』ですね。4人が持ち寄った資料は、実は3話までにある程度出てきています。まず千反田さんの資料「氷菓二号」は3話のBパート後半、里志の資料「神高月報」は3話に出てきた壁新聞部の発行紙、奉太郎の資料「神山高校五十年の歩み」は2話の図書館の謎で出てきた本です。

2012-05-19 23:31:53
かおるさとー @kaoru_sato

摩耶花の資料「団結と祝砲」は前回までの話には出てきませんが、これは実は摩耶花が図書委員の特権を利用して、昔の漫研や他の部のバックナンバーを漁っているときに発見した資料なのです。アニメでは図書室で見つけたとしか言ってないので、実際にどういう経緯があったかはわかりませんが。

2012-05-19 23:37:19
かおるさとー @kaoru_sato

資料と仮説を提示する度に、4人は場所を変えてますが、原作にはない場面です。ていうか千反田邸の描写自体があまりないので、原作ファン的にはアニメ化万歳です。もちろん、おにぎりも。

2012-05-19 23:42:15
かおるさとー @kaoru_sato

千反田さんのおにぎりを握るシーンは、スタッフの気合いが伝わるシーンです。リズムをとって握ると形が整います。ちなみに私は三角おにぎりを握るのがどうも苦手です。別にいいじゃない形くらい!

2012-05-19 23:47:03
かおるさとー @kaoru_sato

で、このとき奉太郎が千反田さんに軽く視線をよこすのがいいですね。意識しているのでしょうね。

2012-05-19 23:49:59