ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/05/30

@tofuhamburg

彼女は昔から裁縫が上手だった。パッチワークも得意で、手芸部の顧問が舌を巻くほどだったという。そんな彼女だから周りは皆、彼女がその道に進むものと思っていたのだが、卒業時の寄せ書きに書かれた彼女の将来の夢を見て、驚きながらも妙に納得してしまった。『外科医になりたい』 #twnovel

とおる7th @windcreator

複雑なように見えても、実に簡単なことなんです。先生の口癖。授業でも、補習でも、実に簡単なことなんです。それは魔法の言葉。先生が黒板に白いチョークを走らせると、たちまちに実に簡単なことになってしまう。xもyも、実に簡単。なのに今日も、私の気持ちを解ってはくれない。 #twnovel

onai shigeo @onaishigeo

#twnovel もう若くはないから春は売れない。彼女はそうして秋を売ることにした。路上のフリーマーケット。立ち寄る人がみな同じ事を聞く。「春はないの？」売り物になるのは春だけなんだね。「秋は身の上話が長いから敬遠されるんだよ」隣の人が教えてくれた。どうせ何もない春だったのにな。

七歩 @naholograph

仕事が辛すぎるので、辞めて夢の中で暮らすことを決めた。夢を本拠地にしたとはいえこの身は現実。少なからずお金がかかる。そんなある日、夢の中で出来る仕事を紹介された。夢で稼いで現実で使う。結構辛い仕事だけれど、就職氷河期の夢の中だし仕方ないよね。救いを求め俺は眠る。#twnovel

おこげ @okoge_ver2

『嬉しい』『悲しい』『タスケテ』『実はさ……』沢山の吹き出しが落ちている。行き交う誰もがそんな吹き出し達には目もくれず、踏んだり跨いだりしながら通り過ぎて行く。こっそり一つの吹き出しの脇に可愛い人形を置くと、途端に通りすがりの観客達は人形に拍手を贈った。 #twnovel

catroll @catroll

#twnovel 訊ねてきた男は国連の職員だと名乗った。「いろいろと調査させて頂いた結果、あなたをミスターアベレージと認定します。身長、体重、体脂肪率、足のサイズ、視力、虫歯の数、年収、どれを取って世界平均なのです。これで半分女性なら完璧なのですが…」「あら、心は女ですわ」

@ammamariaofdgat

twnovel 魔女の水晶に映ったのは、宇宙空間で嘆き続ける一人の男の姿だった。「これは？」「永遠の命を望んだ男の末路さ」「どういうことだ？」「地球が滅亡してただ一人宇宙空間に放り出されたのに、死ぬに死ねないのさ」 #twnovel

たくわん @takuwan_takusan

町にワニが出たと聞いて猟銃片手に飛び出した。そして今まさに鞄屋の主人に襲いかかろうとしていたワニの脳天を俺は迷わず撃ち抜いた。ワニは遺言をした。「人間になりたがっている彼女に、俺の革で作った鞄をプレゼントしてやってほしい」 娘の名前も住所も俺たちにはわからない。 #twnovel

miecha @miechorz

#twnovel 観覧車が脱走した。「海に行きたい」というゴンドラの嘆きを聞き、土台がホイールの留め金を外したからだ。ホイールはゴンドラを引き連れ道路をひた走り、夕日に照らされた海へ。そのあまりの美しさに沖へ突撃し、身を沈めて動きを止めた。今、ゴンドラでは魚が愛を語り合っている。

hypo- @hypohyphen

#twnovel 素晴らしい庭だった。庭全体が五月を歌っているみたいだ。一瞬圧倒されて立ち止まったが、おそるおそる進む。泥の塊がポーチの階段で乾いている。見上げるとポーチの屋根に燕の巣があった。古い巣の跡がいくつも残っている。あるじは意外とおおらかな人かもしれない。だといいけど。

碧 @mimimdr

東京のひよこは遂に東京を脱出する。初めての飛行機に乗り、地方民に東京の素晴らしさを布教するのだ！だがそこには博多のひよこと名古屋コーチンがいた。このパチもん！お前こそ！殴り合いの末ひよこ達には友情が芽生え、今や３羽一緒にニワトリになれる日を夢見ている。#twnovel

ひらばるまなぶ（平原学）＠もの書き @chocolatesity

優柔不断が風邪で寝込んでしまった。お陰でその日の作業は悩む間もなく着々進み、会議に於いても全て即決。毎日深夜に渡る仕事が定時で片付いてしまった。「困った残業代稼げない」「家で妻にこき使われる」そんな苦情が留守電に殺到し、明日は出勤すべきか思い悩む優柔不断だった。 #twnovel

すわぞ @suwazo

#twnovel 「止めて」ふいに少女が言った。馬車が止まる。少女は首をふり美しく結い上げた髪を乱暴にほどいて、馬車を降りる。外に老婆が立っていた。「いいのかい」「もっとすべきことがある気がするのよ」少女はガラスの靴を老婆に返す。そうして裸足で歩き出す。城でも家でもない方向へ。

@tofuhamburg

モグラ「空の星とは大層綺麗なものらしい」ミミズ「地上の花はとてもいい香りがするそうよ」セミの子「夏が来たらボクが見てきて教えてあげるよ」「それは楽しみだ」ふたりはセミの子が戻ってこないと知っていました。それでも見えない目でセミの子を愛おしそうに眺めていました。 #twnovel

二月大笑 @unpeu_G

某ゆるキャラの中の人だ。予算があまりにも少なくて引きこもりの僕が選ばれた。一石二鳥だとか何とか。着ぐるみの中に入っているとみんな笑顔を向けてくれる。写真を撮ろうと誘われる。時々女子にも抱きつか…ゲフン。もっとみんなを喜ばせたい。すごく久しぶりにそう思った。 #twnovel

橘　颯 @so__w

近頃はパッケェジばかり拘って、中身と云えば砂糖を其の儘入れている様な按配のモノが多過ぎる。角砂糖やらなら可愛げもあろうが、精製もされておらぬ粗悪品が殆どだ。其処に複雑な風味など到底有りはせぬ。ならば包装を解く迄も無い。蟲に喰われるが良かろうよ。横たう婦に囁いた。 #twnovel