Tポイントと公共図書館の公共性は共存し得るのか

読書の秘密が守られ、人々が自由に資料に接することの意義をその基盤としてきた公共図書館の公共性を揺るがせにしないだろうかというdellganovさんのTweetとその後のやりとりをまとめました。
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新出 @dellganov

利用者の同意に基づき、図書館の利用履歴・読書履歴を提供するかわりにTポイントを付与するという「サービス」が武雄の新構想では取りざたされている。利用者の同意があれば、選択肢が増えて良いという考え方がある。私は、公共図書館がこうした「サービス」の場を提供するのは不適切だと考えている。

2012-06-03 22:03:08
新出 @dellganov

(なお、利用履歴を図書館システム内にのみとどめて、レコメンドや自分で読書履歴を確認したり、公開したりするサービスは、図書館サービスの範疇で実現可能であり、今回問題にすることではない。)

2012-06-03 22:03:22
新出 @dellganov

Tポイントは換金可能であり、利用者がCCCに利用・読書履歴を提供する誘因がTポイントの付与にあるとしたら、これは実質的に利用者がCCCに利用・読書履歴を売っているということになる。(カードを1枚にすることは履歴の提供とは無関係に可能である)

2012-06-03 22:03:35
新出 @dellganov

わかりやすく言えば、図書館で本を借りると「その履歴を○円でお売りいただけませんか?」と言われるのと同様だ。一度カードを作ればずっと履歴が売られるという点では、Tポイントカードの方が明示的でなくたちが悪いとも言える。

2012-06-03 22:03:46
新出 @dellganov

履歴を渡さずTポイントをただ付与するだけなら問題はない(出版サイドからは批判が出ている)。しかし、これが取引になると、公共図書館が利用・読書履歴を売り買いする場を提供しているということになる。これの何が問題だろうか。

2012-06-03 22:03:55
新出 @dellganov

(公共)図書館(員)は、読書の秘密を守ることは思想の自由及び表現の自由を守ることだと考え、これまで努力してきた。これは国際的な図書館(員)の共同体が守ってきた価値だといえる。

2012-06-03 22:04:04
新出 @dellganov

図書館がその施設内において、利用者と特定企業が読書履歴を売買する場を提供することは、読書及び図書館利用の秘密は換金可能であり、そしてその換金が「サービス」であるという考え方を図書館自身が支持するということである。

2012-06-03 22:04:16
新出 @dellganov

それは、読書の秘密が守られ、人々が自由に資料に接することの意義をその基盤としてきた公共図書館の公共性を揺るがせにしないだろうか。

2012-06-03 22:04:30
新出 @dellganov

本や雑誌を買えるのはいい。コーヒーや食べ物を売るのはむしろやった方がいい。図書館グッズも文具も売ればいい。しかし読書履歴を売れる場を用意することがサービスなのだろうか。

2012-06-03 22:04:38
新出 @dellganov

私たちは読書の秘密を断固守ります。ただし、それを企業に売りたい方には売る手段も用意します。という姿勢が、長期的には読書の秘密を守ることを困難にし、履歴を提供したくない人々がそうした選択肢を取ることが難しいような状況に陥ることはない、と言い切れるだろうか。

2012-06-03 22:04:46
新出 @dellganov

たとえば読書記録を共有したいというニーズは実際にあり、ウェブ上でのサービスもある。そうしたサービスを図書館が提供することはありうるように思う。とすると、やはり履歴を企業活動に利用するために売るというところに私は引っかかっているのだろう。

2012-06-03 22:04:55
新出 @dellganov

公共図書館で、「その履歴を○円でお売りいただけませんか?」と言われるのは醜悪だというのは個人的な感情であって、その是非を決めるのは住民ひとりひとりであるという意見が当然あるだろう。

2012-06-03 22:05:03
新出 @dellganov

公共図書館は税金を払っているから当然に消費できるサービスではない。自治体が社会教育施設として一定の目的を果たすことを目指して設置しているものである。その図書館の目的とこうした「サービス」が整合的であるかが問われるだろう。

2012-06-03 22:05:15
新出 @dellganov

例えば経済的基盤の弱い子どもなどの層ほど、履歴を売る誘因は強くなるだろう。(それがTポイントカードの導入理由でもあるようだ。それは、露骨に言えば10代の住民を金(ポイント)で釣っているということである)

2012-06-03 22:05:23
新出 @dellganov

(こういうことを言うと、それは図書館サービスの消費主義化を推し進めてきた「貸出至上主義」が…という批判が出るだろうが、とりあえずはそれは措く。私は高踏的な路線を継承していれば、住民の選択の名の下の市場化が避け得たとは考えていない。現に市長はより価値的な選書がお好みのようだ)

2012-06-03 22:05:34
新出 @dellganov

結局は、図書館(自治体)がどのような「価値」にコミットするかだろう。利用者の「選択肢」を増やしているのだから、選ぶのは利用者で図書館は価値判断しない、と言うかもしれないが、そのような「選択肢」をコストをかけて用意するという意思決定の前に、当然価値判断がある。

2012-06-03 22:05:46
新出 @dellganov

当たり前のことだが、利用者は私的に自分の個人情報や読書履歴を売買できる。公共図書館がその場を提供することは適切でない、と私が考えるだけであって、違法行為でもないだろう。また、こうした考え方は利用者の「選択肢」を奪うパターナリズムだという批判もありうる。

2012-06-03 22:05:59
新出 @dellganov

もちろん最終的には自治体が住民の支持を得て判断することだ。しかし、専門職集団としてそうした施策に批判的な価値感を共有し、意見を述べることには一定の意味があると考える。(終)

2012-06-03 22:06:07
わっくんぱぱ@「市民に銃口を向けている場末の図書館学者」「シーライオニングお断りします」 @wackunnpapa

いやさあ,それ以前に公共図書館でTカードを使えるようにするのって,一私企業に対する地方自治体による便宜供与でしょ? 元々の貸出カードとの併用が認められるとしても,Tカードの1社独占状態であることに変わりはないわけだから。併用が認められても,便宜供与の問題は避けようがないでしょう。

2012-06-03 22:10:48
Kato, Takuya @leighbhrogan

@dellganov ここは相手から反論を受ける可能性がある部分。読書の嗜好が統計に従うという前提に立てば、レコメンドはビッグデータを用いるほうが精度が断然上がり、いち地方図書館の履歴ではまったく太刀打ちできなくなるから。

2012-06-03 22:11:38
新出 @dellganov

@wackunnpapa 公募して、ポイントサービスを提供する各社のサービスを見極めて最も優れた一社を導入するというプロセスを取ればいい、ということになるのでは? もちろん選択肢が多い方がいい、という議論は延長線上にありえますが。

2012-06-03 22:12:19
新出 @dellganov

@leighbhrogan でも図書館サービスの枠内でレコメンドできるのは、基本的に自治体の図書館の蔵書であまり精度が上げにくいという点と、現在のAmazonのレコメンドもとても精度が高いとは言いにくいのですが。

2012-06-03 22:16:25
新出 @dellganov

@leighbhrogan 現実には、レコメンドの精度を求めてビッグデータに履歴を渡してるTポイントカード利用者っているのかなー、と。CCC側もポイント付きますよ、とPRしているわけで。

2012-06-03 22:17:57
わっくんぱぱ@「市民に銃口を向けている場末の図書館学者」「シーライオニングお断りします」 @wackunnpapa

@dellganov 現状,公募になってないじゃないですか(^^;)。随意契約ですから。それと,どなたかがおっしゃられていたように,ポイントの原資が結局税金というのは,鳥取の震災の時に話題になった「個人の財産の形成に資するのはダメ」にあたりはしませんか?

2012-06-03 22:19:17
新出 @dellganov

@wackunnpapa つまり、ポイント付与は公募ならばよいということでしょうか。また、ポイント分はCCCの持ち分という形にすることは可能でしょう。

2012-06-03 22:22:44