リターン・ザ・ギフト #2

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「で、このゾンビー野郎の願い事をきいてやるってのか、先生は」「イヒヒヒヒ、みすみす廃棄処分などするものですかねェ……」「コストもかかっているんですのよ、リストレイント=サン」「その無駄金を俺のサラリーに上乗せしろよ……俺の方が役に立つ」「その結論は性急故に採用しないネェ」 25

2012-06-05 14:49:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「身体を治すってのがピンと来ねえんだな」とリストレイント「腐って落ちるばかりだろう。所詮は死肉」「イグザクトリー、なにしろジェノサイドは初期の実験体ですわ」フブキがくすくす笑った。リー先生が答える。「ゆえにこの古城の研究施設だねェ。ジェイキ博士は偉大なる科学者だったのだ」 26

2012-06-05 15:00:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

リー先生が語った。「彼は電子戦争以前、さらに前、20世紀の科学者だ。体系化されぬ異端研究であったが、スポンサードされていたねェ。今の今まで、こうして人知れず秘匿されていた……彼は何事も為す事無しに悲劇めいて没したが、私には彼のノートとネクロ電解槽が是非とも必要なのだネェ」 27

2012-06-05 15:09:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そうか。よくわかった」リストレイントは言った。リー先生は声をやや荒げた「わかッていないねェ!君は今、どうでもよく思ったネェ?」「絶対そうですわ」「……」「いいかね?君にも恩恵があるかも知れないのだ、ジェイキ博士の研究は!ニンジャソウルに関わる身体強化の研究だネェ!?」 28

2012-06-05 15:33:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「わかるわかる!」リストレイントが遮った「だがその代償で、俺がそこの役立たず同様ゾンビーになるんだ。俺は詳しいんだ。お断りだ。サラリーを上げろ」「その発言は君の私情が多分に含まれている故、採用しないねェ。ゾンビーは役立たずでは無いねェ!だが君はゾンビーにならないねェ」 29

2012-06-05 15:42:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

一行は廊下の突き当たり、鋼鉄の門に辿り着いた。リストレイントが舌打ちし、ニンジャ筋力で押し開く。「イヤーッ!」錆びた門が嫌な音を立てて開いてゆく。門の中はがらんとした円形の広間だ。「イヒヒヒーッ!さあひと仕事!」リー先生が駆け込み、床のニンジャ十二芒星を示した。「どうぞ!」 30

2012-06-05 15:49:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

リストレイントはそこまで歩いて行き、拳を床に向けて振り上げ、打ち下ろす!「イヤーッ!」カワラ割り!ニンジャ筋力の直下打撃を受けた床は轟音とともに崩壊!「イヤーッ!」リストレイントはバック転して下がり、落下を回避した。ニンジャ十二芒星の部分だけ床が意図的に安普請なのだ! 31

2012-06-05 15:53:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アーン、ちゃんと壊さず開ける方法がありますわ!開けたり、閉めたり」フブキがノートをめくって身悶えした。「そんなもの、構わないネェ!よくやったリストレイント=サン!」壊れた床の下は狭い竪穴になっており、螺旋階段が這う。リー先生はジャンプして階段に飛び降りた。「イヒヒーッ!」 32

2012-06-05 15:57:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「こいつは俺が運ぶのか」リストレイントはジェノサイドの台車を指差した。フブキは頷いた「勿論そうですわ」そして、壊れた床から階段へ飛び移った。「リー先生!おイタなさらないで!暗くて危ないですわ!いけませんわ!」「イヒヒーッ!」リストレイントは台車を蹴った。 33

2012-06-05 16:06:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……「イヤーッ!」「グワーッ!」リストレイントは台車を階段へ投げ落とし、自らも飛び移った。「イヤーッ!」螺旋階段は正体不明の粘液で汚れている。リストレイントのニンジャ嗅覚は、その粘液がさほど古くない事を感じ取った。「先客がいたようだぜ、先生」「何だと!」下の闇から狼狽した声。34

2012-06-05 16:11:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「本当か!由々しき事だ。気配はあるかね!」「……今は無い」「心配だ!心配でならない!不粋なトレジャーハンターなどがもし、博士の貴重な研究を、それこそガラス玉か何かと間違えて持ち帰ったり、施設を荒らしたり、そんな事があれば、そんな……アーッ!」「きっと大丈夫ですわ」とフブキ。35

2012-06-05 16:13:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「先程の床の仕掛けを、開けたり、閉めたり、したという事ですもの。紳士的な殿方に違いありませんわ」「くだらん事を!……さあ着いたぞ。リストレイント=サン!扉だ。施錠されている。錠を壊したまえ!」リストレイントは台車を引きずりながら二人に追いつき、ドアノブの錠を破壊した。 36

2012-06-05 16:16:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヒヒーッ!」リー先生は真っ先に飛び込もうとしたが、フブキが後ろから抱きついて留めた。「いけませんわ、危険があったら……まずリストレイント=サンに」彼女は豊満な胸でリー先生の頭を挟みながら咎めた。「そんな危険は無いんじゃないのかねェ?まあいい!頼む!」「……アイ、アイ」 37

2012-06-05 16:34:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

リストレイントは台車を引きながらエントリーした。ブルズアイ。そこはリー先生の見たて通り、軍用施設めいた地下ラボラトリーであった。リストレイントは数秒、警戒した。「……いねェよ」口を開いたのは台車のジェノサイドだ。「いねェ。ここを使った奴は、もう殺した」「何?」「早くしろ……」38

2012-06-05 16:39:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ジェノサイドの混濁した意識は、つい先日の激しいイクサの記憶を呼び戻しかけた。イヴォルヴァーと名乗ったニンジャを。イヴォルヴァーはこの古城から力を見出し、力によって歪められた者らで軍勢を組織した。彼の力の用い方は誤っており、結局それが彼自身を破滅せしめたと言えよう。39

2012-06-05 16:46:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ジェノサイドの視界に、ソーマト・リコールめいて、イクサの光景が去来する。ニンジャ達……夜空……あの……守ろうと……その記憶も曖昧に霞み、損傷した映画フィルムめいて歪み、夜の礼拝堂、神父の言葉に戻ってゆく……いや、ユリコ……?「素晴らしい!実際素晴らしい!」リー先生が叫んだ。 40

2012-06-05 16:56:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「なんたるヒョウタンからオハギ!よく整備されている。その先客とやらかねェ?」リー先生はラボラトリーを見渡した。手枷、足枷のついたベッド、遠心分離機やモーター類を初めとする機材群。「なんたる事!近代的な機材も!ネオサイタマと比較すれば当然カスめいているが……」 41

2012-06-05 17:07:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フブキがパネルを操作し、奥の照明も点灯した。「アーッ!まさに!」ラボラトリー内を駆け回っていたリー先生は奥のガラス張りの個室めがけ三段ジャンプし、張り付いて中を覗き込む。「ネ、ネクロ電解槽!完全な形ではないか?よくぞやった!そしてよくぞ事前に邪魔者を排除した!ジェノサイド!」42

2012-06-05 17:14:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガラス張りの個室には、巨大な水槽が鎮座している。ガラスには「重態」「死ぬ」「達者と共に一緒」「飲食厳禁」「体操第一」といった色褪せた警告文が貼られたままだ。水槽には禍々しい大蛇めいたパイプ群が接続され、真空管を満載した有機物めいた奇怪な非UNIXシステムが存在を主張している。43

2012-06-05 17:21:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「フブキ君、早急に準備だ!」「勿論ですわ先生」フブキはネクロ電解槽のガラス個室にエントリーし、実際アンティークめいたダイヤル装置類を検証し始めた。「心配も問題も無いねェ、すでに博士の周辺論文等については集めに集めてある!おお、そうだ!どこだ!絶対にこのラボにメモが……」44

2012-06-05 17:40:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「こいつが、それらしいな」リストレイントは鉄製の机の引き出しを破壊し、金属の表紙でロックされた書物を取り出した。「それだ!」リー先生は素早く書物を受け取り、床の上に這いつくばってページを高速でめくり始めた。リー先生の肩越しに垣間見える冒涜的図画とヴォイニッチ写本めいた暗号文!45

2012-06-05 17:44:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ア、アアーッ!こんなにも!こんなに!」リー先生は小刻みに痙攣しながらページを繰り返し高速でめくり続ける。「まさにこれだ!何という事だ!破壊されずに、よくぞ!」「俺は実験体にならんぞ」リストレイントが腕組みして言った「全部そっちのゾンビ野郎でやれ」「そうなのかね?まあいい!」46

2012-06-05 17:50:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

リー先生の黒目が左右別々に激しい速度で動き、文書を高速解析してゆく。持ち前の天才的頭脳をさらに脳改造によってブーストした彼の頭脳が熱暴走寸前にまで回転!「彼はニンジャソウル憑依者の肉体強化現象に着目し、人工ニンジャ兵器の量産を目論んでいた!愚かな夢だ!だが副産物が重点!」 47

2012-06-05 17:59:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

リー先生は早口で話し続ける。思考の整理にそのプロセスが必要であるかのように!「ネクロ電解槽に被検体を投入し、特定負荷環境下でケオス周波震動を重点!これによりニンジャソウル憑依時の諸現象をエミュレート重点!いいですか、ケオス周波数算出がこれまでのヨクバリ計画でも非達成重点!」48

2012-06-05 18:22:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

リー先生の目が灰色になった。ぐるぐると黒目が高速で動き、残像めいて白と黒が混ざって見えるのだ!「当然被検体は死んで間もない肉体、あるいは死んでなおニューロンの働きを保つアアーッ!ジェノサイド!死んではいけないぞ!リストレイント=サン!早くジェノサイドを!」「アー……」 49

2012-06-05 18:24:32