猫と少女とバラの物語 #twnovel

不定期で呟いていた連作モノTwitter小説まとめです。 この物語がどこから始まり、どこへ向かおうとしているか、作者自身にもまだわかりません。 何となくでも、楽しんで戴ける方がいらっしゃいましたら嬉しいです。
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ひらばるまなぶ(平原学)@もの書き @chocolatesity

「何かをしなきゃいけない」呟く猫。「何をしようって言うの?」尋ねる少女。「わからない。決して今の自分には想像も出来ない、大変な困難に対処しなきゃいけない」「覚悟はある?」「わからない」溜め息を吐く少女。「でもしなきゃならないのね」猫は頷き、二本足で去って行った。 #twnovel

2012-05-09 08:00:48
ひらばるまなぶ(平原学)@もの書き @chocolatesity

少女はいつかの喋る猫を見つける。「また会ったわね。大分傷だらけだけど喧嘩でもした?」「ちょっとね」「『自分には想像も出来ない、大変な困難』?」「わからない。これよりもっと酷い困難が待ち受けている気もする」「また、わからないのね」猫は頷き、再び二本足で去っていく。 #twnovel

2012-05-21 20:05:07
ひらばるまなぶ(平原学)@もの書き @chocolatesity

少女はまた、ボロボロの喋る猫と出会う。「どうしたの?」寂しげなその横顔に尋ねるが、猫はただ俯く。「黙っててもわからないよ」猫はため息を吐き、「言葉にしないとわからないなんて、面倒臭い生き物だな人間は」「そんなの、お互い様でしょう」その言葉に、猫は少しだけ笑った。 #twnovel

2012-05-25 21:01:40
ひらばるまなぶ(平原学)@もの書き @chocolatesity

「戦ってくる」喋る猫は少女に言う。「相手は誰?」「顔に傷のあるうさぎ」ちゃんとした答えに、少女は少し驚く。またどうせわからないと返してくると思ったのに。「無茶しないで。晩御飯用意して待ってる」「いらない」「あら、折角今夜はサンマ焼くのに」「…いる」猫は答え直す。 #twnovel

2012-05-27 22:10:02
ひらばるまなぶ(平原学)@もの書き @chocolatesity

「また来たのか」顔に傷のあるうさぎは、二本足で歩く猫に言う。「お前のやってる戦いとは、単なるカッコツケだ。なぜわからん」「それを決めるのは僕自身だ。対戦相手に諭されるものじゃない」うさぎはため息を吐き、剣を抜く。「相当頑固な奴だな」「お互い様だろ」猫も剣を抜く。 #twnovel

2012-05-28 22:01:22
ひらばるまなぶ(平原学)@もの書き @chocolatesity

「また負けたの?」傷の手当てをしながら、少女は尋ねる。「客観的にどう見えるかは関係無いよ。僕らの戦いの勝敗を決めるのは、僕ら自身の気持ちだから」猫は言う。「何それ、負け惜しみ?」「そう聞こえるかもしれないけど」消毒薬が痛むのか、猫は険しく表情を歪めながら答える。 #twnovel

2012-05-29 20:00:44
ひらばるまなぶ(平原学)@もの書き @chocolatesity

「けれど気持ちは、客観的な結果より大事だ」消毒で痛む腕をふうふうしながら、猫は言う。「僕らは心で生きてる動物なんだ。ストイックに事実だけ受け止めて生きるなんて出来ないし、出来たとしても単に自分の気持ちを偽ってのことに過ぎない。それは生き方としては卑怯なだけだよ」 #twnovel

2012-05-29 20:05:05
ひらばるまなぶ(平原学)@もの書き @chocolatesity

「やっぱり負け惜しみにしか聞こえないけど」少女に言われ、猫は少し困った顔になる。「どう言えば負け惜しみにならないかな」少女は微笑み、猫を撫でた。「別にいいじゃない、負け惜しみで。あなたが自分の気持ちに正直なのはよくわかったから」「ありがとう」少しだけ猫は笑った。 #twnovel

2012-05-29 20:10:06
ひらばるまなぶ(平原学)@もの書き @chocolatesity

「この程度の技でそのザマか。無様だ。一流の剣士が相手ならこんなものじゃ済まん」顔に傷のあるうさぎが言う。剣を受けた猫は、傷口から鮮血を溢れさせつつ喚く。「黙れ!無様で悪いか!僕は唯まっすぐ生きてるだけだ!」「まっすぐなだけでは強くなれん」うさぎは尚も切りかかる。 #twnovel

2012-06-07 08:00:16
ひらばるまなぶ(平原学)@もの書き @chocolatesity

「自惚れるな猫」顔に傷のあるうさぎは何度も猫に切りかかる。猫の手には、剣も盾も握られてはいない。ただ攻撃を受けるのみ。致命傷は無くとも、既に体から大量の血が噴き出している。「貴様は何も正しい事などしていない。無益に傷つくだけだ。まだわからんか」猫は何も言わない。 #twnovel

2012-06-12 19:00:11
ひらばるまなぶ(平原学)@もの書き @chocolatesity

うさぎは剣を地面に突き立てる。ゼイゼイと粗い息を漏らす。血だらけの猫は既に死んでいるようにも見えるが、まだ息はある。うさぎは言う。「いいのか…今のお前は未だ何者でもない。何者にもなれるまま死を選ぶのか」「…それが僕の人生なら」「愚か者!」うさぎは唾を吐きかける。 #twnovel

2012-06-12 19:05:05
ひらばるまなぶ(平原学)@もの書き @chocolatesity

瀕死の猫の元へ少女がやってくる。「…何て馬鹿なのあなた!」少女は猫の頬を叩く。少女の白い肌が猫の血で染まる。そして少女は猫を抱き、おいおいと泣き始める。「ごめん…僕が間違ってたのかな」猫の言葉に、少女は何も言わない。ただ泣き続ける。 #twnovel 遠くの空に、虹が輝いていた。

2012-06-12 19:10:04
ひらばるまなぶ(平原学)@もの書き @chocolatesity

包帯だらけの猫はベッドの上で目覚める。隣で少女が寝息を立てている。猫は、手足の感覚が無い事に気づく。あの戦で失ったのだ。もう剣も握れない。歩くことも。それでも心臓は規則正しく活動を続けていることを知る。 #twnovel 少女は眠りながら猫を抱く。今はまだ、その温もりの中にいる。

2012-06-13 22:58:21
ひらばるまなぶ(平原学)@もの書き @chocolatesity

手足を無くした猫は、顎で床を擦り、体を捩らせながら、少女の眠るベッドから抜け出す。清潔なフローリングの床が、包帯から滲み出す血で汚れるのを申し訳なく思いながらも、体を引きずり玄関へ辿りつく。 #twnovel 突然扉が開く。外には傷のあるうさぎが立っている。「どこへ行くつもりだ」

2012-06-14 00:10:44
ひらばるまなぶ(平原学)@もの書き @chocolatesity

「お前は手足を無くした。代わりに幸福を手にした。それでハッピーエンドじゃ駄目なのか」猫は黙っている。「何故だ!答えろ!」血で汚れた猫の頭を足で蹴る。猫の体は地面を転がり、砂に塗れる。 #twnovel やがて猫は答える。「わかってるんだ僕には…これで終わりじゃないんだってことが」

2012-06-14 00:16:29
ひらばるまなぶ(平原学)@もの書き @chocolatesity

「僕は物語を紡ぐ。紡ぎ続ける。例え罵られようと、蔑まれようと、無視されようと。僕が生きている限り、物語は終わらせない。それが僕の、僕の罪への償いだ」 #twnovel 「勝手にしろ」うさぎは再び度猫を蹴り、立ち去る。一度も振り返らず。彼の赤い眼から零れる涙を、猫に気づかれない為。

2012-06-14 00:23:44
ひらばるまなぶ(平原学)@もの書き @chocolatesity

少女は顔に傷のあるうさぎを訪ねる。「どうして彼を行かせたの?」涙でゆがむ表情、怒りで震える手。「ヤツが決めた道だ。俺に止る権利は無かった」「フザけるな!あなたが彼を傷つけたんだ、許さない!」 #twnovel 流れ出る血液。俺の物語はここで終わりか…それもいいやと、うさぎは思う。

2012-06-14 07:00:20
ひらばるまなぶ(平原学)@もの書き @chocolatesity

カランと、ナイフが床に落ちる音が響く。少女は自分の両手や、服に飛び散った赤い汚れを見、ただ立ち尽くしている。開いたままの口から、声にならない悲鳴が漏れている。 #twnovel 私は今、ある一つの物語を完結させてしまった。酷く哀しいのに、慰めてくれる温もりは無い。猫はもういない。

2012-06-15 21:00:06
ひらばるまなぶ(平原学)@もの書き @chocolatesity

剣を手にしたうさぎの話をしよう。 #twnovel そのうさぎは嘗て、ある城に仕える兵士だった。その国で兵士と言えば、極悪非道と恐れられていた。彼らは一切の慈悲や慈愛の感情を持ち合わせていなかった。あるのは破壊と殺戮のみ。王の命令とあらば、子どもも女も老人も、容赦なく切り捨てた。

2012-06-15 21:05:03
ひらばるまなぶ(平原学)@もの書き @chocolatesity

ある日、王の后が倒れた。国中の優秀な医者が城へ集められたが、誰にも手の施しようがない重い病だった。后は苦しみながら、青き薔薇が見たい、死ぬ前にただ一度だけでもと王に願った。王は直ぐ兵士たちに命じ、それを探させた。 #twnovel だが青い薔薇など容易に見つかるものではなかった。

2012-06-15 21:10:04