CKさんの「黒い羽の娘(仮」まとめ俺用

いいねーーーー!! とぎゃったーはじめて練習がてら俺用 2012/6/22:続編追加 2012/6/28: 続きを読む
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CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「ご主人さま、今夜のおかず買いに行きますけど何がいいですか?」 洗濯物をたたみ終わった桜田さんは買い物用のマイバッグを肩にかけ、お財布をその中に放り込む。 「親子丼かな」 「ふぇ!? 親子丼って、鶏肉と卵をおつゆでとじる方ですか? 海鮮じゃなくて?」 「海鮮じゃないほう」

2012-06-22 00:11:04
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「あぅぅ、やっぱりご主人さまは卵料理がたべたいですか?」 「うん、食べたい」 桜田さんが住むようになってから卵や鶏を使った料理はリクエストしないようにしていたが、そろそろ豚肉や豆以外からタンパク質をとりたい。 「あと2日だけ待ってください、必ず美味しいの作りますから……」

2012-06-22 00:13:09
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

結局その日の夕食は魚の煮物と冷奴だった。美味しいのだが、やはりこう肉を食べている実感が無いので物足りない。 寝る前に冷蔵庫を開けると鶏肉が入っていた。卵はどうするつもりなのだろうか? 「まさか、ねぇ」 脳裏に浮かんだバカバカしい想像を振り払い、僕は部屋の明かりを消した。

2012-06-22 00:15:55
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

そしてあの約束から二日後、僕が家に帰ると桜田さんは玄関に倒れていた。 「桜田さん!?」 「ごしゅじんさま……」 桜田さんを抱き起こす。すごい熱だ。艶やかな黒髪が汗でベッタリと額に張り付いている。 「しっかりしろ、今救急車を呼ぶから」 「大丈夫です、ご主人様」

2012-06-22 00:17:22
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「これくらい、どうってことないですからあぁっ!」 びくびくと桜田さんの体が震える。 「大丈夫なもんか! すぐ病院に……」 「違うんですご主人さま、もうすぐ……生まれるんです」 桜田さんは僕を見上げ、はかなげに微笑んだ。 え? 生まれる? 何が?

2012-06-22 00:22:50
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「もしかして……たまご?」 「はい」 桜田さんは恥ずかしそうに小さく頷いた。 「もう、すぐそこまで来てます」 桜田さんは自分の下腹部をいたわるように撫でる。 「生まれたら、一緒に食べてくださいね……?」 桜田さんは僕に抱きついて深呼吸する。

2012-06-22 00:26:55
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「すぅ……はぁ……すぅっ……」 僕の耳に桜田さんの荒い息が吹きかけられる。いやらしい、熱っぽい吐息だ。 「く、るっ……きますっ、ごしゅじんさま! ごしゅじんさまぁ!」 桜田さんは僕をきつく抱きしめ、ばさばさと背中の翼をばたつかせる。 「んっ、っくうううううっ!」 ころん

2012-06-22 00:30:32
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

硬い音をたてて、真っ白な卵が床に転がってきた。普通の卵の倍近い大きなものだ。 「はぁ、はぁ……うまれましたよ、ご主人さま……」 桜田さんは卵を拾い上げると、いとおしげに体液で濡れた殻を撫でる 「よ、よくがんばった、ね……」生命の神秘(?)に圧倒された僕はそれしか言えなかった

2012-06-22 00:35:05
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「ご主人さま……がんばったご褒美、ください」 「んっ……」 どちらからともなく、唇を重ねる。さっきまであんなにばたついていた桜田さんの黒い翼が幸せそうにゆったりと揺れる。 「よくがんばったな、えらいぞ」 「えへへ……」 桜田さんの頭をわしゃわしゃとなでる。

2012-06-22 00:44:03
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「よい、しょっと」 立ち上がろうとする桜田さんを支えてやる。メイド服もすっかり汗を吸い、皺だらけになってしまった。 「シャワーを浴びたら、すぐに夜ご飯準備しますから、テレビでも見ながら待っててください」 ぺこりと頭を下げ、桜田さんは脱衣所に消えた。

2012-06-22 00:47:38
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

シャワーを浴びおえて新しいメイド服に着替えた桜田さんは首にタオルを掛けて自慢の黒髪に残った水気を吸わせながら料理をはじめる。 とん、とん、とん。 小気味のいい音をたてながら桜田さんの握る包丁がタイムセールで半額だった鶏肉を刻んでゆく。

2012-06-22 00:51:36
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

やがてぐつぐつと鍋の煮える音とともに香ばしい出汁の香りが僕の鼻腔をくすぐった。 「あと5分でできるので、テーブル片付けてもらえますか?」 「あぁ、わかった」 一応ご主人様なんだけどなぁと思いつつ僕はテーブルの上に置かれた新聞やリモコンを片付ける。

2012-06-22 00:55:34
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「はい、おまたせしました」 桜田さんはテーブルの上にてきぱきと食器を並べていく。 豆腐とわかめのお味噌汁、漬物、そして桜田さんの卵で作った、親子丼。 「いただきます」 箸で親子丼の具を割り、ご飯と一緒に口へと運ぶ。 桜田さんは目を輝かせながらこっちの様子をうかがっている

2012-06-22 02:14:06
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

ぱくっ 「う、うんまあああああああああい!」 一口食べた瞬間、肉汁とだしととろとろの卵が口の中に広がった。 「ほ、本当ですか!? よかった……」 桜田さんはホッとした表情を浮かべる。 二口、三口。箸も口も止まらない。 「おかわり!」 「はい、すぐお持ちしますね」

2012-06-22 02:14:17
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「ふぅ……ごちそうさま。ほんとうに美味しかったよ」「ありがとうございます、頑張った甲斐がありました」 桜田さんははにかんだ笑みを浮かべる。結局勢いのまま二回もおかわりをしてしまった。 さすがに学生時代と同じくらい食べるのは無茶だったか。 「麦茶持ってきます」「あぁ、お願い」

2012-06-22 02:14:43
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「はい、どうぞ」 「ん、ありがとう」 受け取ったコップにはいった麦茶を飲むと大分さっぱりした。 「あんまりこういうの聞くのは良くないと思うんだけどさ」 食べている間ずっと疑問に思っていたことを桜田さんに尋ねる 「なんでしょう?」 「自分の卵食べるのって……抵抗ない?」

2012-06-22 02:14:59
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「んー……」 桜田さんは小首を傾げ、しばらく考えこみ、 「ないですね」 あっけからんとした表情でそう言い切った。 「言い方は悪いけど、子供を食うようなもんじゃないの?」 「うーん、私は美味しく食べてあげて次の命の材料になってもらうのが一番の供養だと思います」

2012-06-22 02:15:11
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「なるほど」 確かに一理ある。というか今の言葉ってものすごい深い話じゃないんだろうか。 「だから、いつもこうやって料理して食べちゃうんです」 「そうだったのか……知らなかった」 "羽根つき"の文化はやっぱり変わっている。 「今度は、オムライスにしますね」

2012-06-22 02:15:20
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「オムライスかぁ」 「嫌いでしたら茶碗蒸しもできますよ」 そうか、茶碗蒸しも卵料理か。 「いや、オムライス好きだけど最近食べてないなって」 「じゃあがんばって作りますね」 桜田さんの笑顔の花が咲いた。 (つづく)

2012-06-22 02:16:55