【走れエロス】 第三部

【走れエロス】 第二部 http://togetter.com/li/327270
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川原慶久 @Canopus_072

深夜更新 『走れエロス』 (この話しは太宰治のパロディであり、特定の人物・組織を貶める目的は御座いません。 っちゅー前置きしつつ、誰も望んでいない続きを細々と更新。

2012-06-27 01:13:26
川原慶久 @Canopus_072

[21]「私は約束を守ります。私を、三日間だけ許して下さい。妹が――妹が、私の帰りを待っているのだ。そんなに私を信じられないならば、よろしい、この市にセクスンティウスという同人作家がいます。ーー」

2012-06-27 01:14:28
川原慶久 @Canopus_072

[22] 「私の無二の友人だ。あれを、人質としてここに置いて行こう。私が逃げてしまって、三日目の日暮まで、ここに帰って来なかったら、あの友人の右腕の骨を砕いて下さい。たのむ、そうして下さい。」

2012-06-27 01:15:29
川原慶久 @Canopus_072

[23] それを聞いて官憲は、残虐な気持で、そっと北叟笑んだ。 アホなことを言うわい。どうせ帰って来ないにきまっている。この妄想バカに騙された振りして、放してやるのも面白い。そうして身代りの同人作家を、見せしめに別件逮捕してやるのも気味がいい。

2012-06-27 01:16:25
川原慶久 @Canopus_072

[24] この界隈の奴らは、これだから信じられぬと、わしは悲しい顔して、その身代りの男を社会的に葬ってやるのだ。世の中の、グレーな場所にいながら遵法者きどりの奴輩に、うんと見せつけてやりたいものさ。

2012-06-27 01:17:47
川原慶久 @Canopus_072

[25] 「願いを、聞いた。その身代りを呼ぶがよい。三日目には日没までに帰って来い。おくれたら、その身代りは、きっとまとめサイトの人気者になるぞ。ちょっとおくれて来るがいい。おまえの妹の事は、永遠に黙っててやろうぞ。」

2012-06-27 01:19:48
川原慶久 @Canopus_072

[26] 「ななな、なに、何をおっしゃる。」 「はは。社会的地位が大事だったら、おくれて来い。おまえの心は、わかっているぞ。」 エロスは口惜しく、地団駄踏んだ。ものも言いたくなくなった。

2012-06-27 01:21:09
川原慶久 @Canopus_072

[27] 竹馬の友、セクスンティウスは、深夜、万世橋警察署に召された。官憲オマポリスの面前で、佳き友と佳き友は、二年ぶりで相逢うた。 エロスは、友に一切の事情を語った。セクスンティウスは無言で首肯き、エロスをひしと抱きしめた。類友と類友の間は、それでよかった。

2012-06-27 01:23:26
川原慶久 @Canopus_072

[28] セクスンティウスは、描きかけの夏コミ原稿を目の前に広げられた。エロスは、すぐに出発した。 初夏、満天の星である。

2012-06-27 01:24:27
川原慶久 @Canopus_072

[29] エロスはその夜、終電を逃し、一睡もできず十里の路を急ぎに急いで、自宅へ到着したのは、翌る日の午前、陽は既に高く昇って、社会人たちはとっくに出勤し、仕事をはじめていた。

2012-06-27 01:29:05
川原慶久 @Canopus_072

[30] エロスの脳内に住まう十六の妹は、きのうから帰らぬ兄を心配し、寝ずの番をしていたことにした。よろめいて歩いて来るお兄ちゃんの、疲労困憊の姿を見つけて、たいそう愛くるしく驚いた。そうして、うるさく、だが可愛らしい声でお兄ちゃんに質問を浴びせた。

2012-06-27 01:31:25
川原慶久 @Canopus_072

[31] 「なんでも無い。」エロスは思わず緩む頬を見せまいと必死に努めた。 「秋葉に用事を残して来た。またすぐ秋葉に行かなければならぬ。あす、おまえと結婚式を挙げる。早いほうがよかろう。」 脳内の妹はもちろん、頬をあからめた。

2012-06-27 01:35:55
川原慶久 @Canopus_072

[32] 「うれしいか。うれしいだろう。綺麗な衣裳の資料も買って来た。さあ、これから行って、フォロワーの人たちに知らせて来よう。結婚式は、あすだと!」

2012-06-27 01:39:20
川原慶久 @Canopus_072

[33] エロスは、また、よろよろと歩き出し、部屋へ帰ってPC前を飾り、祝宴の席を調え、間もなく机に突っ伏し、呼吸もせぬくらいの深い眠りに落ちてしまった。

2012-06-27 01:40:34
川原慶久 @Canopus_072

[34] 眼が覚めたのは夜だった。エロスは起きてすぐ、Twitterのアプリを立ち上げた。そうして、少し事情があるから、明日は結婚式をする事になった、と呟いた。

2012-06-27 01:45:34
川原慶久 @Canopus_072

[35] エロスのフォロワーは驚き、それはいけない、世間は未だ君のレベルに追いついて居ない、エイプリルフールの季節まで待ってくれ、と答えた。

2012-06-27 01:46:11
川原慶久 @Canopus_072

[36] エロスは、待つことは出来ぬ、どうか明日にしてくれ給え、と更に押してたのんだ。エロスのフォロワーも頑強であった。当たり前だが、なかなか理解してくれない。夜明けまで議論をつづけて、やっと、どうにか皆をなだめ、すかして、説き伏せた。

2012-06-27 01:56:27
川原慶久 @Canopus_072

[37] 結婚式は、真昼にニコ動で行われた。新郎エロスに、あいつは神だとコメントが投げられはじめたころ、にわかもののアクセスが部屋に殺到し、ぽつりぽつりと煽りコメが増え出し、やがてプレミアム会員以外を弾き出すような混雑となった。

2012-06-27 01:56:57
川原慶久 @Canopus_072

[38] 祝宴に列席していた視聴者たちは、何か不吉なものを感じたが、それでも、めいめい気持を引きたて、重い回線の中で、プツプツ音が途切れるのも怺え、鼻歌をうたい、コメントを打った。 エロスも、満面に喜色を湛え、しばらくは、官憲とのあの約束をさえ忘れていた。

2012-06-27 01:57:57
川原慶久 @Canopus_072

[39] 生放送は、夜に入っていよいよ乱れ、ある意味華やかになり、人々は、回線の重さを全く気にしなくなった。エロスは、一生このままここにいたい、と思った。 この佳い人たちと生涯過ごして行きたいと願ったが、いまは、自分のからだで、自分のものでは無い。

2012-06-27 02:01:21
川原慶久 @Canopus_072

[40] ままならぬ事である。

2012-06-27 02:02:08
川原慶久 @Canopus_072

とりあえず、今回の『走れエロス』は此処まで。そろそろ”辻褄合わせるのが困難”になってきました。つか、いつまで続けるんだコレ。 そして川原のフォロワーさんも混乱とともに絶賛減少中♪ 何故、こうなった……何故。

2012-06-27 02:04:02