クローズアップ現代「“夢の医療”は実現するか~iPS細胞・実用化前夜~」書き起こし・ほぼ完全版 #nhk
- toshihiro36
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国谷:そうした体制づくりが、他のいろんな疾患においてもできるといいなと思うんですけれども。さて、iPS細胞で注目されるのは再生医療だけではありません。iPS細胞を使って病気のメカニズムを解明して、そしてそれの病気に効く薬の開発です。
2012-07-03 22:42:45VTRが流れます
<ナレーション> 兵庫県に住む中学3年生の山本育海君。200万人に1人という難病・FOP(進行性骨化性繊維異形成症)の患者です。FOPは遺伝子の異常で、筋肉が次第に骨に変わっていく進行性の病気です。山本君の骨の立体画像です。わき腹に20センチほどの骨ができています。
2012-07-03 22:52:14<ナレーション> このまま病気が進めば、歩くことや呼吸をすることも難しくなります。治療薬を開発するには筋肉から病気のもとになる細胞を取り出し、研究することが必要です。しかし細胞を取るために針を刺すと、筋肉が刺激され病気が進行してしまいます。
2012-07-03 22:55:56<ナレーション> 山本君がいま希望を託しているのが、京都大学の戸口田淳也教授です。iPS細胞が作られたことで、治療薬の開発に取り組みました。戸口田教授は筋肉を刺激しないように患者の皮膚から細胞を取り、iPS細胞を作りました。
2012-07-03 23:01:45<ナレーション> このiPS細胞には病気の遺伝子が入っているため、FOPの原因となる骨を作る細胞へと変わります。患者の体内で骨ができる現象が、体の外で再現できるようになったのです。健康な人の場合、骨の細胞があることを示す赤い部分はわずかです。
2012-07-03 23:08:24<ナレーション> しかしFOPの患者ではほとんどが赤く染まり、骨に変化することがわかります。戸口田教授はこの変化を抑える物質を見つければ、治療薬の候補になると考えています。実用化には時間がかかりますが、実験室の中では変化を抑える物質を見つけています。
2012-07-03 23:11:47<ナレーション> iPS細胞は日本人の2人に1人がかかる、がんの治療にも応用されようとしています。抗がん剤の研究を続けてきた、岡山大学の妹尾昌治教授です。妹尾教授はがんの原因とされるがん幹細胞を、iPS細胞から作り出したことで注目されています。
2012-07-03 23:18:56<ナレーション> がん幹細胞は次々とがん細胞を生み出します。がん細胞と違って抗がん剤はほとんど効かず、再発や転移の原因とされています。
2012-07-03 23:21:21<ナレーション> 30年にわたって血液のがん・白血病の治療にあたってきた金子安比古医師です。金子医師はがん幹細胞に悩まされ続けてきました。白血病では抗がん剤を使うと、多くの場合がん細胞が消え正常な白血球だけになります。しかし数年後、その半数の患者で再びがん細胞が増え始めます。
2012-07-03 23:28:30金子:現在持っている技術をフルに発揮しても、どうしても治らないがんが出てきてしまう。突破口としてがん幹細胞の研究があるんだと思います。
2012-07-03 23:32:25<ナレーション> がん幹細胞は人の体から取り出すのは容易ではなく、研究もなかなか進みませんでした。しかし妹尾教授はiPS細胞にがん細胞を培養した溶液を加えることで、がん幹細胞を作ることに成功しました。
2012-07-03 23:36:58<ナレーション> 実験室の中で作り出せるようになったことで、がん幹細胞の正体を探る研究も進むと期待されています。がん幹細胞を直接攻撃する物質が見つかれば、がんの再発を防ぐ画期的な抗がん剤ができる可能性もあります。
2012-07-03 23:39:06スタジオに戻ります
山中:そうですね。iPSというと再生医療をすぐ思い浮かべるんですが、もうひとつの大事な使い方はiPS細胞を道具として使って、iPS細胞で病気を再現して病気の原因を解明する。さらには薬を探すと。こちらの使い方も非常に大きく期待されています。
2012-07-04 07:34:14山中:5年前にIPS細胞ができた時には、病気のモデルを作るという使い方に関しては、FOPのような遺伝性疾患がいいターゲットであろうと考えられて、実際にFOPのような研究がどんどん進んでいるわけなんですけれども。
2012-07-04 07:38:43