世界樹の迷宮4第二地域到達短編

ゆるゆると自PT短編。
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霜野おつかい@イケナイ教アニメ化! @otukai

@sousakuTL 大いなる脅威が去った。息を潜めて様子を伺っていた仲間たちは、緊張を緩め人心地ついたように安堵の表情を浮かべる。風の音に混じり、どこか遠くで魔物の咆哮が響いた。行き慣れた平原の姿が戻ったのだ。周囲を見渡し安全を確かめ、 ふとオルグイユは苦笑する。

2012-07-07 22:48:44
霜野おつかい@イケナイ教アニメ化! @otukai

@sousakuTL 気付けば自分は剣を構えていた。こんなものあの巨大な龍にとっては楊枝にもならないだろうに。「すごかったですね……」シャリテがおずおずと切り出した。彼女もまた自身の要とも言える盾を持ち、背後の仲間を庇うようにして立っていた。「あんな龍がいるなんて聞いていません」

2012-07-07 22:53:19
霜野おつかい@イケナイ教アニメ化! @otukai

@sousakuTL すると彼女の後ろから、白衣の男がひょいと口を出す。「私達があの龍の存在を知らなかったのは当然だろう。ここは前人未到の地なのだから」「トレットは理屈くさくて嫌ですわ」はあ、とため息をつくシャリテ。まあまあ、と宥めるのはオルテナだ。彼女も構えた杖を下ろしていた。

2012-07-07 22:58:52
霜野おつかい@イケナイ教アニメ化! @otukai

@sousakuTL 「でもトレットさんの言う通り、これから私達はもっと色々な発見に出会うんだよね。なんだかわくわくしちゃうな」「オルテナは気楽でいいですわね」「えーシャリテちゃんはそう思わないの?トルナード君は?」「あ?そうだなあ」話を振られたトルナードはしばし迷ってから。

2012-07-07 23:02:13
霜野おつかい@イケナイ教アニメ化! @otukai

@sousakuTL 「そうだな、わくわくする!いつかあんな龍を俺の弓矢で撃ち落せるのかと思えばよ!」「そういった寝言はまず封じ技を百発百中にしてからおっしゃって下さいね」呆れたように肩を竦めるシャリテだった。オルグイユはそんな仲間たちのやり取りを、軽い驚きをもって見つめていた。

2012-07-07 23:06:13
霜野おつかい@イケナイ教アニメ化! @otukai

@sousakuTL 新たな大地に到達してすぐ、この世のものとは思えない咆哮が鳴り響いた。辺りの屈強な魔物たちは姿を消し、それと同時にあの龍が現れた。黄金色に輝く巨大をくねらせて、気ままに空を回遊する龍。その双眸は達観した静けさの中に、爆ぜ狂う雷雲を秘めていた。

2012-07-07 23:09:38
霜野おつかい@イケナイ教アニメ化! @otukai

@sousakuTL あれは人が触れていいものではない。そう思ったオルグイユ達は飛行船を必死に操り龍からできるだけ離れようとした。しかし龍は阻む物のない空においては王者以外の何物でもなかった。あっと言う間にオルグイユたちの飛行船の目の前まで迫って来た。彼女達は明確な死を覚悟した。

2012-07-07 23:12:17
霜野おつかい@イケナイ教アニメ化! @otukai

@sousakuTL しかし龍は飛行船には目もくれず、その隣をすり抜けて西の空に飛び去って行った。そして、今に至るのだ。歓談を始める仲間たちに混じることなく、オルグイユは息をつく。(あれは見逃したとかじゃなくて……)眼中にもなかったということだろう。今回は上手く被害を免れたが、

2012-07-07 23:13:58
霜野おつかい@イケナイ教アニメ化! @otukai

@sousakuTL 次は悠々とあの巨大に弾き飛ばされて大地に儚く墜落すること必至だろう。気を付けないと、とオルグイユは地図を取り出した。『龍に注意!』注意したところでどうにもならない時はどうにもならないだろうなあ、と思いつつ、真っ新な羊皮紙に龍の特徴や大きさなどを刻んでいく。

2012-07-07 23:16:21
霜野おつかい@イケナイ教アニメ化! @otukai

@sousakuTL (ばあちゃんも……あんな龍を見たのかな)そして、倒すことが出来たのだろうか。羊皮紙を握るオルグイユの手が微かに震える。しかしそれは先程龍と退治した時にきた震えとは、また別種のものだった。オルグイユの目は羨望、希望、そして好奇心に瞬き始めていた、

2012-07-07 23:19:39
霜野おつかい@イケナイ教アニメ化! @otukai

@sousakuTL 彼女の祖母は冒険者だった。それも、この世に名前が知れ渡るほどの剣士だった。祖母は若き頃、エトリアという街に眠る巨大な迷宮の最下層まで辿り着きその謎を解き明かしたという。彼女とその仲間四人の名は世界を駆け巡り、今もなお伝説の剣士として語り継がれている。

2012-07-07 23:24:07
霜野おつかい@イケナイ教アニメ化! @otukai

@sousakuTL 一線を退いた後は若き冒険者の育成に努めた。彼女だけでなく、彼女が指南を行った戦士たちもまた世界にあらゆる偉業を刻んでいる。別の迷宮を踏破し、新種の獣や薬草を発見したり。その系譜は今もなお脈々と続いていて、彼女の存在が世界に多大なる恩恵をもたらしたとまで

2012-07-07 23:28:43
霜野おつかい@イケナイ教アニメ化! @otukai

@sousakuTL 言われている。オルグイユはそんな祖母のことを誰よりも尊敬し、強く憧れを抱いていた。だから剣を取り、冒険者の道を選んだのかと言えば少しばかり違っていた。祖母はオルグイユに、数々の冒険譚を語り聞かせた。迷宮の奥深く、茨の奥に棲む魔物の歌姫のこと。

2012-07-07 23:30:54
霜野おつかい@イケナイ教アニメ化! @otukai

@sousakuTL 宝を求めて彷徨った果てに見たささやかな花畑。彼女が出会った冒険者達の人生など。様々なお伽話にも似た思い出話を彼女は祖母から数多く受け継いだ。祖母はあらゆる冒険を語り聞かせた。しかしたった一つだけ、彼女がどれだけせがんでも決して教えてくれなかった物語があった。

2012-07-07 23:33:40
霜野おつかい@イケナイ教アニメ化! @otukai

@sousakuTL 『世界樹の迷宮の奥には、一体何があったの?』オルグイユがそう尋ねるたび、祖母は優しく微笑み『さあね?』と誤魔化した。今際の際も祖母とオルグイユは同じやり取りを行った。祖母はしかし最期の最後にこう言った。『今度は貴女がそれを見つける番よ』世界樹にお行きなさい。

2012-07-07 23:36:28
霜野おつかい@イケナイ教アニメ化! @otukai

@sousakuTL だからオルグイユはタルシスにやって来た。祖母が踏破した迷宮とタルシスの北に聳える世界樹は、まるで異なるものであることくらいは分かっている。祖母はきっと世界樹の奥で何か途轍もない真実を知ってしまったのだろう。それは希望かもしれないし、絶望だったかもしれない。

2012-07-07 23:39:24
霜野おつかい@イケナイ教アニメ化! @otukai

@sousakuTL しかし確かにそれを見つけたのは迷宮を踏破した祖母と、その仲間達だ。オルグイユはそれを手にし、目にすることができない。資格がない。だからオルグイユは自分だけの真実を見つけるべく剣を取った。仲間を集め、冒険を求めた。そしてついに一つの迷宮を解き明かした。

2012-07-07 23:42:00
霜野おつかい@イケナイ教アニメ化! @otukai

@sousakuTL 「さあリーダー」声をかけられはっと顔を上げると、トレットが自慢の魔法薬を片手に柔く微笑みを向けていた。「いかがなさいましょう。この通り、第二の大地はどうやら一筋縄ではいかないようです。一度街に戻り他の冒険者の動向を探るか、それとも」「決まってるじゃない」

2012-07-07 23:44:38
霜野おつかい@イケナイ教アニメ化! @otukai

@sousakuTL オルグイユはにっと仲間達に笑いかける。「目指すは街じゃなくて次の迷宮だよ!ぼやぼやしてると冒険を誰かに取られちゃうもの!」その宣言にシャリテが小声でぼやくのだった。「リーダーは早死にすると思いますわ」「何よシャリテ。あなたは道も出てくるモンスターも、

2012-07-07 23:48:12
霜野おつかい@イケナイ教アニメ化! @otukai

@sousakuTL 何もかもが分り切っている迷宮を、誰かが描いた地図片手に散策したいってわけ?」「そんなの決まってるでしょう」シャリテは大仰に溜息をつき「冗談じゃありませんわ!そんなぬるい冒険じゃ、私の盾が錆びてしまいますもの!」にやりと笑ってみせるのだった。

2012-07-07 23:51:07
霜野おつかい@イケナイ教アニメ化! @otukai

@sousakuTL 「それじゃあみんな!」オルグイユは北の空を仰ぎ見る。そして指差すのは雲がかる程に巨大な大樹、世界樹だ。あの果てに、あの頂上にオルグイユと仲間達だけの冒険と宝が、胸踊るはずの真実が眠っているはずだった。待ち構えているはずだった。「行こう!世界樹の迷宮に!」

2012-07-07 23:53:46
霜野おつかい@イケナイ教アニメ化! @otukai

@sousakuTL おう!、と四人分の声を乗せ飛行船は次なる迷宮へ。「あ……でも、糸が……お金も……ない……」「総員撤退!!モンスターに注意しつつ食材集めてとっとと帰りますわよ!!」「おー……」

2012-07-07 23:56:21