放射線によるがんリスクの低線量への外挿(ICRP Publication 99)

まとめると、 「様々な科学の分野からデータに基づいて検討した結果、当時もICRPはLNTでがんリスクを評価するのが良いことで合意しました(現在も最新)」 ぐらいでしょうか。 #mGyはmSvと読み替えていただいて構いません続きを読む
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Masashi Shirabe @M_shirabe

加えて、低線量および低線量率には本質的な不確定性があるものの、放射線によるがんリスクの直接の疫学的測定は、当然、ゲノム不安定性、バイスタンダー効果、また幾つかのケースにおいて適応反応を含むすべての機序の貢献を反映しており、したがってこれらの貢献についての洞察を提供するであろう。

2012-07-12 12:36:49

(f) 動物モデルを使った実験アプローチ(5章)は、遺伝的背景やその他の線量応答関係を変化し得る要因とともに放射線量および線量率を正確に制御するのに非常に相応しく、生物学的な帰結の正確な決定を容易にする。(…略…)以上から、初期の起因事象への反応が細胞遺伝学的損傷への反応に相当すると見られる。

Masashi Shirabe @M_shirabe

この基礎の上に、機序の議論は低線量域における線形応答を支持する。すなわち、プロセスは線量率とは独立であるべきだ。なぜなら、異なる電子飛跡間の相互作用は稀だからである。実験動物におけるがん形成および寿命短縮に対する線量応答関係もまたこの予測を支持する。(…略…)

2012-07-12 12:38:09

(g) 6章は、定量的不確定性分析の形式的適用を示す。(2章で同定されたような)低線量、低LET放射線被ばくに関連するがんリスク推定の非日本人人口(本ケースではSEERレジストリに表現された人口)への適用における様々な不確定要因が不確定性分析に組み合わされる。(…略…)

Masashi Shirabe @M_shirabe

いき値の存在が実質確実であると前提されないのであれば、いき値の不確かな存在可能性を考慮する効果は、DDREFの値を不確かな増加の効果と同等であり、すなわち、いき値の存在可能性を無視して得られた結果のバリエーションとなる。

2012-07-12 12:38:52

Masashi Shirabe @M_shirabe

(h) 7章で本報告の結論が与えられる。

2012-07-12 12:39:29
Masashi Shirabe @M_shirabe

特定組織の放射線による発がんに対して低線量いき値の存在は疑わしいとは見えず、全がんをまとめてもその存在は排除され得ないものの、全体としてエビデンスは普遍的いき値の存在を支持せず、放射線防護の目的にかんがみてリスク計算にいき値の可能性を組み入れる特別の理由は無いようである

2012-07-12 12:40:16
Masashi Shirabe @M_shirabe

高線量からのリスクの外挿のための不確定なDDREFと組み合わせたLNT理論は、低線量および低線量率における放射線防護の賢明な基礎にとどまる。

2012-07-12 12:40:33

以下、おまけ

Masashi Shirabe @M_shirabe

。o O (本文も流し読みしたけど、ゲノム不安定性、バイスタンダー効果、適応反応は、今後の理解の進展によってはLNTに多少書き換えを迫る可能性はあるという感じ。

2012-07-12 13:29:57
Masashi Shirabe @M_shirabe

。o O (ただし、2011年公開のUNSCEARの報告書(UNSCEAR 2010 Report)では、次のように書いてある。

2012-07-12 13:31:52

Masashi Shirabe @M_shirabe

放射線被ばく後のがんの誘発と発生は、単純に、関連する細胞のDNAにおける変異の段階的蓄積の問題ではない。以下の仮説群と関連する研究がある。(a)細胞や組織の低線量への適応がそれらのがん発生への耐性を高めるかもしれない(might)という仮説(適応反応)。

2012-07-12 13:32:36
Masashi Shirabe @M_shirabe

b)異常細胞を認識し、破壊する免疫系への放射線の影響ががん発生の起こりやすさに影響するかもしれない(could)という仮説。

2012-07-12 13:33:18
Masashi Shirabe @M_shirabe

(c)放射線は永続的かつ伝播する影響を細胞DNAに引き起こす変化(ゲノム不安定性)あるいは損傷した細胞から隣接する無傷の細胞へのシグナル伝達のトリガーとなる変化(バイスタンダー効果)を生み出すことができる(can)という仮説。

2012-07-12 13:33:38
Masashi Shirabe @M_shirabe

ゲノム不安定性とバイスタンダー効果は被ばく関連のがんリスクを変化させる要因として提案されてきた。(…略…)

2012-07-12 13:34:00
Masashi Shirabe @M_shirabe

UNSCEARはこれらの研究をレビューし、これらのプロセスが疫学データの解釈に有意に貢献はしないと判断した。[すなわち、がんリスクを変動させるような影響はないと判断した。]

2012-07-12 13:34:15

Masashi Shirabe @M_shirabe

。o O (放射線ホルミシスは、これら仮説群では(a)および(b)に関わるが、そもそも仮説扱いである上に、現状、がんリスクに関する見解を変える程度のものではないと判断されている。加えて、各仮説における助動詞の使い方の違いにも注目したい。

2012-07-12 13:34:51
Masashi Shirabe @M_shirabe

。o O (すなわち、いずれも可能性を表す表現であるが、(a)might<(b)could<(c)canの順で示唆する可能性が高まっている。

2012-07-12 13:36:13
Masashi Shirabe @M_shirabe

。o O (ゲノム不安定性およびバイスタンダー効果は、多くの場合、低線量被ばくにおけるがんリスクをより高いものであるとの説明に使われる(科学的には必ずしも負の効果だけでなく、正の効果も想定されている。)現象である。

2012-07-12 13:36:41