災害リスク削減のジェンダー主流化(池田恵子さん)
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福島大学総合科目「ジェンダーを考える」、本日は池田恵子さん(静岡大学)のお話です、「災害リスク削減のジェンダー主流化」について。池田さんは、わたしの大学院の同期、同じ院生研究室でした。(いや、彼女は研究室にはあまりいなかった……バングラデシュに行ってて。)
2012-07-13 10:27:53池田「今日の話、簡単に言うと、災害と社会の成り立ちの関係とは、ということ。その中にジェンダーはどうかかわるのかという話。ジェンダー主流化は、意識だけではなく、さまざまな領域に当たり前のようにジェンダーが組み込まれている、という状態のこと。」
2012-07-13 10:30:51池田「今日の流れ。「災害とジェンダー」研究の成り立ちと展開、国際的な取り組み、事例としてバングラデシュの話、"Building back better"ということ」
2012-07-13 10:33:39池田「1960年代ぐらいまでは、災害と社会はあまり関係ないと。災害は社会の外からほっとやってくると考えられてきた。災害=ハザード。避難行動やリスク認知、防災組織の研究。1970年代、途上国・地域における人類学的・地理学的研究。災害の被害を拡大する社会・経済・文化的構造」
2012-07-13 10:36:06池田「一つの災害でたくさんの人が死ぬ、ということを、フィールドワークの途中で経験者が目撃したことが、注目のきっかけ。植民地支配、開発の進展といった要因。最初は階層やエスニシティが注目された。ジェンダー(障がい、市民権)の重要性の認識は90年代」
2012-07-13 10:37:51池田「論点。人的被害の男女格差、暴力、性役割や責任の配分、救援復興への参加、といった格差。女性間の経験の多様性、階層、人種/エスニシティとの交差。女性を弱者と捉えず、いかに防災に女性が関わるかという対応戦略、在地の知恵。実践への応用。」
2012-07-13 10:39:47池田「人的被害にも男女差。インド洋大津波での被害について。インド、タミルナドゥ州の村では、死者336人の4分の3が女性。インドネシアの北アチェの4村では56%、など。スリランカでは男性の生存者が女性の1.5~3倍。1991年バングラの高潮でも20代以上で女性の死者比率が高い。」
2012-07-13 10:43:01池田「ノイマイヤーほか(2007) ①女性のほうが男性より多く死亡している、②大災害ほど男女差が大きい、③女性の社会経済的地位が高い国ほど、男女差が小さい、という統計的分析」
2012-07-13 10:49:16池田「災害時の格差拡大。災害時には女性の労働量が、ケア労働などに集中し、家庭責任が強調される。結果的に地域の復興にかかわれなくなる。生活再建の面でも遅れがち。解雇されるのは女性から、職場復帰は男性の後。そのほか、性暴力が大災害時には起こりやすい、DVも増加。」
2012-07-13 10:51:11池田「女性は一方的な被害者でなく、災害復興や防災でも役割を担っている。ただし、公的な防災組織や緊急救援の組織の中心には男性がおかれる。なぜこういうことが起こるのか。どう説明されているか。」
2012-07-13 10:53:20池田「Wisner 2004の図。At Riskという本。邦訳では2万円するのでちょっと買えませんが……。脆弱性という概念を使っている。対概念は回復力、対抗能力。など。脆弱性が高いと災害時に大きな被害を受けやすい。」
2012-07-13 10:55:32池田「災害(disaster)のリスクとは、ハザード(自然災害)と脆弱性が重なったときに生じる。脆弱性が高い、とは、危険な立地に住んでいるとか、低所得とか、そういったこと。あるいは権力へのアクセスが少ないとか、資源の問題も。制度的に補完することもできるが、できないと高リスク」
2012-07-13 10:58:37池田「この発想は、障がいの概念と似ている。社会が障がいを生み出す、という視点(社会モデル)。ここにどうジェンダーが関わるか。」
2012-07-13 10:59:53池田「Adger 2006、脆弱性と対応能力の格差は日常生活で形成される。ハザードにさらされる度合い(ex. 家の立地)→ハザードにあったとして被害を回避し、小さくとどめる可能性→被害から回復できる度合い、という3つ。すべてにジェンダーが関わっている」
2012-07-13 11:02:57池田「例:地域の自治と女性。世帯主や地域の代表や役員は男性だったりする。そうすると男性が決定者になり、女性は意思決定に参画できない、という認識になる。地域防災への女性の参加も低くなる。行政の男女共同参画の部署などはこのあたりと没交渉であることが多い」
2012-07-13 11:07:17池田「そうすると、避難所運営を実際にやるという時に、女性が発言できないということになる。プライバシーが保たれなかったり、ケア役割の負担が女性にかかったり、ということになってしまう。」
2012-07-13 11:08:42池田「これは日常の中で培われてきたことなので、緊急時にということになっても対応できないのはしょうがない。次の備えてどうしようということも考えていく必要。災害対応は72時間といわれるが、そうではなくて根本のところに立ち返る必要がある。」
2012-07-13 11:10:14池田「例2:女性の失業増加という問題について。震災は男性と女性の雇用の格差を拡大した。被災3県では失業給付が女性でふえている。「男は外、女は内」というような考えが支配的であるため、女性の雇用が進まない。そうすると、特に母子世帯の貧困が拡大する。これが脆弱性」
2012-07-13 11:12:47池田「こうした問題、どこに解決の糸口があるのか。国際的な動向を見ていきたい。国際的には取り組みがされて、対応が考えられている。1994年国連防災世界会議(横浜)でも、「防災に女性や社会的に不利な集団の参加を奨励」が提唱されている。」
2012-07-13 11:15:13池田「いちばん重要なのは、2002年の国連女性の地位委員会提言。「ジェンダーの不平等は、際が一脆弱性の根本原因の一つ」。2005年の「兵庫行動枠組」でもジェンダー、多様性についての優先事項が組み込まれている。」
2012-07-13 11:17:04池田「災害時緊急救援の国際基準もある。国際赤十字のスフィア・スタンダードほか。災害支援の際に、独自な基準でそれぞれの対応をされると困るということと、災害の支援はもっとも支援を必要とする、もっとも弱い立場の人に届きにくいということ。支援するつもりが被害を与えてしまわないように」
2012-07-13 11:20:32