ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/07/14 ついのべの日!

毎月14日はついのべデー。今月のお題は「花火」でした。詳しくは @twnvday_bot へ 今日読んだついのべの中から個人的にお気に入りの作品を選んでみました。 ついのべ #twnovel とはツイッター小説、つまり140文字以内で書かれた短いお話です。
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ぼろいねこ讃 @nekoboro

骨は折れてるけれど使えないこともない傘を集めている男がいた。晴れた日に庭で傘を開いて並べ、屈折を見ながら日光浴をするのが好きだった。壊れているものや壊れていないものより、壊れかけのものがいちばんだと思っていた。過度な日光浴が少しづつ身体を蝕んで、彼は幸せだった。#twnovel

2012-07-14 04:01:22
あまたす @amatasu

ぱん。外で何かが爆ぜる音がした。もう、そんな時期か。僕は外に出て、森の上に広がる夜空を見上げる。ばん、ばん。夜空に光の花が咲いた。森のエルフたちの夏の行事だ。森にしか咲かない花を火にくべると、ああなるらしい。空の上にいる祖先に手向けるその花を、花火と言うそうだ。 #twnovel

2012-07-14 04:05:40
添嶋譲 @literaryace

#twnvday 花火やろうって思いつく人みんなに声をかけたけど誰もこなかった。もったいないので一人で火をつけた。両手に持ってバカみたいにふりまわした。こんなに綺麗なのになぁ。バケツの中の残骸を見て情けなくなった。どこにも行き場のない僕はない足を引きずり、重い気分で墓場に戻った。

2012-07-14 05:47:12
layback @laybacks

父は魔法使いだった。どこからともなくこよりのようなものを出してきて、工場でシゲさんにもろたんや。せやけどしけってるかもしれんな。しけってる? しけってるってなに? まぁ見とき。表で火をつけた。父の指先には花火がぶらさがっていた。小さな花火。はじめて見る線香花火。 #twnovel

2012-07-14 07:08:41
未使用 @hkta3

待合室では周りに誰もいない。一台バスが着く。乗ろうと群がる人たち。甘いものに群がる蟻のようだった。微笑を浮かべていた。だが、気づいた。私もそのうちバスに群がる一人となり、同じように蟻の一匹となることに。後ろで誰かが一人微笑を浮かべる。なにかとても意味ありげに。 #twnovel

2012-07-14 07:28:31
猫春雨@ものがたる屋 @nekoharusame

少女は海辺で入道雲を眺めて、つらつらと考え事をしていた。あんな大きいもこもこしたものが、もしも陸地にやって来たらどうしよう。きっと怪獣が現れたみたいに大騒ぎになるだろうな。あっ、でも手足が短そうだからすぐ転んだりして。その時は怖がらずに絆創膏を貼ってあげなきゃね。#twnovel

2012-07-14 08:10:08
@mimimdr

彼女が男と花火大会に行ってたんです。虚ろな目で呟く患者の胸に聴診器を当てる。不規則な雑音。どーんどどーん。喉の奥には色とりどりの光。暫くすると口内が白煙で埋まる。食べてしまえば見なくて済むんで。でもそれでは胸が痛いでしょう。お薬出しておきますね。#twnovel #twnvday

2012-07-14 08:25:10
明宏訊 @aliceizer

#twnovel ピアノが鳴ると子供たちが踊りだした。そのうちのひとりがヒートアップして窓ガラスを割って外に飛び出した。破片で顔を傷つけても笑っている。血が流れているというのに、誰も気にする様子もない。ほどなく帰宅した両親も踊りだした。怪我した息子に一言、「床を汚さないで」

2012-07-14 09:17:07
七歩 @naholograph

花火が美しいので、空に花火が常設された。星の瞬きも月の光も全てを消して。太陽の輝きとも張りあって。永遠の花火。人は、花火を見なくなった。人は空を見なくなった。見ない空などいらない空だ。空は黒幕で覆われる。一体これで何度目だ。どこまでも低くなる空。#twnovel #twnvday

2012-07-14 09:23:53
めぐる @skycolorring

去年の花火セットは、なんとかしけらずに色とりどりに光ってくれた。「本当は一年前に見るはずだったのにね」その時のケンカを思い出して、彼女につられて一緒に苦笑いする。「いいじゃない。星の光みたいで」来年もその先も、この輝きに照らされるその笑顔を見ていたかった。 #twnvday

2012-07-14 10:57:09
でらしね140 @_deracinee140_

妻は死んだのは夏だった。早すぎる死だった。命日には妻が好きだった線香花火をする。私の花火はいつもふいに火が落ちてしまう。妻は下手ねえと呆れて笑った。私はそういう星の元に生まれたのかもしれない、そう思いながら一秒でも長くと願って今年も火をつける。 #twnvday #twnovel

2012-07-14 11:02:03
いらつめ @kanoiratsume

こんな日に限って親知らずが痛みだした。冷やしても効きやしない。仕方ない。今夜は花火大会だってのに。車を馴染みの歯医者に走らせる。あれ、道を間違えた? 気づけば総合病院。親知らずって手術になるケースもあるんだっけ。「運転お疲れさまでした」機械的な声。は、ナビ……? #twnvday

2012-07-14 11:07:27
@sakutukixxx

夜空に開く花を僕らは黙ってみていた。隣の君は去年と同じ朝顔の柄の浴衣で、髪をまとめて少し大人びている。次で最後。大輪の花に照らされて君は笑い、そして花が散ると同時に消えた。最後に唇が「またね」と言って。君がいなくなった夏から、もう五年が経つ。 #twnovel #twnvday

2012-07-14 12:33:28
ふじの @fujino0

まったく似ていない二人だった。右と言えば左と言い、諾とすれば否とする。仲が良いとは言い難いのに、仲が悪いとも言い切れない。そんな二人が、一度だけ声を合わせたことがあった。「燃やしたらみんなお揃い」「残るのは白い骸骨」二人は大樹の分かれた枝だったのだろう。 #twnovel

2012-07-14 12:59:28
斎藤雨梟@文学フリマ東京11/11【う-40】 @ukyo_an

夏の音ね、どこかしら。花火はね、海へ落ちて小さな魚になるの。虹色に輝きながら群で舞う姿はそれは見事、本当にきれいなものはみんな海にあるって、船乗りだった祖父が言ってた。だから泣かないで。ただ見たかったの。私はもうすぐ灰になる。きっと海へ流して。 #twnvday #twnovel

2012-07-14 13:27:09
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnvday 「浴衣着てきて」なんて言うんじゃなかった。最寄り駅には「花火大会は雨のため中止」の文字が。足元の水たまりを睨んでいると、からころ、と下駄の音。「ごめん、待った?」艶やかな浴衣の君が、裾を気にしながら簪揺らして。いろいろ気遣う言葉の前に、僕の胸の花火が、どん。

2012-07-14 14:35:01
みお @miobott

#twnvday 「あなたは花火がお好きでしたね。中でもお気に入りは線香花火。線香花火が燃える様は打ち上げ花火を見下ろしているようだと…ああ、本物の打ち上げ花火も始まりました。あなたは今頃、花火を上から見下しているのでしょうか」女は線香花火をそっと墓前に供えて手を合わせる。

2012-07-14 14:50:10
蒲公英 @haruka_tanpopo

しゅるるる、ぱん。ねずみ花火を放り投げて笑いながら飲んだサイダーは、夏の味がした。縁側に戻れば冷えたスイカと、足元の蚊取り線香。ばあちゃんの家、年に一度集まる従兄弟たち。しゃがんで火をつける線香花火の玉の大きさを較べたっけ。ばあちゃん、今年は行くからね。#twnvday

2012-07-14 15:40:21
新居でがまだせわらびっちょん @tnsu1_su1

泣いている空を見上げ、傘を差す。一歩前に踏み出すと、途端に周りに音が溢れた。手に持っていた紙袋は、水玉模様を増やしていく。「これは、だめだよ。大事なものなんだ」落書きのキャンパスを取り上げるように紙袋を抱き寄せて走り出すと、更なるどしゃ降りの仕打ちを受けた。 #twnovel

2012-07-14 16:02:17
@mimimdr

花火スナイパーは禁止されている花火を狙い打つ。牡丹ものは花開く瞬間に打ち抜き、仕掛けものは一部を欠けさせ、ナイアガラは半分消して迫力を無くさせ、それぞれの最も美しい瞬間を台無しにするのだ。難しいのは線香花火。どの瞬間が一番美しいかは人に依るから。#twnovel #twnvday

2012-07-14 17:08:46
いでゆのまち @ideimachi

#twnovel 遠くで花火が上がる音。「見に行かないのか」溶接の手をとめ彼がきく。久しぶりの故郷。噂どおり彼は町工場を継いでいた。高校をやめ、一時は心配したけど。いいの、と私は微笑んだ。「変なやつ」彼は防護面を被る。ジジ、と頬を照らす火花。花火の音が重なった。 #twnvday

2012-07-14 17:19:52
kagonosuke @kgnsk

流れ星を追いかけていたらね。急に鼻がむずむずしたんだ。ハックションって、大きなくしゃみを一発。そしたら遠くまで僕の息が飛んでいって。キラキラと夜空の星たちに反射するみたいに光り出した。大きな喚声が上がる。見下ろせば、砂粒みたいな人間が口を開けて僕を見ていた。#twnvday

2012-07-14 18:08:16
@mimimdr

「お前さあ、名前の割りに飛び方しょぼいよね」線香花火に馬鹿にされ悔しくなったロケット花火は火をつけられた瞬間全力で飛んだ。大気圏を越え無重力空間を突っ切った。墜落した大量の花火にうんざりした金星人からの苦情により、ロケット花火は生産中止になった。#twnovel #twnvday

2012-07-14 18:19:18
竹田康一郎 @tahtaunwa

#twnvday「花火なんか不謹慎だ。御国のために爆弾を作れ」軍に命令されたけど、俺には花火職人の誇りがある。戦場に轟いたのは爆弾ではなく花火の音。束の間の休戦。両軍から起こった拍手と歓声。おかげで俺は死刑になる。せめてもの救いは向こうの爆弾も花火だったこと。#twnovel

2012-07-14 18:21:52
プルコサミン @Plucosamine

遠くで花火の音がする。ビルの多いこの街では花火が見える場所はものすごい人出。そんなところに行く気はしない。大きな音の合間にパチパチと響く小さな音。ベランダに出て小さな花火を眺めながら「このくらいが身の丈だ」と嘯くと猫がバケツをひっくり返した。 #twnvday #twnovel

2012-07-14 18:36:43