ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/07/14 ついのべの日！

(朝斗)外部避難中 @Asatoiro

振り向けば既に大輪が咲いていて、私達は二人並んでそれを仰いだ。後悔させたかったから浴衣は気合を入れて選んだ。それでも去年は繋いだ指先が今は遠い。だからこれが本当に最後だと分かってしまった。鼻緒が痛い。涙が溢れそうだった。だから、早く。終わってほしい。そう願った。 #twnvday

ミヤザトサエ @saemiyazato

母の新盆の入り日、迎え火代わりにと父が花火を買ってきた。赤から青、緑から金へ。忙しく色を変える手持ち花火を眺めつつ｢母さんへのプロポーズも、こーやって花火しながらだったなあ｣と言う父の、声が震えている事には気付かないフリをした。 #twnovel #twnvday (お題:花火)

サハラ @tobiironi

ドン、という音と同時にガラス窓がビリビリと震える。断続的に響く打ち上げ音と町内会の祭囃子。毎年恒例の夏の風物詩はどんなに窓を閉め切ろうと俺の耳を侵して脳の裏側にまであのケミカルな光を浮かび上がらせる。「……はあ」音の記憶とはかくも厄介なものだ。 #twnvday #twnovel

浅葉積木 @tsumiki_a

#twnvday 会場の神社の境内は、大小様々な鉢植えを持った人達でにぎわっていた。やがて、鉢植えの蕾がそこかしこで開きだして色とりどりの火をまとって輝いた。／帰り道、私の鉢植えの蕾はようやくほころびはじめ、淡い光が灯った。横で姉が微笑む。「残念だったね」　うん、来年こそは。

雨音 @candypeal

浴衣ではしゃぐ君の視線の先は、俺じゃなくて隣のあいつ。キューピットなんてタイプじゃないんだけどさ。露店を見るフリで歩みを遅らせ、二人の背中からそっと遠ざかる。人混みに消えてく可愛い帯。なあ、俺も君のこと好きなんだ。叫んだ僕の声はしかし、花火の音にかき消されて。 #twnvday

Shimada Yuichi @chimada

火のように燃える髪の彼女には火のように燃える花を飾るのが相応しい。僕は火のように燃える花を手に持った。熱い。それでも僕は火のように燃える花を持ち続けて彼女の火のように燃える髪に飾った。彼女の顔が花火のようにほころぶ。すると彼女は花火のように空に昇って星になった。 #twnvday

layback @laybacks

ロケット花火はロケット鉛筆に恋をする。よく見てて。ロケット花火はそう言って飛び立った。ロケット鉛筆は芯をすり減らして彼の無事を祈る。夜空に光の文字が描き出された。Marry Me 燃え尽きたロケット花火が落ちてくる。地上ではすでに星の数ほどYesが書かれていた。 #twnovel

yosizaki @0Y0y0y00480

あなたを残して旅立つ私を許してください。もし寂しくなったら私が好きだった花火を見てください。私はそこにいます。けれど、あなたに愛しい人が出来たのなら、私は花火と共にパッと消えます。その時は私が居なくても大丈夫だよね。さようなら。ありがとう #twnvday #twnovel

夢名 七志 @mumei7c

「お、坊主。お前も出られる歳になったか。もう、家の中で震えてなくていいぞ。ま、ここに座れ。打ち上げは五時から八時。一週間の勝負だ。去年は公民館が焼かれた。だから今年の仰角はゼロだ。大玉のみ。川向こうの奴らに負けるな」こうして、僕の夏は始まった。 #twnvday #twnovel

水木ナオ @nayotaf

あの日の花火を閉じ込めた、ピアスを彼女にプレゼントした。白く小ぶりな耳たぶに、大輪の花が咲く。花火の音も聴こえるみたい、彼女はふふっと笑う。ああ、そうだよ。だから耳をすましてごらん。あの夜、花火の音に消えてしまった、僕の告白が聞こえるくらい。 #twnvday #twnovel

roardel @roardel

とある王国に姫が生まれた。その美しさを愛でた魔王の娘は、姫が将来愛する者に非業の死を与える呪いをかけた。宮廷魔導師によって呪いの存在を知った姫は、塔に籠って生涯独身を貫いた。が、呪いの力は強大だった。老いた姫は、愛する民が黒死病で倒れるのを目の当たりにした。 #twnovel

毒吐き @___kisyoi

「助けてくれてありがとう」赤のグラデーションが視界いっぱいに広がった。「お礼にあなたの願いをひとつ叶えさせてください」冷たい指先が頬を掠める。僕は動けなかった。これは夢だと思った。彼女は先程まで泳いでいたのだ。真っ赤な尾鰭を華麗に揺らして。「さあ、願いをどうぞ」 #twnovel

夢名 七志 @mumei7c

開いた直径は、二尺玉で480m程で三尺玉だと550m程度。例えれば、巨大な光るウニが高度500mや600mから落ちて来るのだから怖い。大抵は海に沈むが、風が強い時には民家に刺さったりもする。住民は縁起物だと笑っているが、撤去も容易ではないのだ。 #twnvday #twnovel

へん子@推し増し中 @henda4

#twnovel ラムネのビー玉がほしいと云って、兄さんを困らせたことがある。ころころとひかるそれは、とても美しいものに見えたのだ。地面に叩き付けられたガラス瓶は花火のように散った。兄さんの指先から紅いものが流れる。ころころとビー玉も転がる。あの夏はもう戻らない

Affair Story @affair_story_s

#twnovel ベッドに寝転がり、淡い光を頼りに本を読む。開きに対して明るさを変える文体を本を傾ける事で調整していると、光の方に腕を引かれた。見れば『光』が横から覗き込んでおり、俺は見易いように本を傾けようとして、しかし別の腕に止められる。逆側からは、『闇』が覗き込んでいた。

帆月 @hozuki_1173s

片思い中の彼女から花火大会に誘われたのは五日前の事だった。彼女を誘おうと考えていた僕は、嬉しさと悔しさを同時に味わった。そして今僕は、彼女と並んで花火を眺めている。次の花火の後、好きという言葉は僕の方から。そう思う中、花火は何発も上がり続ける。 #twnovel #twnvday

夢名 七志 @mumei7c

「玉やー玉やーと、必死の形相で叫びながら妙に嬉しそうな浴衣の男女に大人に子供が掛け逃げてくる。後から転がり迫るのは、爆ぜた四尺玉。八百メートルの光る刺々がずしずしと追ってくるのだから逃げ切れない。ずんと刺さった光の柱が通り過ぎ安堵でへたり込む」 #twnvday #twnovel

添嶋譲 @literaryace

ずっと仲良くなりたいと思っていた子の家にこっそり行ってみた。夏休み直前。家の前には自転車がたくさん停まっていて、僕のような奴の入る余地はどこにもなさそうだった。二階の窓から聞こえる騒がしい声。見つからないようにそっと離れた。母さんに持たされた花火を玄関において。 #twnovel

工房径（koubou-kei） @pleaseinuplease

#twnvday どうせなら思いの丈をぶちまけ、終わりにしてしまえばいい。そう思うのに、俺はいつまでもちりちり未練たらしく燃える線香花火だ。「今日は静かなのね」ふたりきりの残業の部屋、あなたが煽るように笑うから。そう易々と落とすものか。俺の熾火は赤々と膨らむ灼熱の珠になる。

如月さつめ @kisatume

その村の掟では、夫を亡くした妻は花嫁姿で湖に身を投げなければならないらしい。死後の世界で夫と再び結婚するためだ。けれども今日身を投げた少女は家のために結婚させられた少女で、俺は助けずにはいられなかった。「なぜ助けたの」人魚姫のような少女は言った。　#twnovel

しーな@GO2完走 @xsheeenax

「英語だとfireworksって言うんだって。かっこいいよね」今日の為に仕入れた雑学、タイミングはばっちりだ。「ん、でも花はどこに行っちゃったんだろうね」ぽつりと呟いて君は空に咲く花に目を細める。僕が隣に咲く花に見惚れていることにも気づかずに。 #twnvday #twnovel

ぽそ。＠ISFJ-TなA @poso_broccoli

花火なんてコンビニで充分だよ。君がそう言うから仕方なく安っぽい花火セット。夜店もないし、楽しくないよ。そう思ってたのに、手持ち花火ではしゃぐ浴衣姿の君。楽しい？楽しいよ、楽しくないの？笑う君に苦笑い。君がいるから楽しいよ。僕の一言は、打ち上げ花火にかき消された。 #twnvday

雪月 @setugetufuka

カバンの中からくしゃくしゃになった線香花火が出てきた。あの日、彼との夏が終わってしまう気がして、最後の一つに火を点けることができなかったんだっけ。庭に出て花火に火を点けようとした。でもすっかりしけってる。まるで彼を忘れられずに、いつまでもうじうじしてる私みたい。 #twnvday

simmmonnnn @simmmonnnn

#twnovel 花火と火花の違いは知ってるかい？　花火は人々から期待されて散らすものだけど、火花は誰からも望まれず散らすものなんだよ。「じゃあ、これはみんなが期待してたことなの？」今ぼくと彼女の眼前に広がる火の海は、元々は花畑だった。何の花かは知らされてない。 #twnvday

nohironogi on earth @nohironogi

#twnvday #twnovel 顔を合わせれば酒を飲む俺たち。キャンプ場でも、酒盛りだ。ヘビースモーカーぞろいだから、先住民の集会みたいだ。盛り上がってくると、花火だ。しかし、火をつけた瞬間、やつらが来た。ガサ入れ。「そこまで！　アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局です」