ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/07/16

今日読んだついのべの中から個人的にお気に入りの作品を選んでみました。 ついのべ #twnovel とはツイッター小説、つまり140文字以内で書かれた短いお話です。
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@mimimdr

軟らかい自転車では前に進めない。色水を吸って葉を染める葉脈のように、気弱な心を吸って軟らかくなってしまったのだ。進めない自転車の隣でうずくまる。ほっとした自分の心に傷ついた。無理しないで、おうちに帰ろう?お母さんに、学校行きたくないって、言おう?自転車の声がした。#twnovel

2012-07-16 00:03:27
しーな@GO2完走 @xsheeenax

「ごめんね、僕の全部はあげられないんだ」うん、知ってる。あなたのごめんねを聞くのは何度目になるだろう。ぺたりと頬に触れる。少し伸びた髭が指先に引っかかるのすら愛おしい。あたしを全部あげる、というのは重たすぎるのかな。あなたと同じぐらいにすればちょうどよくなるの? #twnovel

2012-07-16 00:19:32
birdboiled @birdboiled

#twnovel 夏酔いに処方された膏薬は薄青いろ。胸に塗るとすうと気持ちが落ち着く。流れ星の尾と露草の花を配合してあるのだという。塗りすぎると心が青くなりすぎて、と薬師は声を潜める。湖に溶けたくなくなりますので、ご注意を。東の宮の湖は、どうやらそれで青さを増しているようでして。

2012-07-16 01:19:14
おはなし手帖 @ohanasitecho

【金平糖】 うるさい星がみんなどこかへ行った暗い夜。 電燈係員が公園で煙草をひとつ、赤い灯火の休憩時間。 煙に喉を灼かれた電燈係員がひねった蛇口から流れ落ちたのは、千に光る金平糖。 電燈係員も公園も町も島も海も隣の大陸も、みんな金平糖に埋め尽くされたっていう話。 #twnovel

2012-07-16 02:23:20
あかね @akane2003

不安定な靴で精一杯笑顔で対応する我が姫君。あ、今ドレスがやぶれる音が。裾を踏みましたね。苦笑いの我が姫君。戦場での働きは素晴らしのですが、こういう場所もドレスもとても苦手のようで、前回の舞踏会では男装でしたからね。皆様、必死に笑いを堪えてくださり、感謝します。 #twnovel

2012-07-16 09:18:40
tokoya @tokoya

#twnovel カレンダーに浮かぶ「海の日」の文字。私は端末を起動させて、海洋記録映像を探す。壁面スクリーンに映し出された巨大な鯨、白熊、ペンギン、そして深海に棲む生き物。涙が一筋流れて、口に入る。これが海の味なのだと、本能が私に教える。地下都市の片隅で、私は失われた海を想う。

2012-07-16 09:26:28
カタリコ @TreeMaple

コビトカバの背中は、水に濡れて黒曜石のようにキラキラとしていた。僕はその背にそっと掌を載せることを考えたが、僕と彼の間には、決定的な溝があった。コビトカバは大きなあくびをしながら、じりじりと太陽に焼かれていた。日差しがコビトカバの肌をますます黒く焼いた。#twnovel

2012-07-16 09:28:43
@mimimdr

公園で仲間はずれになった君は、運が良いと公園の墓場に逃げ込める。そこは誰もいないから思い切り泣けるし、規制されて今はなくなった箱ブランコや遊動円木で好きなだけ遊べるんだ。夢が覚めたらいつもの公園へお帰り。特別な体験をした君は胸を張って仲間に入れてって言えるはず。#twnovel

2012-07-16 12:53:14
akane_a @akane_a

#twnovel 祖母からは古い話や言い伝えを教えられたものだが、不可解なものもあった。例えば、「海で柄杓を渡されたら、底を打ち抜いて返せ」。長じて舟幽霊の話を知って合点がいったが、本当に意味が分かるのはその後。海から白い手がぬるりと生え、柄杓らしいものを見た気がした時だった。

2012-07-16 16:15:08
@tear_rain_

夏の夜、ふたりで学校のプールに忍び込んだ。まだ僕たちはこどもでふたりを引き裂く大人たちの手を拒むことは出来なかった。水面を月明かりが照らす。無邪気に遊ぶ君の姿を目に焼きつけようとしたのに涙が邪魔をした。ふたりっきりのあの美しい夏の終わりの、 #twnovel あの夏の匂いがした。

2012-07-16 18:25:12
@mimimdr

ホットミルクも新しい薬も利かなくて苦しんでいる君のために書き始めた物語。起伏が無く単調で目的もない無限に続いていく、つまらない、つまらない、物語。よくやくうとうとしてきた君を横目に、僕は永遠に終わらない魔法の物語を紡ぎ続ける。君がまた目覚めたときのために。#twnovel

2012-07-16 18:45:34
いでゆのまち @ideimachi

#twnovel また来てる。僕の部屋に猫ども。今日は3匹と…。猫嫌いの僕はため息。離れて座っても寄ってくる。一匹が膝に乗った。「猫はね、猫嫌いになつくの。放っといてくれるから」ベッドの上で幼なじみ。にらんでも涼しい顔で漫画を読んでいる。嫌いなはずの連中と、なぜか一緒にすごす夏。

2012-07-16 21:34:27
かりー @madam_carry

お面を被っていた。私以外のみんなにはそれぞれ同じお面があった。みんなはそれで上手に話しているのに、私にはお面の向こうの表情がわからないからお話しできない。私がお面を被ってないから解らないのだろうか。いや、きっとわからないままだろう。何せ私は馬鹿だから。 #twnovel

2012-07-16 21:37:58
疾風卓司 @t_hayate

ある所に、うどん博物館ができた。各地のうどんが展示されている。夜になると声が聞こえると噂になった。夜に見に行くと、うどん達が歌を歌い始めた。1本1本手作りのため、みんな声が違う。この声の違いが、こしの強さだろうか。これは、食べてみなければ…。 #twnovel

2012-07-16 21:52:47
miecha @miechorz

#twnovel 夜、違法行為をした男が捕らえられ、寒風吹き荒ぶ檻に入れられた。「貴方の拘束期間は3日。檻の中で過ごせば解放されます。水分は自由にお取り下さい」 ――夜が明ければ猿が嗤いを浮かべて檻を取り囲む。ここは人間動物園、男につけられた名は『公共の場で立ち小便をする人間』。

2012-07-16 22:04:35
ショウ @SHO_Y

海水浴場に砂山があった。私はそれを利用して城を作ろうと思い立ち、さっそく成形に取り掛かる。しかし、突然ひびが入ったり、崩れたりしてなかなか思うようにいかない。何度目かの失敗で、私は思い切り地団駄を踏む。どこからか低い呻き声のようなものが聞こえた気がした。 #twnovel

2012-07-16 22:55:00
birdboiled @birdboiled

#twnovel 今日も女王様を孔雀の羽根で扇ぐ仕事。一生懸命つとめているのに、暑くてしかたないわ、と女王様はご機嫌斜め。力を込めて扇いだら、女王様の髪が嵐にあったみたいに乱れてしまった。「ちょっと」女王様が叫ぶ。「今の岬に立ったみたいだったわ!もう一回」あれ、お気に召した様子。

2012-07-16 23:25:17
tokoya @tokoya

#twnovel クロが死んだ。私と同い年の雄の黒猫。私は泣いた、目玉が溶けるほど泣いた。その晩、夢にクロが出てきた。黒猫は特別な存在、全ての黒猫は同一個体なんだよ。と夢の中のクロは言った。翌朝、学校に行く途中で見かけた黒猫に挨拶すると、その猫はクロそっくりな声で、ニャと鳴いた。

2012-07-16 23:30:34