ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/07/18

今日読んだついのべの中から個人的にお気に入りの作品を選んでみました。 ついのべ #twnovel とはツイッター小説、つまり140文字以内で書かれた短いお話です。
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雨音 @candypeal

毒入りよ、と手渡された紅茶を飲み干した。君の与えてくれるものなら、たとえ毒だって一滴残らず自分の体内に取り込みたいから。あーあ、飲んじゃったね。くすくすと笑うその唇に口づけて、君の中にも同じ毒を注ぎ込む。毒が二人を蝕むまで退屈だから、紅茶をもう一杯入れようか。 #twnovel

2012-07-18 02:49:56
だりむくれ @darimukuretyu

この年になって、自分に出来ることはもうないと痛感した私は、自分の記憶を装置に移し替えることにした。今はボタン一つで全てが終わる。作業が終わった瞬間、私の目の前には片手で持てるぐらいの私の全記憶を持った装置があった。これが私の八十年間の全てなのだ。ひどく疲れた。 #twnovel

2012-07-18 03:06:42
壱岐津 礼 @ochagashidouzo

盛夏だった。時計は午後二時を指していた。人影は無く、太陽は暴君然と真白い箭を数限りなく射続け、射抜かれたビル群の壁まで悉く純白と輝いた。ただ、地面だけは、舗装された地面だけは漆黒のしみに点々と冒されていた。しみは思い思いの仕草を見せ、人の形に焼き付いていた。 #twnovel

2012-07-18 06:53:15
Em @Em_oisokonoem

彼女はツイッター依存症。四六時中、携帯を弄ってカチカチやっている。何がそんなに楽しいの、と訊ねると相手の顔が見えないから思ってることを素直に言えるとか。なるほどね、と思って僕も始めてみたら、彼女から好きですって飛んできて、返信の仕方が分からない僕は電話した。 #twnovel

2012-07-18 07:49:53
七歩 @naholograph

朝起きると隣に真夏が寝ていた。「昨夜のこと忘れない」寝苦しい夜だった。君は恥じらいながらエプロンをする。ご飯作るね。初々しい新妻のようだ。けれど僕は知っている。やがて激しい猛暑となっては攻め、さらに残暑となっては嬲る君を。真夏の口付け、蝉の声。本気の夏が、始まる。#twnovel

2012-07-18 08:12:57
Ikuo/Yoshitake @ikuoyosh

●幸運:焚火の前でかがむと、縁石の裏に古びた封筒を見つける。中身は紙幣で百万。添えられた手紙には、『この幸運を何に使うかはあなた次第です』とある。即座に炎へ投じ、暖の足しにした。百兆すら紙くず同然という、超インフレの世。時代遅れの幸運が、ゆっくり灰と化して行く。 #twnovel

2012-07-18 09:18:26
かなりひこくま @kanarihikokuma

炎天下。日傘をさして歩道を渡ろうとしたら、黒っぽいものが入ってきた。黒っぽいものはスカートの裾をひっぱり、急げという仕草をした。せかされるままに歩道を渡り終えると、黒っぽいものは手をふりビルの影へと移っていった。日差しが苦手なヤツだったのだろう。たぶん。  #twnovel

2012-07-18 11:07:52
添嶋譲 @literaryace

不思議な消しゴムは過去を消すことができた。僕は自分の過去をどんどん消した。嫌いだったあいつのことも、僕をいじめたあいつのことも。なんでもない僕になったら僕はさっぱりとした気分で家に帰ろうとした。だけど何も残さず全部消してしまったので、帰る家もなくなってしまった。 #twnovel

2012-07-18 12:54:08
Hiroyuki inoue @hiro_kinako

#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼が、次に掛かってくる電話には決して出るなと言う。詐欺?イタズラ?それとも僕、何かまずい事しちゃってた?気になって尋ねると彼は首を横に振った。「受話器の裏に蜂が止まっている」

2012-07-18 15:31:32
すわぞ @suwazo

#twnovel 友人が家に籠もって食べてばかりいるようになった。どんどん豚みたいに太ってゆく。注意すると宇宙の命令なのだと怒鳴られた。救いようがない。……半年後、友人は死体で見つかった。体の殆どを何かに喰われていた。友人の家の裏には、不時着したらしき宇宙船の残骸が転がっていた。

2012-07-18 19:14:56
楠樹 暖 @kusunokidan

#twnovel 原初、人類は塵から生まれた一族と泥から生まれた一族の二種類が存在していた。塵から生まれた一族は神様に祝福され繁栄を極めた。泥から生まれた一族は暗い世界で泥水をすすって暮らしていた。今、虐げられた一族が泥のような眠りから目を覚ます。彼らは「泥もん」と呼ばれていた。

2012-07-18 21:13:15
舞村そうじ(RIMLAND) @radio_rimland

#twnovel 蛮族は門扉だけ残し、壁も屋根も全て打ち壊した。瓦礫の中、かつてあった家屋と同数の門扉ばかりが思い思いに立ち並ぶ廃都。どれか一つだけ別の世界に通じているらしいと、いつしか風聞が生じた。それは本当かも知れない。侵略者も、侵略された住民も、そのご忽然と姿を消していた。

2012-07-18 23:18:01
蒲公英 @haruka_tanpopo

眠ってしまったあなたの靴を、隠してしまいたい。夜半前に帰るあなたは、どんな顔で自宅のドアを開けるの。ベッドの中で寝息を聞きながら、終電の時間が過ぎるのを待つ。帰らないでと縋ることは困らせることだと理解していて、帰る手段が断たれるのを望む罪。#twnovel

2012-07-18 23:23:01
銭喰 @zeniqui

#twnovel ブロンド娘は妹を欲しがったが父親は叶えてくれなかった。そこで一計を案じクリスマスの夜、靴下に針で穴を開けたコンドームを1ダース入れると、翌朝には空の包装だけが残されていた。思惑どおり事が進んだようだ。しかし一年経っても妹は生まれることはなく、代わりに娘が生まれた

2012-07-18 23:37:20
夢名 七志 @mumei7c

子供の手を引き夕暮れの帰路。陽に焼かれた舗装路が熱い。父さんが小さい頃はわらび餅屋さんが嬉しくてねと話す。あんなのかなと指す方には、麦藁帽のおじさんとリアカーの屋台。思わず駆け寄り一皿を買う。美味しい。子供が出来たら教えてあげよう。日も暮れた。母さんが待ってる。 #twnovel

2012-07-18 23:39:55