デジタルゲームにおける キャラクターAI 構築のために必要な身体性について

一つの全体としての知能を構築しようとする場合に、身体と世界の結びつき、身体の自律性、身体の制御、を抜きに考えることは出来ません。 ここでは、知能を構築しようとする場合に、その知性が持つ身体と環境世界が一体となったダイナミクスが如何に重要な役割を果たすかを議論いたします。
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三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

キャラクターを最強にするには、まず痛みなんか感じないようにする。しかし、痛みを感じないと、危険がわからないし、知能は痛みを通して失敗から学習する。知能ってそういうものだ。身体もなく痛みもなければ知能は成立しない。記号操作や推論は、知能の表面に現われた現象を表現したものに過ぎない。

2010-07-09 00:00:14
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

知能の中心や意識の底に何があるか考えたことがあるだろうか?その部分、脳髄や意識下にあるのは、実は深遠な思想などではなく、この世界=環境と密接に結びついた身体と身体を制御機能が脈打っている。我々の知能の中心にはまず身体の問題があり、そこから知能は世界に繋がっているのである。

2010-07-09 00:03:18
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

意識は複数の感覚から得た情報から再構成したこの世界に、自らの身体を埋め込んだ形で意識に世界を表象する。意識が見せられているこの世界は決してカメラのファインダーではなく身体性を埋め込まれた世界である。つまり身体が世界を捉えており、意識や知能はその複合情報を処理する機能として実現する

2010-07-09 00:07:46
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

つまり進化の歴史の中で、発生の過程の中で、身体の諸部分は身体構造と環境との間で構築した構造の上に分散した認識・適応・対応機能を有しており、内臓の自律運動と共に脳の基本部分で統御される。意識や知能は、その基本自律機能の上に定立し、五感に加えて身体諸機関が捉える世界を見せられている。

2010-07-09 00:13:23
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

つまり我々は他ならぬ身体そのものによってこの世界を捉えており、捉えると同時に自身の存在を確認する。世界を感じる事は同時に感じられる事である。故に知能の機能の多くは身体性の上に実現されており純粋な思考等は最後の僅かな部分を占めるに過ぎない。然しこの最後の僅かな部分が人を人たらしめる

2010-07-09 00:18:26
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

人間の思考の特徴はその独特の遅さにある。この遅さは所与の情報を抽象化し身体自身をも対象化する程の高度な抽象性の上に思考を展開することを可能にする。この思考は荒野で獲物を駆るチーターの俊敏性などとは真逆にあるものであり、反射性と適応性に欠けるがゆえに長期的で抽象的な思考を可能にする

2010-07-09 00:21:49
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

身体と知能を含めて知性と呼び、知性を最大限の意味で捉えると、身体は常に思考していると言える。意識の上に登って来なくても、我々の身体を調整し、眠っている間でさえ寝返りをうち姿勢を制御することを知っている。一方で、高度な思考は行動を伴わないことがあるほどに、身体から切り離されている。

2010-07-09 00:24:19
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

ある意味で、高度な思考は、途切れのなく高速で循環する身体の思考に対して、情報を遅延し身体の制御の束縛から離れることで展開し対立する。この身体の思考と知能の乖離は、知能が産まれた時からの約束であり、人類が進化する限り継続して行く。現代社会のストレス問題も肥満の問題もこれを起源とする

2010-07-09 00:27:40
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

ゲームにおけるキャラクターの知能を構築すると言った場合に、まず明確に、身体の思考なのか、高度な抽象的な思考なのか、どちらかを目指しているかを明確にしなければならない。

2010-07-09 00:30:55
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

前者(=身体の思考)の構築において大切なのは、各身体部分と感覚と運動(=世界の関わり方)であり、身体の諸部分の状態や取得した情報を持って、世界と自己の状態とし、身体的思考を循環させる仕組みを構築せねばならない。ここで大切なのは身体が世界を捉え、身体が思考するという視点である。

2010-07-09 00:31:58
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

後者(=高度な思考)は、前者の思考をメタ的に俯瞰しながら、介入する思考である。そこでは、循環する思考を対象化し、身体を対象化し、自己を対象化することで、反射的機能を乗り越えて、遅延した世界における自己の存在を再定義するための機能である。そこでは感覚が捉える世界の要素が記号化される

2010-07-09 00:35:19
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

高度な知性とは、この二つの思考を合わせ持つ知能であって、身体の思考の上に抽象的思考がメタ構造として君臨することで、あるいは乗っかっているシステムの形を取る。身体の思考がバランスを崩せば、高度な思考も同時に脅かされる。身体は常に周囲の環境の自己との関係を意識に知らせる。

2010-07-09 00:37:50
Iceman @msgfx

なるほど。抽象思考pathfindingと身体思考のavoidance behavior RT @miyayou ゲームにおけるキャラクターの知能を構築すると言った場合に、まず明確に、身体の思考なのか、高度な抽象的な思考なのか、どちらかを目指しているかを明確にしなければならない。

2010-07-09 00:39:23
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

意識は、その基底にある身体からの対象化された素体(記号化)をもとに、自由に素体たちと相対化された自己を組み合わせることで思考を行う。それは多くの場合、世界のルールに従った思考であり、時に予測(=シミュレーション)として、時に論理として、時に推論として、知能の表層の現象として現れる

2010-07-09 00:41:31
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

人工知能を少しでも学ばれた方ご存知の通り人工知能はこの表層に現れた機能を実現しようとしてエミュレートする。記号操作や論理エンジン、推論機能を抽出し実現する。これは内的構造を持つものに対し表層の現象のみを実現せんとするものであり、端的な自明な結果を得はするが、知能全体の実現は難しい

2010-07-09 00:46:50
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

知能を実現するには階層構造に目を向けなければならない。まず、一番下の層には身体全体があり、身体諸機関を通して世界を認識する。かつ、身体諸機関は、高度な知能に頼ることなく、自律的に世界の各部分に適当する能力を持ち、運動する。それらは、内臓機能の制御を含み脳の基本部分で統御される。

2010-07-09 00:50:55
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

身体を第一層、それらを統御する知能を第二層とすれば、この第一、二層を含めた運動が、身体の思考と呼ぶべきものである。次にこの二層の上に立つメタ知能が、抽象的知能と呼ぶものである。

2010-07-09 00:54:22
北風 @polestar23

@miyayou 伺ってると砂漠(世界)の上に乱立するピラミッド(人)の底が身体でてっぺんが思考みたいなイメージをもちましたが必ずしも下にいくほど大きいものではないもんでしょうか?>階層

2010-07-09 00:55:32
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

この知能は、身体の反射循環機能から離れ、自己の身体を世界から独立し相対化させ、遅延する情報の世界で、下位の層の思考が対象化させ現出させた世界の各要素を組み合わせて思考する能力を持つ。そして、その結論から得られた判断に基づいて、身体の新しい制御を、下位の層に渡す。

2010-07-09 00:55:49
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

このように、知能の工学(=人工知能)とは、まるで植物が土に根を張るように、身体が世界に根付き、世界を捉え(認識し)、世界を己の中に引き上げて来た上で実現する機能である。身体も感覚もなしに、記号化された世界だけで知能を求めることは、知能のほんの僅かな部分しか見ていない。

2010-07-09 00:58:46
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

全体的な知能を実現しようとすれば、身体によって捉えられた世界、そして、身体の制御と欲求によってその世界をさらに対象化させ、記号化させるという、多重に変換された世界をまず捉えねばならない。それは、生々しい生のダイナミクスをエンジンとする、対象化された記号の舞い踊る世界である。

2010-07-09 01:02:30
y2youhei @y2youhei

.@miyayou 意図とは異なるかもですが、M・メルロ=ポンティを思い起こしました。自らの身体を世界の軸として、身体を通して自らの新たな世界を構築し、その結果手にはいるものが意味であり言葉なのだとすると、意味や言葉を用いてそれ以前のものを表現・模倣できるのか?などと考えてたら夜

2010-07-09 01:05:29
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

このように、知能は世界から独立し俯瞰するシステムではない。むしろ、世界と自律的身体が協調するダイナミクスを、その根幹の部分に抱えながら、尚かつ、その運動を相対化し、対象化し、その運動を乗り越えた場所で思考しようとする抽象的思考を含む、複合システムである。

2010-07-09 01:07:51
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

人工知能はこのダイナミクスとシステムを解き明かす学問である。誰も身体の構造を一日で理解できるとは思わない。今や人体は緻密で複雑なシステムである事が知られており全貌の解明からは遠い。然し人は知能の構造をすぐに理解できると思いがちだ。身体の構造が複雑ならば知能の構造もまた複雑である

2010-07-09 01:11:59
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

人工知能は様々なモデルが提案され検討され一見科学のようなふりをしているが実は全然科学ではない。提案したモデルを検討しているに過ぎない。

2010-07-09 01:15:27
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コメント

Shinji R. Yamane@IPUT Tokyo @shinjiyamane 2010年7月9日
脳が司令塔というドグマは強いな。身体センサーからの信号が自己意識の原因だという立場の神経学者や哲学者は珍しくない。その教育を受けているのが北米ゲームAI開発者の強み
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Shinji R. Yamane@IPUT Tokyo @shinjiyamane 2010年7月9日
CEDEC09のゲームAIレビューもよろしく! http://trim.li/nk/2Kio p.58-60 RT @miyayou 身体から思考に具体的な制御要求を出すべきだ、と言ったのは、GDC2009 で、Naughty Dog の
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企画屋@川村(ナラティブ番長) @yas_kawamura 2010年7月12日
なんか、俺が唯脳論を引用して何を言いたかったか、その内容部分がすっぽり抜け落ちて文句だけ記録されている。 内容いらないなら、突っ込み部分も全部削除してくれ。それ読んでも誰の思索の助けにもならんでしょう。
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企画屋@川村(ナラティブ番長) @yas_kawamura 2010年7月12日
別に俺は、脳が意識の司令塔なんて言うドグマの為に唯脳論を持ち出したわけではないし、養老先生の唯脳論はそんなことをさっぱり言っていない。むしろ真逆だろう。唯脳論は言葉のイメージから想像するような内容ではない(唯物論的ではあるけれど)ので、未読かつ興味がある方には一読をお勧めする。
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Shinji R. Yamane@IPUT Tokyo @shinjiyamane 2010年7月14日
専門化が進むと専門外とのやりとりも難しくなる。「唯脳論」と現代脳研究の両方を使った議論はなかなかない(20年以上離れているのであたりまえだが)。最近の成果まで押さえているものだと、森健『脳にいい本だけを読みなさい!』(光文社, 2010)あたりのブックガイドが専門の間を埋める役にたつかもしれない。
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