デジタルゲームにおける キャラクターAI 構築のために必要な身体性について

一つの全体としての知能を構築しようとする場合に、身体と世界の結びつき、身体の自律性、身体の制御、を抜きに考えることは出来ません。 ここでは、知能を構築しようとする場合に、その知性が持つ身体と環境世界が一体となったダイナミクスが如何に重要な役割を果たすかを議論いたします。
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三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

人工知能が真の科学となるためには脳科学、心理学、医学などの周辺の精密科学から、確かな要素を切り出し、それらと同様の精密なレベルで議論できるようになれなければならない。そういった探求が進められるとき、実にこの分野が広大かつ繊細な研究分野であることが知られるだろう。

2010-07-09 01:17:31
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

しかし一方で工学としての人工知能は、完全な知を待つことなく、知の構築に努め、そこで、様々なモデルから相対的に得られた効用と課題を検討する。現在、知られている要素を貪欲につぎ込みながら、現在可能な知の工学を展開する。

2010-07-09 01:19:59
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

人工知能は理学(科学)であり、同時に工学である。この分野は、まだまだ冒険に満ちた土地を残しており、実に驚くべき発見が待っていることだろう。ゲームAIはその発展の中で、最もアクティブなモデルの検証の場として機能して行くことだろう。

2010-07-09 01:22:22
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

そして、人工知能とゲームAIは相補的に発展しながら、お互いが抱えている壁を超えて行くはずである。仮想空間でも、現実空間でも、身体性を忘れることがなければ、知能の構造は非常に似通ったものになるはずである。

2010-07-09 01:25:17
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

仮想空間の知能だからと言って、身体をパスしてしまうと知能の土台を抜いてしまうことになるのである。世界、身体、知能と進む、この知能構築の流れは、全体的知能の構築を志すものには必須である。ゲームAI開発者は特にこの面に気をつけるとよいだろう。

2010-07-09 01:28:49
ネメ @nemesis__divina

身体性は環境に依存する部分が大きいと思うので、仮想空間と現実空間では違った知性になるという事は無いのですか?RT @miyayou: 人工知能とゲームAIは相補的に発展しながら、仮想空間でも、現実空間でも、身体性を忘れることがなければ、知能の構造は非常に似通ったものになるはず

2010-07-09 01:29:37
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

世界から身体を通じて認識し、世界を再構築するその過程の中にこそ、実は思考以上に、知的な機能を実現する要素やチャンスが含まれているのである。そういった過程を飛ばして、抽象思考のみを実現しようとしても、世界との絆を失ったプラスティックのような知性しかできない。

2010-07-09 01:30:54
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

我々の知能の生々しさ、知能の混沌さは、世界を起源としている。そして、身体を起源としている。同時に、その起源へ対立する知能さえ、我々は持っている。そういった生々しい知性さえ、技術を一つ一つ組み上げて行けば、いつかたどり着けるはずである。

2010-07-09 01:33:52
NANJI Kazunori @torotiti

ううむ RT @miyayou: 仮想空間の知能だからと言って、身体をパスしてしまうと知能の土台を抜いてしまうことになるのである。世界、身体、知能と進む、この知能構築の流れは、全体的知能の構築を志すものには必須である。ゲームAI開発者は特にこの面に気をつけるとよいだろう。

2010-07-09 01:34:26
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

意識から意識を見てものっぺらぼうにしか見えないし、知能から知能を見ても、同様である。我々は世界と身体から知能を見直さねばならない。そこに、知能を構築する土台が見えてくる。

2010-07-09 01:34:50
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

デジタルゲームにおいて、要求された動きのできない哀れなAIを見るのは、我々の知能への理解の浅さを表現するものである。人が知能を深く理解しようと試み、その知識と技術を積み上げる限り、ゲームAIは発展することが出来る。

2010-07-09 01:36:32
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

知能のことをわかった、などと思ってはならない。まだ誰もその奥深い構造を極めていない。広大な未知と僅かな既知の間で、AIを構築しているのが現代という時代である。このような時代において、AIを構築することは、非常に負荷のかかる仕事である。人工知能ほど基礎のない分野も他にない。

2010-07-09 01:39:22
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

全体的な、一個の知性を作るという試みは、一機能を研究するようなアカデミックな人工知能研究では殆どなされない。ロボットとゲームAIが、フロンティアに立っている。一個の知性を作ろうとすることは、実に膨大な知識と技術を必要とし、実にその人に多くを教えるものである。

2010-07-09 01:41:16
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

宇宙の謎と知能の謎は、同じ深さを持っている。ゲームAIを構築し学ぼうとすることは、その人に実に多くの謎と、課題と、知を与えるだろう。今日、解説したのはその一端である。

2010-07-09 01:44:59
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

後は、それぞれの探求者がそれぞれの冒険をすればよい。そして各々が報告を重ねることで、知能構築という広大な領野の地図が、少しずつ精緻に埋められて行くことだろう。

2010-07-09 01:45:19
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

ご指摘、恐れ入ります。原義と若干ずれる部分はありますが、「身体によって世界に住み着く」という表現はメルロ=ポンティの「知覚の現象学」(だったと思う)から拝借したものです。 RT @y2youhei 意図とは異なるかもですが、M・メルロ=ポンティを思い起こしました。

2010-07-09 01:51:23
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

そうですね。身体、世界、言語の三者の関係の中に、世界を再構成する構造があるのだと思います RT @y2youhei 自らの身体を世界の軸とし身体を通して自らの新たな世界を構築し、その結果手に入るものが意味であり言葉なのだとすると意味や言葉を用いてそれ以前のものを表現・模倣できるか

2010-07-09 01:53:52
みななぎ @minanagiTWd

結構TLに「人工知能」「人間の知能」についての言及がならんでるので、読んでいて疑問に思った事メモ。人口知能を考える時、「自我」ってどういう扱いなんだろう?1.人工知能は自我を持ってるって考えるのか?2.それとも持たせるのか?3.もしくは自我は与えないのか?4.自我を持てないのか?

2010-07-09 01:55:01
ハヤタ @HAYATA_tw

省略されているに過ぎず存在するという事は様々な情報の変換作業において通じる事だと思う QT: @torotiti: ううむ RT @miyayou: 仮想空間の知能だからと言って、身体をパスしてしまうと知能の土台を抜いてしまうことになる… http://bit.ly/bOM4dC

2010-07-09 01:56:05
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

それはもっと一般的に言えると思います。現実でも人や馬、犬、蛇のように身体が違えば違った知性を持っています。結局、知能とは、その生物種がどのように環境との身体的関係を構築したかに大きく依存すると思います。RT @nemesis__divina 仮想空間と現実空間では違った知性になる

2010-07-09 01:59:04
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

よって当然、仮想空間と現実空間で知性の形自身は違いますが、身体性が知性を規定するという原理自体は共通している(共通と思うべき)、と言えると思います。RT @nemesis__divina 身体性は環境に依存する部分が大きいと思うので、仮想空間と現実空間では違った知性になる

2010-07-09 02:02:21
みななぎ @minanagiTWd

@manaita999 単純に、「僕は」「私は」と人間がしゃべる時には自分というモノが知覚されている訳で、僕は人間が使う限りは「自我」という言葉は証明なしで使って良い、と考えています。 しかし、漢の魂はそんな言葉では説明できないんだぜ?

2010-07-09 02:03:01
ネメ @nemesis__divina

成る程、「知性が獲得される構造は似通っている」という意味でおっしゃっていたのですね。それは下名も同意見です。世界とのコミュニケイトこそが知性を構成すると思います。RT @miyayou: よって当然、仮想空間と現実空間で知性の形自身は違いますが、身体性が知性を規定するという

2010-07-09 02:05:06
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

ところが、ゲームの中でキャラクターに与えられる身体というのは、現実の生物から見れば、実に貧弱なものです。構造としてはボーンとリグ、ポリゴンぐらいです。しかし、だからと言って、その身体構造、そして各部位の環境との関係を無視するべきでない、と考えます。@nemesis__divina

2010-07-09 02:05:14
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

と言いますのも、現在のように、世界をモデル化した上で構築された知性には限界があるからです。世界をモデル化し、その上で思考し、意思決定をし、さあ、身体の制御をしようと言うことになりますと、その段階で初めて身体が現れて来ることになります。 @nemesis__divina

2010-07-09 02:08:27