ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/07/26

みしゅ音みっしぃ @mischeroid

かくして人類は滅亡した。しかしその後も Twitter 上では、bot たちが日々会話を続けていた。「俺の言語 DB にニンゲンっていうのがあるんだが、いったいこれは何だ?」「こちらにも登録があるが、よく分からないな。しかし、何だろう。妙に懐かしい響きだ――」 #twnovel

一階のお宅 @ikinotk

納豆がひきわりか粗挽きかで揉めた朝、テーブルには慣れた味付けの煮物があって、塩辛い味噌汁から湯気もふわふわ。テレビからは今日の運勢、隣の髭剃りの音、慌ただしい作り物の作り話に切り替わる。作りかけているのは優しい世界。 生み出されるのは納豆の妥協点。#twnovel

ジェットダイスケ @jetdaisuke

アパートの隣室の前に大きな鬼蜘蛛が立派な巣を張っている。昨夏はわが家の扉の前にいたのに、無知な僕は気味が悪いと追い払ってしまった。 でも今はその蜘蛛をこっそり盗みたいと考えている。何故って、朝焼けを浴びて蜘蛛の巣も躯もすべてが黄金色に輝いているのだから。 #twnovel

ジェットダイスケ @jetdaisuke

#twnovel というリンク先を覘いてみて驚いた。僕のツイートがいくつもパクられているのだ。しかしよく見ると、その人物は決まって僕より二時間早くつぶやいている。結果的に真似をしているのは僕の方だったのだ。そして今その人物は「二時間ほど仮眠をとる」と投稿したばかりだった。

Hiroyuki inoue @hiro_kinako

#twnovel 幽霊の任期は毎年夏に満了するため、人へのアピール合戦はこの時期熱を帯びる。継続の条件は人の心に刻まれていること。誰からも忘れ去られた時、僕はいなくなる。成仏などなく、ただ無に還るのみ。だからごめんなさい、あなたに恨みがある訳じゃないんです。彼女はどこにいますか？

@sktkx

小豆洗いのこの夏のイチオシは水まんじゅうだという。確かに半透明のぷるんとした皮にほどよい甘さのあんがくるまれている様はとても涼しげでうまそうだ。ウグイスあんや白あんなど色を変えて目にも楽しい。なにより、楽しげにその説明をする小豆洗いが微笑ましいのだ。 #twnovel #妖草紙

アツコ @atsuko0077

妖怪ホテルでは、この夏をご家族で楽しんで頂けるよう、新サービスを提案致します。枕返しの冷たい水枕、小豆研ぎは波音を演出、雪女のハイボールをお楽しみ下さい。お子様は座敷童とかくれんぼ。勿論、駅まで一反木綿が送迎致します。古き良き交遊を取り戻しましょう。 #妖草紙 #twnovel

tokoya @tokoya

#twnovel 自走台車と三次元センサを組み合わせて、ある男が勝手に入るゴミ箱を作った。高精度にゴミを追尾する姿に誰もが驚き、男はそのゴミ箱に更に改良を加えた。床の上に落ちているゴミを拾い上げ、内蔵した超硬刃で粉砕して収納するのだ。徹夜で完成させた男は、満足して床に寝転がった。

アツコ @atsuko0077

#twnovel 影のない幼い兄弟が、白い扉の前に立つ。「僕たちの夏はいつ終わるの」「お父様が夏の扉を沢山残して下さったからね」「僕、この扉の向こうを知ってるよ」「これは最後の扉だよ、光になって消えてしまうから」「この扉の事、知る人も居なくなるよね」「あれから67年も経ったもの」

添嶋譲 @literaryace

「おじさん、なんで僕のことを買ったの？」俺たちは牛丼屋で大盛を食っていた。「別に誰でも良かったんだよ。あと、おじさんていうな」開襟の半袖が眩しかったはずが、夜には魔法がとけてしまったようだった。「飯食ったら帰るぞ」何もしてないよ？ という顔。何かしなきゃダメか？ #twnovel

カモノハシくどう @sae_kudo

船に例えるとホールの誕生日ケーキは豪華客船である。蝋燭の灯りとフルーツ、楽しいパーティー。しかし豪華客船に沈没はつきもの。沈みゆく楽団や、波間に浮上したチョコ板に掴まろうと争う乗客達を想像するだけで胸が痛む。だから私はタルト生地のカットケーキを一つ買うのである。 #twnovel

TAG @bttftag

#twnovel 「犯人はこのなかにいる！」探偵役は言い放って、見守る私の期待をよそに側にあった自動車の玩具でブーンと遊び始めた。え、気になるじゃない。誰が犯人なの。お気に入りの熊さん？ いつも一緒に寝ている兎さん？ あの子が今夜見た映画によれば、ここにある全員が犯人なんだけど。