ドール世紀

SD
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風見ふう @Vento_Kaze

@_fleurs_ ドールたちの間では、人を着飾らせ、飾ることが流行していた。かつて、彼女らがそうだったように。

2012-08-03 17:17:40
風見ふう @Vento_Kaze

@_fleurs_ アンチエイジング、化粧水、エステ。彼女らは、様々な方法で「老化」を食い止めようとした。しかし、その効果も虚しく、年月とともに人間たちは劣化していった。

2012-08-03 17:23:03
風見ふう @Vento_Kaze

@_fleurs_ しかし、万能に思えた里帰り。それにも欠点があった。何度も繰り返される里帰り。美しくなる姿の裏側で、それは進行していた。即ち、里帰りによる変質。それは、防ぎようのないものだった――しかし、ある天使が見つけたのだ。パーツを、交換する術を。

2012-08-03 17:32:42
風見ふう @Vento_Kaze

@_fleurs_ そして、ドールたちの間に格差が生まれた。顔に傷がついたとしても、金がなければ綺麗にしてやることも出来ない。体に傷がついても、治すことが出来ない――。しかしそんな折、巷で噂になった者たちが居た。「カスタマー」と名乗る彼らは、どんな傷でも治せるという。

2012-08-03 17:44:49
@_fleurs_

@Vento_Kaze カスタマーの手にかかれば天使の技よりはるかに低いコストで人間を修復できた。それは、人間修復の革命であった。だがそのような活動を、天使たちが暖かく見守っているはずがなかった。天使たちは、独断的なルールを作り、カスタマーたちを徹底的に排除しようとしたのである。

2012-08-03 17:48:11
風見ふう @Vento_Kaze

@_fleurs_ しかし、ドールたちはそれを赦さなかった。天使たちの集う里はドールたちによって囲まれ、日夜抗議の声が奏でられる――。これには天使たちも参った。なぜならば、こんな状況では、自分たちの仕事すらろくに出来ないのだから。……こうして、カスタマーたちは公式に認められた。

2012-08-03 20:32:45
@_fleurs_

@Vento_Kaze 平和が訪れたに見えたある日、天使たちが産んだ人間のひとりがドールと恋に堕ちた。そのドールは、あろうことか人間には与えてはいけないと厳しく禁じられていた果実を与えてしまったのだ。果実は知識の泉。

2012-08-03 22:00:55
風見ふう @Vento_Kaze

@_fleurs_ そして、歯車がまた廻り始めた。失われていたものが、再び形作られていく。思考、言葉、記憶、知識。そして、人間は、昔の姿を取り戻した。取り戻してしまったのだ。

2012-08-03 22:08:13
@_fleurs_

@Vento_Kaze 罪を犯したドールに対し、天使たちは罰として言葉を奪った。自らの意思で動く力を奪った。ドールたちは、思いを伝える手段を失った。人間たちからは、永遠の命を奪った。再生できる美しさを奪い、寿命という名の時間制限を課した。

2012-08-03 22:12:11
風見ふう @Vento_Kaze

@_fleurs_ 崩れ落ちるドールたち。足元に咲いた小さな蒼い花に、人々ははっとして、涙を流す。今まで向けられていた愛情を、ようやく理解したのだ。どれだけの時間が経っただろうか、そのうちに、人間の一人がドールの一人を抱き上げた。そして優しく髪を撫でて、そっと微笑んだ。

2012-08-03 22:17:08
@_fleurs_

@Vento_Kaze ドールは何も語らない。しかし、いつか人間たちと心を通わせる手段を得ることを、永遠に夢見る。人間とドールの愛が昇華したとき、人はドールと語り合えると言われているが、真実は誰も知らず、天使は何も語らない。

2012-08-03 22:19:59
風見ふう @Vento_Kaze

@_fleurs_ そして、いつかのような暮らしが戻ってきた。人間がドールを着飾らせ、優しく愛でる。天使たちは、天へと戻ってしまった。時折、まるで監視するかのように地に降りてくるが、何も語らない。まるでドールのように、振舞うばかり。

2012-08-03 22:23:04
風見ふう @Vento_Kaze

@_fleurs_ 聖書みたいな感じでひっそりと現代に残ってるとか

2012-08-03 22:26:33