内井惣七氏「上山春平さんを偲ぶ」

TibicenLeibniz @ucciuccini

笛の練習をしとる間に、エライ訃報が出とった！上山春平さん、（学問的にはそりが合わなかったが）、ワシの恩人の一人や。某大人文研に助手で入れたのは、少なくとも半分以上、この人のおかげ。ちなみに、人文研では、偉い先生も「さんづけ」で呼べという習慣があった。

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上山春平さんをしのぶ、１。先ほど、娘さんに連絡したところ、葬儀はすでにすませたとのことなので、いくつか思い出を語らせていただく。上山さんはずっと人文研にいたので、文学部で講義したのは私が（工学部卒業後、学士入学した）4年生の時。科哲前会長のNさんらと冷やかしに出てみた。

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上山さんを偲ぶ、２．講義になれてなかったと見えて、毎回、机の上に資料を並べるのに数分間。最初の二、三回は、こちらも旧態然とした文学部では毛色の変わった講義だったので、期待しながら聞いていた。3回目ぐらいから、「あれ、前回と同じ話しやないか？」と気がつき始めた。

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上山さんを偲ぶ、３．と、好感が落ち始めた頃、講義後になぜかしら、私に向かって進んできて、「やばい、ボクの態度の悪さを注意にでもきたか？」と身構えたところ、「ちょっと話しが・・・」と。それが、人文研、助手の公募の話しだった。「え〜〜、ボク、論文なんか、今書いている卒論しかないんです

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上山さんを偲ぶ、４．あとで自分の指導教官に確かめても、「工学部卒業、文学部卒業だけでもいいんです」とのこと。いくら世間知らずでも「ホンマかいな？」と、半信半疑で応募したのだった。公募だから、ほかにも大学院生が受けていたのだが、何の間違いか、通ってしまったのだ。

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上山さんを偲ぶ、５．実は、この年、高名な仏文学者（後に文化勲章）某原さん最後の年で、「ルソー研究」をやるというので、その研究班の助手をとるということだったのだが、哲学系が上山さん一人だけだったので、なぜかしら私に目をつけたらしい。私のフランス語は独学なんやけど〜〜。

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上山さんを偲ぶ、６．てなわけで、卒論の次の私の論文は＜悪名高い＞、ルソーを形式論理で斬った（そのおかげで、後年、職を一つ棒に振った）論文。当時、今西錦司さんが辞めた直後で、某原さんも、某棹さんも、上山さんも、彼に頭が上がらなかったころ。コワイオッチャンやったらしい。

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上山さんを偲ぶ、７．なんでかいうたら、山で、探検で困ったことが起きたら、「今西のそばにおったら間違いない」という絶大な信頼があったかららしい。これは、某原さんからも、上山さんからも聞いたこと。で、ルソー論文書いたあと、アメリカ留学（実は人文研を受けたときからその準備をしとった）。

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上山さんを偲ぶ、８．自分の自慢話ではなく、当時の人文研の懐の広さ、某原さんや上山さんの太っ腹ぶりを紹介したかったからにすぎん。アメリカから帰国後、研究班は「プルードン」に変わった。これも、上山さんが「適当にやっといたらエエ」と言ってくれて、結局論文はパスした。

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上山さんを偲ぶ、９．長くなるからこれで終わりるつもり。要するに、上山さんそのほかの、このような寛大な雰囲気があったので、私のような、多少なりとも型破りな科学哲学を育ててもらう下地があったのだということ。上山さん、ご冥福を祈ります。