作中時間では『斜め屋敷』の事件は1983(昭和58)年の年末に始まり、1984(昭和59)年の1月4日に解決しています。『暗闇坂』はなんと同じ年の9月22日から始まっているのですよ!たった数カ月ですよ!たった数カ月でこの変貌!
2012-08-11 19:59:48そして時間を少し薦めてみましょう。島田荘司が生み出したもう一人の探偵役、吉敷竹史。彼と石岡君が初対面したのはいつでしょう?確か、『寝台特急「はやぶさ~」』の解説で綾辻行人が書いていましたが、「発狂する重役(『展望塔の殺人』収録)」の語り手こそが石岡君だとする説がありました。
2012-08-11 20:04:19しかし、その説は『龍臥亭幻想』で打ち破られます。あの時、語り手の石岡君は確かに地の文にて「初めて出会った」と書いています。一人称なので信用できませんが、そこはあえて置いておきます。ただです、先の「発狂する重役」。先に出した年表では1980年8月の出来事。
2012-08-11 20:06:24「吉敷刑事が荻窪の飲み屋で“現代の小泉八雲を自称する”私に「発狂する重役」事件を話す (「私」を石岡だとする意見もあるようだが、当時、石岡は既に西荻窪のアパートを出て馬車道で御手洗と同居しているので、条件が合わない)」とされています。
2012-08-11 20:06:54「数字錠」の事件で、西荻窪から離れたのは確かです。ただもう一度「発狂する重役」を読み返すと、「私は以前西荻窪に住んでいた」と過去系で書いてあります。それ以後も、語り手の「私」が過去系で書いてある文章が所々に出てきます。
2012-08-11 20:10:55その後も「私はミステリーの、それも古き佳き探偵小説のファンだったので~」とあり、「現代の小泉八雲を自認しており、珍しい事件を(略)なかば仕事、なかば道楽のつもりで収集していた」と書いています。「収集していた」です。「書いていた」とは書いておりません。
2012-08-11 20:12:34故に石岡君では無い気がします。ただ、もしかすると、これは御手洗潔なのでは?という疑問が浮かんできたのですよ。じゃあなんで御手洗は一人暮らしをしているのだろう?この時は馬車通りで石岡君と二人で住んでいたはずです。矛盾です。矛盾なのです。
2012-08-11 20:14:20となるとです。『占星術』『斜め』の御手洗と『暗闇』以降の事件の御手洗が別人に見えていたのにも説明が付きます。1984年1月から、9月22日の間に、『占星術』『斜め』を解決した御手洗の横にいた石岡君が、『暗闇』以降の御手洗潔になったのではないかと。
2012-08-11 20:17:37仮に『異邦』『占星術』『斜め』を解決した御手洗と石岡君を御手洗A&石岡君Aとします。『暗闇』以降は御手洗B&石岡君Bです。御手洗B=石岡君Aです。では御手洗Aはどこに行き、石岡君Bはどこからきたのかという疑問が生じます。
2012-08-11 20:20:58そこで登場するのが「クリーン・ミステリ氏」が登場する作者のノンシリーズ『切り裂きジャック百年の孤独』です。これはネタバレになるので言えないのですが、えーと、伏字(短縮URL)満載でいきますね。まだ読んでいない人はご注意を!
2012-08-11 20:21:47『切り裂きジャック百年の孤独』ネタバレ注意。作中の時系列では1988年ですね。『水晶以後』です。【『切り裂きジャック百年の孤独』ネタバレ注意】http://t.co/iwMR1VWxそして、http://t.co/JfpdQZEFだと予想します。
2012-08-11 20:27:56まだあります。これは石岡君の違いと言っていいでしょう。『占星術』では最後、「この事件のことを原稿用紙に纏めて~」と言いつつ、小説化し、出版することについて、その人間心理からあまり賛成しているようではありませんでした。
2012-08-11 20:31:47過去の御手洗Aはどこに行ったのか?これを言うと、本当に怒られそうだけど、まぁ…『切り裂きジャック~』のアレがアレだとしたら、若年性のアルツハイマー病に…。
2012-08-11 20:35:53ここからは「メタ」な反論です。まず作中時間を一切無視して、『占星術』『斜め屋敷』~『暗闇』以降が発売された、出版年に注目したいと思います。『占星術』が発表された1981年はまだ「新本格」も無く、「冬の時代」がつづいていた時期です。
2012-08-11 20:39:53もっとも島荘、笠井潔、栗本薫、竹本健治のように確実に「新本格の蕾」は咲いていたかもしれませんが。しかし、まだまだ「人間が描けてない情勢」が強かった頃です。
2012-08-11 20:44:03井沢元彦『猿丸幻視行』のハードカバー版の最後の選評者たちの言葉も『占星術』には「ミステリー作家のセンスは一番感じられたが、動機や社会性の問題で損をしている」「動機が充分説明されていない」「リアリティにかけていのが難」「個性の強さがマイナス」と評されています。
2012-08-11 20:46:30