「キョート・ヘル・オン・アース」破「ライジング・タイド」#8

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

論理タイピングの慣らしを終えた彼女は、小さく短い呼吸で精神を集中させる。「直結まで、3,2,1」キンギョ屋がもう一本のケーブルを構えて秒読みする。そして「ンッ……!」ナンシーの物理肉体がガクガクと痙攣を始め、だらりと弛緩した。視界が緑の光に覆われる。0100110101…… 45

2012-08-13 00:38:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナンシーの論理肉体が構成される。彼女の意識は電脳IRC空間を旋回しながら飛翔し、十数個のトリイゲートを超音速で潜り抜ける。やがて彼女の論理肉体は黒いライダースーツを纏い、飛天使の翼を生やす。激痛もまた定期的なパルスとなって押し寄せ、論理肉体の指を軋ませ、顔を苦痛に歪ませた。 46

2012-08-13 00:52:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

苦渋の選択だ。ケミカル鎮痛剤を使用すれば、コトダマ空間とのリンクが弱まり、死を招く。違法プロキシを経由することなく、ナンシーはキョート城電算機室のIPアドレスへと飛翔した。正面切っての殴り合いだ。「そろそろ、来る頃かしら……」Whisperした直後、彼女の足に鎖が巻きつく! 47

2012-08-13 01:02:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ンアーッ!」ナンシーは長いブロンドを乱しながら落下し、雲を突き抜ける。だが彼女はシームレスな多重ログインで鎖拘束を脱し、すぐ横に分身の如く出現すると、落下を回避すべく翼を広げた。彼女はフジサンの斜面上空にいた。驚くべき光景だ。百メートル下の地上では、軍と軍がぶつかり合う。 48

2012-08-13 01:11:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナンシーはこの広大な部屋の定義情報を俯瞰し、眩暈を覚えた。こちらではスモトリ巨人部隊が突進し、あちらではヤリを構えたニンジャ将軍が見事な松の上で三段ジャンプを決めている。これらのモブにIPの気配は感じられない。敵が全てを定義したか、あるいは黄金立方体か、はたまたその両方か。 49

2012-08-13 01:15:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「来ると思ってたわよ、メギツネェ!」背後から声!振り返る間もなく、ギザギザの歯を剥き出しにしたストーカーが彼女のワン・インチ背後に突如ログインし、豊満なバストを羽交い絞めにした!アブナイ!「イヤーッ!」ナンシーは咄嗟にOjigiコマンドを叩き、敵をイポン背負いめいて投げる! 50

2012-08-13 01:23:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」ストーカーは空中で軽やかに前方回転しつつ体を捻り、ナンシーと向かい合う。前回砂浜でやりあった時と同じ、黒のビジネススーツを着ている。長髪がメデューサの髪めいて不吉にうごめく。「イヤーッ!」ナンシーのKickコマンド!「イヤーッ!」回避して姿を消すストーカー! 51

2012-08-13 01:30:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「今度こそニューロン焼いてやるわ」耳元から声!振り返る間もなく、ギザギザの歯を剥き出しにしたストーカーが彼女のワン・インチ背後に突如再ログインし、豊満なバストを羽交い絞めにした!アブナイ!「イヤーッ!」ナンシーは咄嗟にOjigiコマンドを叩き、敵をイポン背負いめいて投げる! 52

2012-08-13 01:32:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」ストーカーは空中で軽やかに前方回転しつつ体を捻り、ナンシーと向かい合う。「イヤーッ!」ナンシーのKickコマンド!「イヤーッ!」またも回避して姿を消すストーカー!ザリザリザリ……ノイズが走り、眼下の光景が揺らぎ、リアルタイムのガイオンシティ地獄映像に変わった。 53

2012-08-13 01:36:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「Damnit」ナンシーは飛天使の姿には不似合いな呪い文句を吐く。戦闘機が凄まじい音とともに彼女の横を通過してゆく。ストーカーのタイピング速度は、これまでとは比べ物にならないほど速い。敵はすでにコトダマ空間に順応してきている。先程の戦闘で、敵の「眼」を開いてしまったのだ。 54

2012-08-13 01:41:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「私が無敵です」威圧的なNoticeが上空に雷鳴のごとく轟く。このIPが敵の本拠地であることをナンシーは痛感する。直後、ストーカーの乗った戦闘機が飛来!ナンシーは華麗な螺旋飛行で機関銃射撃を回避!だが続けざま、敵のウィルス攻撃が具現化した対空コケシミサイル群が地上から飛来! 55

2012-08-13 01:50:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナンシーは舌打ちしながら地上のビル街を縫うように飛び、Kickでコケシミサイルを破壊しつつ逃げ回る。Whoisを仕掛け、それがヴィジランスの支援であることを暴いたが、防ぐ手立ては無い。「侵入者の勝ち目が無い」再び威圧的なNoticeが上空から轟く。あたかも全能の神の如く。 56

2012-08-13 01:58:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

道路がタタミの如く回転し、コケシミサイルが絶え間なく射出されてくる。一度全てを空中にひきつけ始末すべく、ナンシーが螺旋状に高速上昇するが、そこを同じく急上昇するストーカー戦闘機が狙い撃った。「イヤーッ!」「ウカツ!」翼で身体を包み込むナンシー!機銃は容赦なくその守りを破る! 57

2012-08-13 02:06:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

BRATATATA!引き千切られた羽毛ピローのごとく、無数の羽根が舞い散る。間髪入れず、コケシミサイルが直撃し連鎖爆発!「ンアーッ!」ナンシーの物理肉体は激しく頭を横に振り、両鼻から血を流した!落下する飛天使を嘲笑うように、威圧的Noticeが響く。「我が名はヴィジランス」 58

2012-08-13 02:11:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((確か……こうか?いや、こっちか……?ブッダ、頼むぜ!)))ガンドーは愛銃49マグナムのマホガニー製グリップを歯で噛みながら、ニンジャ筋力で肩の関節をひと思いに捻った。ゴキゴキリ!「……!」歯を食いしばり、ブッダへの罵り声と、絶叫と、月まで飛んでいきそうな激痛を堪える。 60

2012-08-13 02:22:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼の体内にZBR成分はほとんど残っていない。先送りにしていた激痛と恐怖が、パットン大戦車軍団も真っ青の大軍となって、清算に来たのだ。しかも関節の直し方を間違った。無人茶室のタタミに激しくストンピングを入れながら、別方向に再度関節を捻る。「……!ブッダ!アウチ!アーウチ!」 61

2012-08-13 02:29:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガンドーはあまりの痛みに49マグナムを吐き出し、絶叫していた。幸運にも、敵がその声を聞きつけることはなかったが、筋が痛んでしまったことは解る。暗黒武道ピストルカラテの師であり、探偵の師でもあるクルゼ・ケン所長から遥か昔に教わったインストラクションは、錆びついて久しいようだ。 62

2012-08-13 02:34:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハアーッ、ハァーッ……仕方ねえだろ、何十年も経ってりゃ、忘れるもんさ」彼は頭を抱えてうずくまり、少しだけ弱音を吐いた。全身が悲鳴を上げ、恐怖が鎌首をもたげる。老いぼれめ、引退試合のつもりか、そううまくいくものか、と。だが愛銃とモーターチイサイを掴み、彼はまた立ち上がった。 63

2012-08-13 02:45:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガイオンは焼き払われる、老いぼれめ、お前の努力は無駄だった、お前は何も伝えられず、何も残せなかった。恐怖とZBRの残り香が、全身を燻す。手足が鉛のように重く感じられる。フートンがあれば入りたい。だがガンドーは歯を食いしばり、無人茶室のフスマを開けた。電算機室は目と鼻の先だ。 64

2012-08-13 02:55:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガイオンは焼き払われる、老いぼれめ、お前の努力は無駄だった、お前は何も伝えられず、何も残せなかった。恐怖とZBRの残り香が、全身を燻す。手足が鉛のように重く感じられる。フートンがあれば入りたい。だがガンドーは歯を食いしばり、無人茶室のフスマを開けた。電算機室は目と鼻の先だ。 64

2012-08-13 19:16:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

49マグナムを構えて低姿勢で廊下を駆ける。朧ろげに、ニンジャソウルの接近をディテクトする。フスマを開け、手近なカラテルームに逃げ込む。壁に背を当てて敵の通過を待つ。現れない。ソウルの気配が曇るように消える。誤認か。ZBR切れが思考と知覚の冴えを鈍らせる。推理の閃きと同じだ。 65

2012-08-13 19:23:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「往時のキレはどこへやら、か」。本当にそうだったか。かつては推理も冴え渡り……本当にそうか。元々こんなものだったのでは?黙ってろ。ジョークのひとつも言ってみろ。しゃんとしろ。シキベに手本を見せてやれ。少しばかり長く生きた奴が、何をすべきか見せてやれ。心の中で歯を食いしばる。 66

2012-08-13 19:32:18