「キョート・ヘル・オン・アース」破「ライジング・タイド」#8
ガンドーは再び廊下を駆け、電算機室前に辿り着く。マグロ冷凍庫めいた冷気が内側から漏れ出してきている。室内からUNIXファンファーレ音や絶叫が聞こえてくる。入口に掲げられた「厳守」のノボリが威圧的に揺れる。メイン扉が物理破壊され、半開き状態で死後硬直めいた痙攣を起こしている。 67
2012-08-13 19:36:36ナンシー=サンの最初のハッキング攻撃でロックされていた扉を、連中が強引に破壊したか。ガンドーは素早く状況を推理する。いずれにせよ、今となっては好都合だ。周辺に敵がいない事を確認すると、その巨体を窮屈そうに半開きドアの中へと詰め込み、ペンギン飼育所めいた冷気の只中に忍び込む。 68
2012-08-13 19:43:51電算機室は薄暗く、規則的に配列されたUNIXメインフレーム群が緑の光を発している。ガンドーは注意深く進む。足元には金属格子が、その下には毛細血管めいた大量のLANケーブル類が走る。「「「アーッ!アッ!アーッ!」」」並列直結された奴隷ハッカーたちの悲鳴がユニゾンで響いてくる。 69
2012-08-13 19:49:46「ザッケンナコラー!ワッドルザナックルァー!ドゥラッコラー!?」クローンヤクザが上げる血も涙も無い粛正音。「アーッ!アッ!ウッ!……ウッ……」すぐに奴隷エンジニアは大人しくなった。ガンドーの場所からは見えないが、人間を安物のキーボードか何かのように扱っているのは間違いない。 70
2012-08-13 19:59:41彼は旧世紀スパイアクションめいた大仰な動きで、UNIXモノリス群の迷路の中を進む。破壊では意味が無い。目的はあくまでも、ナンシーが全システムを掌握するための手助けだ。「よう、頑張ったな」モーターチビの亡骸の横を通過し、バリキサーバーの陰に隠れ、戦略チャブ周辺を遠目に窺う。 71
2012-08-13 20:07:17「オイオイオイ……どいつだ、どいつを止めりゃあいいんだ」ガンドーは49マグナムの残り実弾数を確認しながら、低い姿勢で敵の様子を窺う。戦略チャブの近くに、大型のサイバーサングラスで頭部を隠した女ニンジャが座っている。しかしクローンヤクザに護衛されているようで、狙撃ができない。 72
2012-08-13 20:23:13落ち着け、他にはどうだ……ガンドーはニンジャ知覚能力と探偵の勘を酷使する。奴隷ハッカーたちは椅子に固定され身動きが取れない。直結して悲鳴を上げる格下のニンジャたちもいるが、明らかにあの女ニンジャがシステム全体を統括しているようだ。時折、ヒステリックな声で何かを罵っている。 73
2012-08-13 20:26:54ガンドーは胸の前で拳銃を交差させるように構え、息を整える。49マグナム弾は残り少ない。カラス弾ではニンジャを一撃殺傷できない。大胆にやるか!ガンドーがニ挺拳銃を構えて立ち上がり、アラスカめいた防寒服を着込んだ護衛ヤクザもろとも、ストーカーをネギトロに変えようとした、その時! 74
2012-08-13 20:30:33「イヤーッ!」突如、天井ドアがパカリと開き、ヴィジランスが回転ジャンプとともに出現したのだ!振り下ろされるチョップ!「グワーッ!」予想外の場所からアンブッシュを受け、よろめくガンドー!電算機室主任はそのまま、ガンドーの巨体をカラテで天井ドアの中へと放り投げた!「イヤーッ!」 75
2012-08-13 20:36:13第2部「キョート殺伐都市」より:「キョート:ヘル・オン・アース」 破「ライジング・タイド」 #8終わり #9へ続く
2012-08-13 20:37:00◆リングバック主張する!◆ なお「ライジング・タイド」#9は本日9時半くらいからすぐ開始予定だ ◆虐殺落下の祝福を!◆
2012-08-13 20:39:27