ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/08/13

銭喰 @zeniqui

#twnovel 『お盆休みをいただきます』個人経営の気まぐれか、貼り紙に反して洋食店は開店していた。「お待たせしました」ウェイトレスが妻のハンバーグセットと私のチキンドリアを運んでくる。熱そうに、四枚の皿を両手に抱えて。危ないな。使えばいいのに。そこまで考えて、はたと気がついた

ヨシムラ @ortk

いたずら心で胡瓜の代わりにSR-71、茄子の代わりに耕運機、二台のプラモデルを供えてみた。 3529.56km/hの強烈なGを奥歯でぐっと噛みしめて耐えた明治の男は、のんびりと耕運機に乗って帰っていった。こいつで孫に食わせる西瓜を作ってやるんだって笑いながら。 #twnovel

七歩 @naholograph

ママがお盆に帰ってくる。キュウリの馬とナスの牛を作るんだよ。パパはそう言って野菜をくれた。制作開始。#twnovel　「ママ喜ぶよ」僕が作ったキュウリの飛行機をパパは褒める。だって馬なんて遅いしママが怖がるかもしれないし。ナスはナス。後で食べる。ママはずっとここにいていいからね。

birdboiled @birdboiled

#twnovel お盆だからかな。田舎に帰る電車が、あんなに混んでる。向かいのホームを見ながらぼうっとしていると、肩を叩かれ、下り方面の切符を渡された。「あんたも帰りな。俺、もう田舎に知り合いいないから、最近は切符譲ってるの。まあ、60年後ぐらいに返してくれればいいよ、あっちで」

かなりひこくま @kanarihikokuma

檻を作り秘密を入れた。秘密は四角い檻の中を音もなく練り歩き、ときどき唸りを上げた。檻は丈夫なはずだが。秘密は自らの内に秘密を宿し、危険が危ないって感じだった。だが僕に出来ることは少ない。僕はサンダルを履き表に出て、玄関にプレートを下げた。「猛獣注意！」　 #twnovel

新居でがまだせわらびっちょん @tnsu1_su1

雨が降ったので雨宿り。すると続々雨に降られた仲間達が集まってきた。「降ると思った」「びしょびしょ、舐めてあげる」「お昼のご飯に間に合わないよー」「後で行けばいいさ。この藁小屋でみんなで休まないかい？」「いいねぇ！僕一番上」「私もー」猫達は続々と藁を駆け上がった。 #twnovel

wacpre @wacpre

お盆なので帰省してきているのだろうか、子供というよりも孫連れが目立つようになってきた。実際に会えている彼らが羨ましい。お墓参りには行ったけど、いまいちスッキリしないまま。本当はあっちまで会いに行きたいんだけど、怒られそうだからもう少しこっちで頑張ってみるね。 #twnovel

(ゆないキズト) @Kyzt__

#twnovel 「なぜ俺達が一年に一度しか帰って来れないか…」男は私に言う。「あの世からこの世に戻ってくるまでに、ほぼ360日かかるんだ。しかし、この世からあの世に戻るのは一瞬だ」私は彼の言葉を真剣に聞く。「あの世に戻ったら、またすぐにこの世に向けて歩き出さなくちゃならない」

チョコ🐾 @tyoko5

「負けないわ！」「望む所よ！」三角帽子を被り直し、箒を握る手に力を入れる。今夜は魔法使いの箒のレース。実況と解説が声を弾ませてカウントダウンを始めた。そんなことに下の人達は気付いていない。けれど、みんな"流星群"だなんていって彼女達のレースを楽しんでいた。 #twnovel

しぃとろん @seatoron

ひゅーという音とともに、光が散った。近くで花火をやっているな…原っぱでビールを飲んでいた俺は、なんだかうれしくなった。原っぱの片隅では、墜落した宇宙船が救助信号を送っていた。「船長、信号が届きません！地球には信号に似た紛らわしいものがあります」「冬まで待つか…」 #twnovel

雨音 @candypeal

煙草なんか大嫌い。彼の唇に何度も触れてずるい。彼の服に匂いを残してずるい。そして煙草の不在にそわそわする彼も酷い。私が一番近くにいるのに。彼の感情を動かすのは私だけでいいのに。そうして泣いてせがんで禁煙してもらったのに、今度はその口内に常に居るガムが許せない。 #twnovel

すわぞ @suwazo

#twnovel 遠くから異星のものたちがやってきた。彼らは巨大で、慈愛にあふれ、地球人類とはまったく異なる姿と知性を持っていた。彼らには独自の生物分類法があった。動くものと動かぬもの。花を咲かすものと咲かさぬもの。歌うものと歌わぬもの。彼らはヒトとムシを同じ項目に入れ、愛でた。

藍　真史 @shin1960

#twnovel 彼は毎日腕が折れるほど投げ続けました。あたしを甲子園に連れて行くと言って。あたしは言いました。甲子園に連れて行ってくれたらお嫁さんになってあげると。でも彼は負けました。あたしは彼に言いました。嘘つき。そしてあたしも嘘をつきました。負けた彼のお嫁さんになりました。

いでゆのまち @ideimachi

#twnovel 黒と白、二匹の猫は旅をする。仲間も人も、嫌な犬さえもいない街から街へ。僕ら一緒なら怖くない。そう励ましあってきたけど、ある街で白猫は倒れた。滅びゆく世界、最後の猫。寂しい心が影から黒猫を創った。僕を独りにしないで。哀しい鳴き声が天に届いても、白猫はもう動かない。

しーな@GO2完走 @xsheeenax

最近すっかりご無沙汰ね。くすりと笑みを零しつつ、何気なく触れる指先。そこだけが焼けそうな熱を持って、発火点になる。確かに会ったのは一月ぶりだけれど。あえて二週間に一度のペースを崩したのは、これ以上会いたくなると困るから。下心がうっそりと沈む夏の図書館。書架の陰。 #twnovel

雨音 @candypeal

でかい図体で日陰を作ってる陰気な灰色の建物がこの街の象徴で、僕は子供の頃からそのビルが嫌いだった。父はビルの管理人で、この街の中心は俺が管理してんだぞとぼろぼろの作業着で笑い、その作業着みたいになって死んだ。巨大なビルは父の墓標となり、今日も僕らに影を落とす。 #twnovel