「キョート・ヘル・オン・アース」急「ラスト・スキャッティング・サーフィス」#1

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「私はこれから崖下にダイブする。その先に、四行詩が示すポイントがある。ここから先は未知……連絡も取れなくなると思う」「銀の鍵」ニンジャスレイヤーは呟いた。ナンシーは言った「そう。銀の鍵の門を繋ぐ。道を拓く。戻ってくるわ。必ず」数秒の沈黙。ニンジャスレイヤーは言った「頼んだぞ」93

2012-08-18 19:34:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイ、アイ」通信が切断された。ニンジャスレイヤーは垂直の壁を登り切り、長方形の窓から新たな玄室に滑り込んだ。骨董めいた壺やマキモノ、オメーンの類い。小さな倉庫だ。博物的価値があるのかもしれぬ。ニンジャスレイヤーはそれらを無視し、狭い廊下を進んだ。前方の 広間にニンジャ有り。94

2012-08-18 19:45:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーはアーチ状の入り口をくぐり、エントリーした。広間の天井は高く、長椅子が並ぶ。壁にはニンジャ神話のステンドグラス。八つ首の竜を退治するニンジャ英雄の図。それへ跪き、祈り続けるニンジャあり。ニンジャスレイヤーの気配を察知しているのは確かだ。だが動かない。95

2012-08-18 20:03:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そのまま祈っておる気か」ニンジャスレイヤーは声をかけた。乳白色の装束を着た女のニンジャは跪いたままだ。見もしない。「ニンジャスレイヤー=サンですね」「そうだ」「私はディグニティです」「ドーモ」ニンジャスレイヤーはジュー・ジツを構える。 96

2012-08-18 20:26:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ディグニティは跪いたままだ。「非礼をお許しください。見えています」静かに言った。「かかってくるがいい。カラテを構えよ」ニンジャスレイヤーは言い放った。ディグニティは跪いたまま答えた。「お許しください。できないのです」 97

2012-08-18 20:32:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「私にはあいにく時間が無い」ニンジャスレイヤーはスリケンを構えた。「スリケンを投げて殺そうと?」ディグニティは振り返らず言った。「意味の無い事です」「……」ニンジャスレイヤーは表情を動かさない。「禅問答でも始める気か」 98

2012-08-18 20:39:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「私には、祈る事しかできません、ニンジャスレイヤー=サン」ディグニティは言った。「戦って死んで行った者の為に祈るのです」「祈りだと?」「貴方の指は殺戮にまみれています。貴方の足は無数の屍の上に立っています。ゆえに、祈るのです。死んで行ったニンジャの為に」 99

2012-08-18 20:48:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーはスリケンをしまった。「そうして祈るのがオヌシの仕事か」「貴方は罪に塗れています。どうしてそんな事が出来るのですか?貴方は何人殺せば満足するのですか?貴方の歩みに答えなど……」「笑止」ニンジャスレイヤーはピシャリと言った。 100

2012-08-18 20:54:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「もう十年、そうして祈っておれ」彼は踵を返し、奥のアーチ扉へ向かった。「待ちなさい!貴方は貴方の殺戮を独善的な……」「……」ニンジャスレイヤーは一度足を止め、振り返った。ディグニティはニンジャスレイヤーへ向き直り、膝を擦って追いすがろうとしていた。二者の視線がかち合った。 101

2012-08-18 21:02:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヒッ」彼女の目が恐怖で見開かれた。ニンジャスレイヤーの瞳には、無限に等しい自責、自問自答の経験の痕跡があった。彼女は女児めいて打ちのめされ、怯んだ。ニンジャスレイヤーは再び歩き出す。アーチをくぐり、次の階段を上る。「お許しを……マイロード……お許しを」嗚咽が聴こえてきた。102

2012-08-18 21:14:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そいつじゃ。そいつを取ってくれ」ニーズヘグが顎で指した先の壁には風変わりな長竿武器がかけられている。ナギナタ……あるいはヤリ……そのどちらとも言い切れない形状だ。ジグザグの穂先はヘビめいており、彼が普段使う武器群と共通のアトモスフィアを持っているようでもある。 104

2012-08-18 21:50:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ミラーシェードは長く重いその武器を壁から外し、ニーズヘグに渡した。手負いのグランドマスターの目は獰猛に輝いた。「これなら肩で扱えるわい。いい按配じゃ」彼らが辿り着いたのは薄暗い武器庫である。銃火器や弾薬の他、ヤリやジュッテのようなニンジャの武器も豊富にある。 105

2012-08-18 21:56:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

パープルタコはサイとダガー、棘の生えた分銅鞭を。ミラーシェードは閃光弾を補充し、リング状の風変わりなスリケンの束を取った。インドのニンジャが好んだ飛び道具で、チャクラムと呼ばれる。ブーメランめいて、投げれば戻ってくる。行きと戻りで二度攻撃できる武器だ。 106

2012-08-18 22:13:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「さァてェ……何人殺せるか……」ニーズヘグが首関節を鳴らした。パープルタコはクスクス笑った。ミラーシェードはブレーサーから飛び出す暗殺剣の稼動を確かめる。バンシーとシャドウウィーヴは合流出来ていない。107

2012-08-18 22:25:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

三者は冷たい視線を交わす。彼らは先程のダークニンジャとのコトダマ・ブリーフィングを反芻していた。彼らは十分に正気であったが、十分にデスパレートであった。 108

2012-08-18 22:34:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(第2部「キョート殺伐都市」より:「キョート:ヘル・オン・アース」急「ラスト・スキャッティング・サーフィス」#1 終わり。#2 に続く)109

2012-08-18 22:36:05
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