紫苑はそこで作業を終わらせて、今何時ですか、って沙布先生に聞くと、時間はもう夕方の6時過ぎ。もう少しなんだけどな~と残念そうに言う紫苑に、もう今日は帰りなさい。と沙布先生
2012-08-19 15:50:18「少し器用だからって、なんでも一人で背負おうとするのがあなたの悪い癖よ、紫苑。少しは周りを頼りにしなさい」と沙布先生。その言葉を聞いて、少し嬉しくなりながら、「ありがとう、沙布」って。
2012-08-19 15:55:16沙布は紫苑の鼻をつまんで、「『沙布』じゃないでしょ、『沙布先生』」って訂正を求める沙布に、「ごめんごめん」と言ってさらに沙布を怒らせる紫苑。「あなたって人は…前は 沙布先生沙布先生って可愛かったのに、最近は気を抜いたらいつもこうね」って苦笑する沙布。「ごめん…なさい」と紫苑も苦笑
2012-08-19 15:59:15「ネズミと一緒に、どうするか考えたんだ。沙布は、前世と今を、全くの別物として、決別して生きる事を教えてくれた。ネズミは、前世の物語を乗り越えて生きる事を教えてくれた。ぼくには、どちらがいいかは分からないし、どちらも正解なんだと思う」
2012-08-19 16:04:13「でも、前世のぼくは確かに存在した。彼が出会った人達も、経験したことも、確かな事実だ。それは、今の僕自身も背負う事実なんだと思う。無かったことには、出来なかった。でも」
2012-08-19 16:13:07「こう決めたのは前世のぼくじゃない。今ここにいる、現世のぼく自身だ。これからは、前世のぼくを背負って、彼と共に、現世で生きるぼくが、今を生きていこうと思う。それが今の答えだっていうのは、ダメだろうか」という紫苑。「ダメって言ったら変える気があるわけ?」って聞く沙布に、
2012-08-19 16:19:49「そう言われたら、困るな」と笑う紫苑。「沙布の事を、無かったことにはしない。死ぬまで記憶し続ける。そう前世で誓ったんだ。ぼくは、ぼくの中で生きる前世の意思を引く継ぐだけ。ぼく自身はただ、その誓いが、彼女に届けばいいなって、そう思っているそれだけさ」
2012-08-19 16:25:32沙布はその言葉を聞いて。紫苑を後ろからそっと抱きしめる。沙布の急な行動に、慌てる紫苑。沙布は「あなたの中の、前世のあなたに、聞いて欲しい事があるの」と。紫苑は静かに頷いて、「分かった」と返事をする。
2012-08-19 16:33:43沙布は小さくため息をついた後、「愛していました」と一言。「エリウリアスにあなたのその誓いを聞いた後、私は悲しい幸福感でいっぱいだった。もう仕方がない事だと、割り切っていたつもりだったのにね。またあなたに、生まれ変わっても、あなたに会いたいと、そう思ったの
2012-08-19 16:36:32肉体が死んで、精神が消えても、私の魂がそう願った。つまらない悪あがきだわ。でも、その願いは叶えられた。また再び、こうしてあなたの言葉を聞くことができた。
2012-08-19 16:43:16沙布が紫苑とまた同じ道を歩むことは出来なかったけど、もういいの。それが良かったのか、悪かったのか、決めつけないでも幸せに生きられるくらい、私は大人になったの。沙布を覚えていてくれてありがとう。あの子も、きっと、あなたに逢えて幸せでした。だから紫苑、あなたも。幸せになってね」
2012-08-19 16:53:27最期の「紫苑」を、今の自分に向けられているように感じた紫苑は、沙布先生の涙を肩に感じながら、「ありがとう」と。沙布の頭を撫でながら、「あなたに誓います。だから、沙布先生も、絶対に幸せになって下さい。きっと、紫苑もそう望んでいます」
2012-08-19 16:59:30「情けないところを見せちゃったわね」って照れ笑いする沙布先生に、「先生だって、たまには人に頼るのも悪くはないでしょう?」と言う紫苑。「生意気」と沙布先生に頭をぐしゃぐしゃと撫でられていると、紫苑のケータイにメールが
2012-08-19 17:06:26メールを確認した紫苑の顔がほころんだところを見て、今度は沙布が反撃する番で。「またまた、タイミングのよろしい事で」紫苑は顔を赤らめながら、「か、からかわないでってば」って抗議するんだけど、「もし別れたっていうなら、私がもらってあげてたのになぁ」と沙布。
2012-08-19 17:11:17「旦那さんはどうするんですか」って呆れて聞いたら、「お婿さんじゃなくて、養子にもらってあげるって言ってるの」と沙布先生。「先生が言うと冗談に聞こえないよ」って笑う紫苑。
2012-08-19 17:13:24「あら、私は本気よ?あなたみたいな可愛い息子だったら、いつでも大歓迎なのに」という沙布に対して、「お言葉は嬉しいですが、大丈夫です」と返す紫苑。
2012-08-19 17:29:58前世に別れを告げたあの日、紫苑があの地下室から立ち去ろうとすると、再びキスをされて。紫苑が「お別れのキスか」と尋ねると、ネズミは静かに「誓いのキスだ」と答えた。「今度こそ、おれはあんたを幸せにする」と。そう誓った。
2012-08-19 17:38:16紫苑は廊下を走りながら、届いたメールを見直す。明日はまた、ネズミとどう過ごそうか考える。前世を乗り越えてもなお、自分を選んでくれたネズミにどんな好意を、どんな感謝を、どう伝えていこうか考えながら。紫苑とネズミの物語は、まだ始まったばかりなんだから。
2012-08-19 17:38:38