「キョート・ヘル・オン・アース」急「ラスト・スキャッティング・サーフィス」#2
ガンドーはサイバー・エルゴノミクスチェアに移動した。「結構しんどいからよ、失礼するぜ……安楽椅子探偵だ、ははは。……でだ、勿体つけたロードが、わざわざ車椅子を引っ張らせてまで?カワラ屋根の上まで?ジョークだな。神器を直接手に入れたかったッてのも当然あるだろうが、近い、近いぜ」23
2012-08-22 00:49:55「ってことは、ロードはそうしなけりゃいけないから、そうするんだ。ロードの例のジツには、こう、焦点があるんだろうな。虫眼鏡で光を集めれば火もつくが、そのまま照ってりゃ、ただ明るい太陽って訳で。どこまでも、何でもできるってンなら、そもそも俺らは最初から城に乗り込む発想すらしねえ」24
2012-08-22 00:58:49「ヌンチャクを……献上……した時、私は当然そうすべきと考えた。一片の疑いも無しに。自分の力を彼の役に立てる事ができて幸せだ。そう思った。思わされた」「そうすべき相手。そうすべき権威、か?」ガンドーは言った「お前の中で、ロードの定義が転換させられていたわけさ」25
2012-08-22 01:13:40「定義を転換する……書き換える」「そうだ」ガンドーは机から調達した葉巻に着火した。(「これはノーZBRだ」彼は強調した。「今の俺は冴えてる。遥かにいい」)「まるでハッキングだろ」「……」ニンジャスレイヤーはかつての潜入作戦、金融機関CEOになりすましたナンシーを想起した。 26
2012-08-22 15:10:26「時間が経てば齟齬が出てくる。何しろ嘘っぱちだからな。急拵えの認識のツギハギ。だからお前さんも、今となっては『してやられた』事がわかってる。……まるでハッキング。まるで」「どうした」ニンジャスレイヤーはガンドーから葉巻を受け取った。ガンドーは頷いた。「突拍子も無い話だがよ」27
2012-08-22 15:23:50ガンドーは厳かに言った。「ネットワークってのは、いつからある?何年前からだ?……いつ発見されたかじゃない。どっかのエンジニアだか先生だかか?いいや、コロンブスの話じゃない。アメリカ大陸は、いつからあった?って事だ。そういう話だ。いいか、大事なとこなんだ。俺は冴えてる」 28
2012-08-22 15:35:55「全部真っ直ぐ通るんだ。お前がアラクニッドから持ち帰った四行詩。ナンシー=サンが言うには、ハッカーの流儀に重ねると、それはIPアドレス。アラクニッドの奴はハッカーじゃない。古代のウラナイだ。じゃあ、ハッカーの流儀はどこから来てる?ドグマの源は?ネットワークはいつからある?」29
2012-08-22 15:46:09ガンドーの目はらんらんと輝いた。ニンジャスレイヤーは煙を吐いた。「つまり、ロードのジツとは、ネットワークを……コトダマ空間を経由し、現世の……」「ああ」ガンドーは留めた。彼らは"キョジツテンカンホーをいかに破るか"という直接の問いのやり取りを避けた。「突拍子もねえ仮説さ」 30
2012-08-22 15:55:09「そして銀の鍵だ」「シルバーキー=サンはマルノウチ・スゴイタカイビルの地下遺跡で姿を消した。そしてこの鍵を」「ああ、ユメミル・ジツだったな。ニューロンをどうかする」「そうだ」「似てるッちゃあ、似てる。ジツの分野が」「……」「多分、そいつが文字通り、鍵になる。必要なんだ」 31
2012-08-22 16:22:14「ナンシー=サンはネットワークの奥底へ飛び、道を繋ぐ。その鍵で開く門へ通じる道を。比喩なのか本当に門なのか。そんな事はいい。とにかく門を開いた先にシルバーキー=サンがいる。そいつが必要になる」ガンドーはまくし立て、言葉のトーンを落とした「……俺はよ。心配してる。嫌な予感だ」32
2012-08-22 16:31:31「ナンシー=サンか」「そうだ」ガンドーは苦労してエルゴノミクスチェアから立つ。「一人で行って、捜して、帰ってくる気でいるが、そううまく行くかね」「……」「悪いが俺はもう少し休んで行く。体もしんどい」ガンドーは端末に触れた。ニンジャスレイヤーは察した。そして頷く。「彼女を頼む」33
2012-08-22 16:40:46「ああ。任せとけ。捜し物ってのは探偵の領分なんだ。彼女には帰り道の灯りが要るだろうよ。カラス・ニンジャの奴が引き上げる……あの時、俺を引き上げたように。俺はイマイチ頼りにならんが、なあに、カラスの奴と二人でやるさ」彼は額の黒渦に親指を当てた。「いや……三人でだな」34
2012-08-22 16:46:08ニンジャスレイヤーは葉巻の火を消し、立ち上がった。ガンドーは端末モニタを見つめていた。「道中を掃除してくれ。後から追いつく」彼は呟いた「ロードのジツは万能じゃない。だが、パズルのピースは絶対に必要だ」「ああ」「無茶するのはその後だ」「了解した」ニンジャスレイヤーは飛び降りた。35
2012-08-22 16:56:25SMACK……飛び去る戦闘機にミサイルが命中、爆発しながら墜落した。撃墜カウント更新。キャバァーン!キャバァーン!鳴り続ける殺人光線の照射音。HUDがノイズで歪む。許容範囲。「「ウオオオーッ!」」声。騒ぎの座標を確認。オムラキョート敷地。ネブカドネザルは声の方角へ旋回した。 37
2012-08-22 17:14:23真下にニンジャ反応有り。当面の殺害対象外であり、こちらへの攻撃手段を持たない。ネブカドネザルは無視した。「ボス。ザイバツとの通信が断絶し、600秒経過です。何らかのインシデント下と判断」「何ザザどうザザ言うザザザだ!」通信品質劣悪。「こっちじゃ何もわかザザザザ理由を考えザザ」38
2012-08-22 17:22:45「どういう事だ!」「ザイバツのシステムに何らかのトラブルが発生したものと判断します。どうしますか」「ザザザザ、ザザザザザ、ザザザ」社屋敷地の位置から黒煙が立ち昇る。目視確認。一筋。また一筋。「オムラキョート……キョート支社が暴徒の襲撃を受けています。どうしますか」 39
2012-08-22 17:25:29「回線失踪な」のHUD表示。ネブカドネザルは状況判断した。オムラキョートが暴徒に制圧されれば補給手段が失われ、共和国軍と戦闘する任務に支障を来たす。すべき事はシンプルである。ネブカドネザルはボンズ姿のニンジャに構わず、オムラキョートめがけロケットを噴射した。 40
2012-08-22 17:31:53たちまちネブカドネザルはオムラキョートの社屋上空に到達。階数制限がある為、社屋は平たく、屋上部は雷神のエンブレムがペイントされた巨大なヘリポートだ。そこには既に暴徒がひしめき、焚き火を囲んで踊り、あるいは殴り合っている。チチチチチ、それら暴徒を四角いマーカーが囲んでいく。 41
2012-08-22 17:36:25モーターツヨシ肩部から対人マルチプル機銃が展開する。ミサイルは社屋を損壊する為、不適切。ネブカドネザルは急降下した。「高度注意」の表示。暴徒達がネブカドネザルを見上げた。パパパパ。トマト祭りめいて肉体が爆ぜ飛ぶ。暴徒は恐慌に陥った。ネブカドネザルは旋回し、掃射を継続した。 42
2012-08-22 17:41:16ヤグラを占拠した暴徒がネブカドネザルめがけミサイルランチャーを放った。ネブカドネザルはブースター噴射とチャフ散布でこれを回避。機銃掃射で殺害した。ヤグラが崩れ、下の人々を巻き込んで潰れた。ネブカドネザルはこれを許容範囲内の社屋施設損害と判断した。 43
2012-08-22 17:46:49ミサイルランチャーはオムラの備品であり、社屋は実際短時間で制圧されたと見てよい。正門は粉砕され、ガラスが散っている。ネブカドネザルは中庭を逃げ惑う暴徒……あるいはアサルトライフルで応戦する暴徒……を、空中からの掃射で無差別に殺していく。やがてアウトオブアモー。機銃をパージ。 44
2012-08-22 17:55:14ネブカドネザルは垂直上昇し、再度の状況判断機会を持った。本社への通信は回復しない。オムラキョートへの短距離通信にも応答は無い。キャバァーン!キャバァーン!キャバァーン!浮遊するキョート城は光線照射を継続している。電磁ノイズは懸念材料だ。……やはり本社応答無し。残燃料僅か。 45
2012-08-22 17:59:21