「キョート・ヘル・オン・アース」急「ラスト・スキャッティング・サーフィス」#2
(「さァてェ……何人殺せるか……」ニーズヘグが首関節を鳴らした。パープルタコはクスクス笑った。ミラーシェードはブレーサーから飛び出す暗殺剣の稼動を確かめる。バンシーとシャドウウィーヴは合流出来ていない。)
2012-08-21 21:33:35(三者は冷たい視線を交わす。彼らは先程のダークニンジャとのコトダマ・ブリーフィングを反芻していた。彼らは十分に正気であったが、十分にデスパレートであった。)
2012-08-21 21:33:54第2部「キョート殺伐都市」より:「キョート:ヘル・オン・アース」急「ラスト・スキャッティング・サーフィス」#2
2012-08-21 21:37:24焼け落ちた寺の四方は断崖に囲われ、断崖にへばりつく不気味なモミジ、くすぶる焼け跡、腐乱死体やハイエナ……到底親しみようの無い凄絶な光景が、朽ちたショウジ戸の向こうに広がっている。ネクサスのローカルコトダマ空間は常にそうなのだ。オブツダン前のこの部屋だけが清潔に整えられている。1
2012-08-21 21:44:36柱やショウジのあちこちには「不如帰」のお札が貼られ、開け放たれたオブツダンにはオジゾウが鎮座して、チャブを囲むニンジャ達を半眼で見つめている。「奴はダメかも知れませんぜ」ショウジ戸の側でアグラするバンシーが言う。「まるで耳に入っちゃいなかった」「そうか」ダークニンジャは頷いた。2
2012-08-21 21:52:11バンシーはかつてグランドマスター・サラマンダーの側近であった。サラマンダーはパーガトリーとスローハンドの企みによって名誉を失墜した。ユカノを匿い、己の目的に利用しているという嫌疑をかけられたのだ。その時サラマンダー自身が既にニンジャスレイヤーの手にかかっていた事は幸か、不幸か。3
2012-08-21 21:58:27シャドー・コンに突入した懲罰騎士の一団に身柄を確保されたバンシーはアイボリーイーグルによる拷問死を覚悟した。だが、最終的に彼は秘密裏に助けられた。己を囚えた懲罰騎士によって。のちに、身を隠していたミラーシェードも合流した。ムーホン。望むところである。 4
2012-08-21 22:06:55「難しい年頃ねェ」パープルタコが笑う。「捨て置け」ニーズヘグは腕組みして吐き捨てた。「才能だけではどうにもならん」「始めるとしよう」ダークニンジャは一同を見渡す。バンシー、ミラーシェード、パープルタコ、ニーズヘグ。そしてネクサス。現実と違い、ここでは特徴の無い壮年のボンズだ。5
2012-08-21 22:13:33「ロードのキョジツテンカンホーは想像を超えていた。不覚をとった」ダークニンジャは言った「ドゲザし、神器を献上した時、おれは一瞬たりとも疑問を抱かなかった」……そしてキョート城は浮上し、パラゴンの指示下、パーガトリーらが反乱分子狩りを開始した。手痛く先手を打たれた。絶望的な程に。6
2012-08-21 22:29:18敵は全ザイバツ。城は空。彼らは数人。いまさらロードに降伏したところで、セプクすら許されまい。カマユデののち斬首だ。……もとより、そのような怯懦な選択を秤にかけた者はこの場にはいない。サイは投げられた。ならば、より激しく戦い、より多く殺し、より深い爪痕を残して、死ぬだけだ。 7
2012-08-21 22:37:31「強襲をかけたところで、ロードを前にすれば、わしら一同、有り難き忠誠を上書きされて、おしまいじゃ」ニーズヘグは言った。「その死に方は、つまらん」「そう、奴を前にすればそうなる。……ゆえに、単独で奇襲をかけ、暗殺する」ダークニンジャは言った。一同が彼を見た。 8
2012-08-21 22:46:13「あのジツは完全無欠では無い。ヤミ・ウチで殺す」ダークニンジャはベッピンの鍔を鳴らした。「ハ!よかろう」ニーズへグは全てを理解した。「派手なマツリにしてやる」 「できれば生き残れ」ダークニンジャは一同に言った。「ロードの先に、より大きなイクサがある」 9
2012-08-21 23:06:04「眉唾物のコーデックスか」ニーズヘグは笑った。「嘘ならば、せいぜい笑うてやるわい」「是非そうしろ」ダークニンジャは頷いた。「生きて確かめろ」 10
2012-08-21 23:15:44電算室は……死と破壊で満たされていた。黒煙を噴き上げるUNIX群、破砕したデスク群、爆発してガラスと水を散乱させたウォーターサーバー、LAN直結したまま死んで動かないニンジャやエンジニア達。ニンジャスレイヤーはカラテ警戒し、注意深く歩みを進める。 12
2012-08-21 23:25:25生存者無し。あったとしても既にこの場を去っただろう。彼は耳から血を流して息絶えた女ニンジャの傍らを通り過ぎた。「……」彼は天井を見上げた。数秒の黙考後、彼は跳んだ。「イヤーッ!」 13
2012-08-21 23:30:23逆立ちしながら飛び上がって天井を蹴る!KRAAAAASH!やはり秘密があった!天井のパネルを破砕したニンジャスレイヤーは、その上に隠された弦室に着地した。「んんッ!ゲホッ!ゲホッ!」弦室には先客がいた。ニンジャスレイヤーの突然のエントリーに驚き、背中を丸めて咳き込んだ。 14
2012-08-21 23:35:54「……なんだ?ここは」まずニンジャスレイヤーが発したのは問いであった。下のジゴクと対照的な上質の安らぎ空間がそこにはあった。音楽が流れている。ロックンロールだ。バーカウンターの先客……ガンドーは、喉につまらせたスシをフジサン・ウォーターで流し込み、答えた。「笑えるだろ」15
2012-08-21 23:46:31ガンドーはスシの重箱を差し出した。「オーガニック・トロマグロだぜ。大トロじゃねえかと思うんだ……ふざけた味だ。旨過ぎる。罪悪感の味だぜ」ニンジャスレイヤーは頷き、それを受け取った。ヘカトンケイルと戦闘しながらの最低限の栄養補給では、カロリーを賄いきれない。 16
2012-08-21 23:53:40「下の破壊はオヌシか」「いや、ナンシー=サンだな」ガンドーはようやく人心地ついたか、深く息を吐いた。「あいつら、UNIXに直結していただろ。フィードバックで全滅だ。俺が殺ったのはここのボスだよ。グランドマスターだったが、大した事無かったぜ」と爆発四散痕を顎で示す。 17
2012-08-22 00:03:45「……」ニンジャスレイヤーはスシを食べながらガンドーを見た。その状態を。そして頷いた。「そうか。流石だな」「だろ」ガンドーは水を飲んだ。ニンジャスレイヤーはマッチャを。「ナンシー=サンから通信があった。そして、ここへ」「ああ。俺も今さっき起こされた。疲れて寝ちまっててな」18
2012-08-22 00:10:34ロックンロールが鳴り続ける。「ラジオの電波は良好みてえだな、どうやら」ガンドーは言った「……前にもあったよなァ、こんなシチュエーションが」「セキバハラだ」「そう、セキバハラ」ガンドーは低く笑い、「あン時も大概キツかったぜ」「そうだな」 19
2012-08-22 00:20:50「さあて、腹もたまった。作戦会議と行くか」ガンドーは伸びをした「あァ、痛てて!……目標は天守閣、慎重に、だがイナズマのように素早くだ。まずは現状把握と行こうや」「うむ」ニンジャスレイヤーは頷いた。「私はロードのキョジツテンカンホーに敗れた。ドゲザを見ただろう。あれは本当だ」 20
2012-08-22 00:33:25「生きてて良かったじゃねえか」ガンドーは言い、水を飲んだ。彼らは互いの情報を共有した。パラゴンのカラテ。ロード。奪われた神器。キョート城の浮上事実。「推理の時間だぜ」とガンドー。「お前さん、ドゲザはしたが、カイシャクはされなかったし、催眠術めいてセプクさせられもしなかった」21
2012-08-22 00:39:40「そうだ」ニンジャスレイヤーは認めた。ガンドーは続けた。「なのに、ザイバツは殺しに戻って来た。パーガトリー=サンやら、ヘカトンケイル=サンやら。後からそれをやるなら、ドゲザの場でそのまま殺すだろ?って事はよ、何でも出来るってわけじゃねえんだ。ジョルリめいて操るワケじゃない」22
2012-08-22 00:44:37